「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」——第三者の認証を取らず、事業者が自らの責任で行う環境の主張を、規格の世界では自己宣言による環境主張(self-declared environmental claims)と呼びます。その国際ルールがISO14021です。greenoteのラベル体系シリーズ(ISO14020・ISO14024・ISO14025・ISO14026)で唯一残っていた最後のピースであり、実は企業の実務で最も日常的に触れる規格でもあります。
2026年は、この自己宣言のルールが大きく動いた年です。2026年6月にISO14021が10年ぶりに全面改訂され(第3版)、対象がデジタルプラットフォーム上の表示まで明示的に広がりました。そして日本では、環境省の「環境表示ガイドライン」が令和8年(2026年)3月に改定され、自己宣言による環境表示にISO14021への準拠を求める枠組みが更新されています。本記事では、ISO14021の中身と2026年改訂のポイント、環境省ガイドラインとの関係、そして自社の環境表示を点検する実務の手順を、ISO公式情報と環境省の公開情報にもとづいて解説します。
※本記事の規格・制度情報は2026年9月時点でISO公式サイト・環境省が公表している情報にもとづきます。最新の状況は各公式情報をご確認ください。
この記事の目次
- 1ISO14021とは|自己宣言による環境主張の国際規格
- 対象は言葉・シンボル・広告からデジタルまで
- 「用語の使用条件」を定めるという発想
- 22026年改訂|「ラベル」から「声明」へ、10年ぶりの第3版
- 3ラベル体系の中で唯一「第三者がいない」型
- 4日本の実務|環境省ガイドラインがISO14021準拠を明記
- 「5つの基本項目」——最初に取り組むべきこと
- JIS Q 14021は2000年版——26年の開き
- 5自社の環境表示を点検する実務ポイント
- 環境表示を棚卸しして「5つの基本項目」に当てる
- ECサイト・SNSも「同じルール」の中にある
- 比較の主張には数値とLCAの裏付けを
- 6まとめ
- 7よくある質問(FAQ)
ISO14021とは|自己宣言による環境主張の国際規格
ISO14021は、製品に関する自己宣言による環境主張と、その環境声明プログラムについて、原則を確立し、要求事項を規定し、指針を与える国際規格です。現行版は2026年6月発行の第3版(ISO14021:2026・61ページ・ISO/TC207/SC3策定)で、前の版のISO14021:2016とその追補(Amd 1:2021)は廃止(Withdrawn)となりました。エコラベルのISO14024やEPDのISO14025と並ぶ、環境声明ファミリーの一角です。
対象は言葉・シンボル・広告からデジタルまで
ISO公式の要約によれば、この規格が適用されるのは、主に言葉の形をとる自己宣言環境主張ですが、それにとどまりません。製品・パッケージのラベル上のシンボルや図形、製品資料、技術報告、そして広告・宣伝——デジタルプラットフォーム上のものを含む——に現れる主張までが対象です。つまり、商品パッケージの「リサイクル可能」マークも、自社ECサイトの「地球にやさしい素材」という一文も、SNS広告のコピーも、同じ一つの規格の守備範囲にある、ということです。
「用語の使用条件」を定めるという発想
ISO14021の性格を最もよく表すのが、ISO公式の要約にある「自己宣言環境主張で一般的に使われる用語を定義し、その使用の資格条件(qualifications)を与える」という一文です。環境の主張に使われる言葉を規格が定義し、「この言葉を使ってよいのは、こういう条件を満たすときだけ」という使用のハードルをセットで定める——いわば環境用語の辞書と使用免許を兼ねた作りです。加えて、主張を評価するために必要な文書化と方法論も記述されており、「言ったからには根拠を出せる」状態を作ることまでが規格の射程に含まれています。
2026年改訂|「ラベル」から「声明」へ、10年ぶりの第3版
2026年6月の第3版は、2016年の第2版から10年ぶりの全面改訂です。変化は大きく3つ読み取れます。
第一に、タイトルの転換です。旧版の「環境ラベル及び宣言(Environmental labels and declarations)」から、「製品の環境に関する声明及びプログラム(Environmental statements and programmes for products)」へ——これは親規格ISO14020が2022年改訂で採った新しい呼び方に、子の規格が追いついた形です。「タイプII環境ラベル」という旧称の時代から、「自己宣言環境主張」という声明ベースの整理へ、ファミリー全体の衣替えが進んでいます。
第二に、対象の拡張です。ISO公式の要約は、環境条件や製品の環境パフォーマンスに影響される関連する社会的・経済的側面をカバーする主張も含むと明記しました。環境の主張は、しばしば「地域の雇用を守る」「持続可能な調達で生産者を支える」といった社会・経済の物語と一体で語られます。その境界領域まで規格の目が届くようになったことは、サステナビリティ訴求の実態に規格が追いついた変化といえます。第三に、前述のデジタルプラットフォームの明示です。61ページというボリューム(旧タイプII時代から大きく増加)にも、カバー範囲の広がりが表れています。
ラベル体系の中で唯一「第三者がいない」型
環境声明ファミリーの中でのISO14021の位置は、「第三者の関与」に注目すると際立ちます。
| 環境声明 | 第三者の関与 | 担当規格 |
|---|---|---|
| 自己宣言による環境主張 | なし——事業者が自らの責任で主張 | ISO14021(旧タイプII) |
| エコラベル | 第三者機関が審査・認可 | ISO14024(旧タイプI) |
| EPD(環境製品宣言) | 独立した検証を経た定量データ | ISO14025(旧タイプIII) |
| フットプリントの伝達 | 算定・検証の枠組みあり | ISO14026 |
自己宣言は、第三者の審査も検証も挟まない、最も手軽で、最も濫用されやすい型です。コストをかけずに今日から使える一方、グリーンウォッシュ批判の火種の多くも、この型の表現から生まれます。だからこそISO14021は、ファミリーの中で最も細かく「言葉のルール」を定める規格になりました。第三者がいない代わりに、規格そのものが番人の役割を果たす——この構図を押さえると、61ページという分量の意味が見えてきます。
日本の実務|環境省ガイドラインがISO14021準拠を明記
日本では、この規格が「参考文書」以上の位置を占めています。環境省の「環境表示ガイドライン」——自己宣言により環境表示を行う事業者・事業者団体を対象にした国のガイドライン——が、自己宣言による環境表示はISO14021規格に準拠することを求めると明記しているからです。同ガイドラインは令和8年(2026年)3月に改定されたばかりで、英語版も公開されています。適用範囲も広く、景品表示法の対象となる商品パッケージ・カタログ・広告に加えて、取引に直接関係しない環境表示——CSR活動やイメージ広告、企業姿勢のPRまでを対象に含めています。
「5つの基本項目」——最初に取り組むべきこと
同ガイドラインは、事業者が最初に取り組むべきステップとして、ISO/JIS Q 14021規格にもとづく「5つの基本項目」を掲げています。
- あいまいな表現や環境主張を行わないこと
- 環境主張の内容に説明文を付けること
- 製品のライフサイクル全体を考慮すること
- 環境主張の検証に必要なデータ・評価方法が提供可能で、情報にアクセスできること
- 製品・工程の比較主張はLCA評価や数値等により適切に行うこと
ガイドラインの構成は、この5項目(Step 1)→ISO/JIS Q 14021規格への準拠(Step 2)→推奨事項(Step 3)という段階式です。つまり国の整理では、5つの基本項目が入口、ISO14021準拠がその次の到達点という位置づけになっています。
JIS Q 14021は2000年版——26年の開き
一方、国内規格のJIS Q 14021「環境ラベル及び宣言-自己宣言による環境主張」は2000年版のままで、2026年のISO第3版はもちろん、2016年の第2版にも追随した改正は2026年9月時点で確認できません。greenoteが追ってきたJISとISOの開きの中でも、ISO14020(27年差)に並ぶ大きさです。環境省ガイドラインが「ISO/JIS Q 14021」と併記しつつ実質的にISO準拠を求めているのは、この開きを踏まえた現実的な設計と読めます。実務では、日本語のJIS規格票ではなく、最新のISO14021:2026と環境省ガイドライン(2026年3月改定版)のセットを参照するのが確実です。
自社の環境表示を点検する実務ポイント
ISO14021が実務で効くのは、新しい表示を作るときだけではありません。すでに世に出ている自社の環境表示の点検にこそ、この規格と環境省ガイドラインの枠組みが使えます。3つに整理します。
環境表示を棚卸しして「5つの基本項目」に当てる
最初の一歩は、自社の環境表示の棚卸しです。商品パッケージ、カタログ、ウェブサイト、営業資料——環境に触れる表現を集めて、環境省の5つの基本項目に一つずつ当てていきます。とくに引っかかりやすいのが1つ目の「あいまいな表現」です。「環境にやさしい」「エコ」のような、何がどうやさしいのかを特定しない主張は、説明文と根拠を伴わない限り、最初の項目で立ち止まることになります。棚卸しの結果は、直すべき表示のリストであると同時に、根拠データの整備計画にもなります。
ECサイト・SNSも「同じルール」の中にある
2026年改訂がデジタルプラットフォームを明示したことの実務的な意味は、点検の対象範囲にあります。パッケージやカタログは制作フローの中でチェックが働きやすい一方、ECサイトの商品説明、SNSの投稿、ウェブ広告のコピーは、更新が速く、チェックの網から漏れがちです。しかし規格の目から見れば、どれも同じ「自己宣言環境主張」。グリーンクレーム規制のような海外の法規制もデジタル上の表現を対象にしており、「媒体によってルールが緩くなることはない」を社内の共通認識にしておく必要があります。
比較の主張には数値とLCAの裏付けを
「従来品よりCO2を30%削減」のような比較の主張は、訴求力が大きいぶん、要求も厳しくなります。環境省の5項目が「比較主張はLCA評価、数値等により適切に」と明記しているとおり、比較には何と・どの範囲で・どう測って比べたのかの裏付けが必要です。LCAやカーボンフットプリントの算定体制は、開示のためだけでなく、マーケティングの比較主張を支える足腰でもあります。逆にいえば、算定体制のない比較コピーは、最も攻められやすい表現だと心得ておくべきです。
まとめ
ISO14021は、事業者が自らの責任で行う自己宣言環境主張について、用語の定義と使用条件、根拠の文書化までを定める国際規格です。2026年6月の第3版で「ラベル」から「声明」ベースの整理に移り、社会・経済側面に関わる主張やデジタルプラットフォーム上の表示まで対象を広げました。日本では、環境省の環境表示ガイドライン(2026年3月改定)がISO14021への準拠を求め、「5つの基本項目」という実践的な入口を用意しています。第三者の審査がない自己宣言だからこそ、規格が言葉の番人になる——自社の環境表示の棚卸しから始めて、あいまいな主張を根拠のある主張に置き換えていくことが、グリーンウォッシュ批判への最も確実な備えになります。
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出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年9月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。
ISO公式:
ISO14021:2026規格ページ
環境省:
環境ラベル等データベース「環境表示ガイドライン」(令和8年3月改定)
よくある質問(FAQ)
Q. ISO14021の「自己宣言環境主張」とは何ですか?
A. 第三者機関の認証や検証を経ずに、事業者が自らの責任で行う製品の環境に関する主張です。パッケージの「リサイクル可能」表示、広告の環境コピー、シンボルマークなどが該当し、ISO公式の要約によれば、デジタルプラットフォーム上の広告・宣伝に現れる主張も対象に含まれます。かつては「タイプII環境ラベル」と呼ばれていた類型です。
Q. 2026年の改訂で何が変わりましたか?
A. 2026年6月に第3版が発行され、2016年版と2021年の追補は廃止されました。タイトルが「環境ラベル及び宣言」から「製品の環境に関する声明及びプログラム」に変わり(親規格ISO14020:2022の整理に整合)、環境条件や環境パフォーマンスに影響される社会的・経済的側面をカバーする主張や、デジタルプラットフォーム上の表示まで対象が明示的に広がりました。
Q. 環境省の環境表示ガイドラインとISO14021はどういう関係ですか?
A. 環境省の環境表示ガイドライン(令和8年3月改定)は、自己宣言による環境表示を行う事業者に対し、ISO14021規格への準拠を求めています。構成は段階式で、ISO/JIS Q 14021にもとづく「5つの基本項目」(あいまいな主張をしない・説明文を付ける・ライフサイクル全体を考慮・検証データを提供可能に・比較主張はLCAや数値で)が最初のステップ、規格への準拠が次のステップと位置づけられています。
Q. ISO14021の認証は取得できますか?
A. ISO14001のような認証制度の対象ではありません。自己宣言という性質上、第三者の認証を前提とせず、事業者が規格の要求に沿って主張を行い、求められれば根拠を示せる状態を保つことが基本です。なお、市場では自己宣言の主張を規格に照らして第三者が確かめるサービスも存在しますが、規格自体が認証を求めているわけではありません。
Q. 「環境にやさしい」という表示は使えないのですか?
A. そのままでは推奨されません。環境省の5つの基本項目の第一が「あいまいな表現や環境主張を行わないこと」であり、何がどのように環境負荷を減らすのかを特定しない主張は、説明文と検証可能な根拠を伴わない限り、適切な環境表示とはいえません。「再生プラスチックを○%使用」のように、対象と根拠を特定した表現に置き換えるのが基本です。