ESG Company Analysis
前回、MUFGを例に、銀行のESGを見ました。銀行にとっての脱炭素は、自社のオフィスではなく、お金を貸した先にある——。この構造は、ほかのメガバンクにも共通します。今回取り上げるのは、3メガバンクの一角、SMBC(三井住友フィナンシャルグループ)です。とりわけ、石炭火力への融資に明確な期限を示した点が特徴になります。本記事では、SMBCのESG経営を、GREEN×GLOBE 2030と石炭火力残高ゼロを軸に、公式情報をもとに中立に分析します。
この記事の目次
01
SMBCのESG経営とは|3メガバンクの一角
まず、SMBCがどんなグループで、銀行のESGの特徴を整理しましょう。
お金の流れで、脱炭素を動かす
お金の流れを通じて、社会全体の脱炭素に影響を与えられる立場。
出典:SMBCグループの公表情報をもとにgreenote作成
日本を代表する総合金融グループ
SMBC(三井住友フィナンシャルグループ、SMFG)は、三井住友銀行などを傘下に持つ、日本を代表する総合金融グループです。MUFG、みずほと並ぶ、3メガバンクの一角として知られます。銀行だけでなく、信託・証券・リースなど、幅広い金融サービスを手がけている。
多くの企業や個人に、お金を貸したり、投資したりする。この事業を通じて、SMBCは経済の血液ともいえるお金を、社会に送り出している。だからこそ、そのお金をどこへ流すかが、社会の脱炭素を左右します。ここに、金融機関のESGの特別な意味がある。
銀行のESGは投融資が主役
銀行のESGには、事業会社とは異なる特徴があります。それは、自社の排出よりも、お金を貸した先の排出のほうが、はるかに大きいという点です。銀行のオフィスから出るCO2は、製造業の工場に比べれば、わずかです。
問われるのは、融資や投資をした先の企業が出す排出、すなわち投融資排出(ファイナンスド・エミッション)です。これが金融機関の排出の大部分を占めます。この構造は、メガバンクに共通するものです。詳しくは、関連記事のMUFGのESG経営や、Scope3カテゴリ15(投資)もあわせてご覧ください。本記事では、SMBCならではの特徴に焦点をあてます。
02
カーボンニュートラル|自社2030年、投融資2050年
SMBCの脱炭素目標の骨格を見ていきます。
2階建てで、ネットゼロへ
2050年カーボンニュートラルへの気候変動対策ロードマップ。
出典:SMBCグループの公表情報をもとにgreenote作成
SMBCは、2050年カーボンニュートラルに向けた「気候変動対策ロードマップ」を掲げています。その目標は、大きく2階建ての構造です。1階部分が、自社の事業活動から出る排出(Scope1・2)で、これを2030年にネットゼロにします。オフィスや店舗の電力を再生可能エネルギーへ切り替えるなど、自社でできる削減を先行させます。
2階部分が、より大きな挑戦です。お金を貸した先を含む投融資ポートフォリオの排出(Scope3)を、2050年にネットゼロにすることをめざします。自社を2030年に、投融資全体を2050年に。この2段階の構造は、MUFGなど他のメガバンクとも共通する、金融機関の標準的なかたちになる。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。
03
GREEN×GLOBE 2030|サステナブルファイナンス30兆円
SMBCの「攻め」の脱炭素、資金供給の目標です。
お金で、課題解決を後押し
SMBC Group GREEN×GLOBE 2030。環境や社会の課題解決に役立つファイナンスを実行。
出典:SMBCグループの公表情報をもとにgreenote作成
投融資排出を減らすのが「守り」なら、脱炭素に役立つお金を供給するのは「攻め」です。SMBCの攻めの取り組みが、「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」になります。2020年に策定された、サステナビリティに関する枠組みです。
その柱のひとつが、資金供給の目標です。SMBCは、2030年までに、環境や社会の課題解決に役立つサステナビリティに資するファイナンスを、累計30兆円(うちグリーンファイナンスを20兆円)実行する目標を掲げています。再生可能エネルギーの開発や、企業の脱炭素への移行などに、お金を送り込む。脱炭素には莫大な資金が必要だからこそ、その出し手としての役割が重要になります。サステナブルファイナンスの全体像は、関連記事のサステナブルファイナンスとはもあわせてご覧ください。
04
2040年に石炭火力残高ゼロ|明確な期限を示す
SMBCの特徴が、化石燃料融資に明確な期限を設けた点です。
期限を、はっきり示す
批判と対応の両面がある論点。是非を断定するものではない
出典:SMBCグループの公表情報および公開報道をもとにgreenote作成
SMBCの脱炭素で、とりわけ特徴的なのが、化石燃料への融資に明確な期限を設けた点です。SMBCは、石炭火力発電に関連する融資の残高を、2040年までにゼロにする方針を掲げています。化石燃料の中でも、とくにCO2排出の大きい石炭火力を、期限を決めて縮小していく、という意思表示です。
ただし、ここには難しさもあります。もし融資を急に止めれば、エネルギーの供給や、その地域の経済・雇用に、混乱が及ぶおそれがあります。そのためSMBCは、脱炭素へ移行しようとする企業を支えながら、段階的に残高を減らしていく姿勢をとっています。石炭火力への融資には、環境の観点からの批判と、現実的な移行への配慮という、両面があります。どちらが正しいと一概に決められるものではなく、本記事もその是非を断定するものではありません。ただ、明確な期限を示したこと自体が、SMBCの一つの姿勢の表れだといえます。
05
3メガバンクの脱炭素|MUFG・みずほとあわせて
MUFGなど他のメガバンクとあわせて見ると、業界の姿が見えてきます。
業界で、同じ方向へ
各社が同じ方向をめざす。細部の目標や重点は異なり、優劣を競うものではない。
出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成
SMBCの取り組みは、SMBC単独のものではありません。MUFG、みずほを含む3メガバンクは、いずれも似た方向をめざしている。自社の排出を2030年ごろにネットゼロ、投融資ポートフォリオを2050年にネットゼロ。そして、サステナブルファイナンスの大きな目標を掲げる。この共通の枠組みは、金融業界全体が脱炭素へ動いていることを示している。
背景には、国際的なイニシアチブの存在があります。多くのメガバンクが、投融資排出のネットゼロをめざす国際的な枠組みに参加してきました。もちろん、各社で細かな目標や重点の置き方は異なります。しかし、それは優劣を競うものではありません。日本の金融の中核を担う3メガバンクが、そろって同じ方向を向いていること。その事実こそが、社会全体の脱炭素にとって、大きな意味を持ちます。MUFGの取り組みは、関連記事のMUFGのESG経営もあわせてご覧ください。
ガバナンス(G)|社外取締役が過半数の指名委員会等設置会社
三井住友フィナンシャルグループは、監督と執行を分離する指名委員会等設置会社を採用し、取締役会は13名中7名が社外取締役と過半数を占める構成とされます(2026年6月時点)。女性や外国籍の社外取締役を含む、ジェンダー・国際性の多様な布陣です。
メガバンクの経営は、気候変動(投融資先の排出)から経済安全保障まで複雑なリスクの監督が問われます。社外過半数の取締役会は、その監督機能の要です。
S(社会)への視点|金融ならではの人的資本
S領域では、金融人材の専門性強化(サステナブルファイナンス・デジタル)と多様な登用が進められています。投融資を通じて社会課題に関与する金融業では、従業員のスキルと多様性がそのままサステナブルファイナンスの推進力になります。
E(投融資ポートフォリオの脱炭素)を実行するのは人——という構図で、S・Gを一体で見るのがメガバンク分析のコツです。
06
まとめ|SMBCのESG経営から学べること
SMBCの歩みは、銀行が「お金の流れ」を通じて脱炭素にかかわる姿を、明確に示してくれます。最後に、要点を振り返りましょう。
SMBCに学ぶ、3つのこと
出典:SMBCグループの公表情報をもとにgreenote作成
SMBCのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。
- MUFG・みずほと並ぶ3メガバンクの一角。ESGの主役は自社ではなく投融資先の排出
- 自社排出(Scope1・2)を2030年、投融資ポートフォリオ(Scope3)を2050年にネットゼロ
- 「攻め」のGREEN×GLOBE 2030で、サステナビリティに資するファイナンス累計30兆円(うちグリーン20兆円)
- 石炭火力の融資残高を2040年までにゼロにする、明確な期限を提示
- MUFGなど3メガバンクが共通の枠組みで脱炭素へ。優劣ではなく、業界全体の方向性
SMBCから学べるのは、お金の流れを変えることで、社会の脱炭素を動かせるという金融ならではの役割です。とりわけ、石炭火力残高ゼロという明確な期限は、あいまいになりがちな脱炭素の約束に、一つの区切りを示すものです。同時に、その道のりには、エネルギー供給への配慮という現実的な難しさもあります。理想と現実のバランスを取りながら、着実に前へ進む。MUFGとあわせて見れば、日本の金融が向かう方向が、より立体的に見えてきます。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。
FAQ
よくある質問(FAQ)
Q. SMBC(三井住友フィナンシャルグループ)とはどんな企業ですか?
SMBC(三井住友フィナンシャルグループ、SMFG)は、三井住友銀行などを傘下に持つ、日本を代表する総合金融グループです。MUFG、みずほと並ぶ3メガバンクの一角として知られます。銀行・信託・証券・リースなどを幅広く手がけ、多くの企業や個人にお金を貸したり、投資したりしています。金融機関のESGでは、お金を貸した先の排出への取り組みが重要になります。
Q. なぜ銀行のESGは投融資が主役なのですか?
銀行自身のオフィスや店舗から出るCO2は、事業会社の工場などに比べると多くありません。しかし、銀行がお金を貸したり投資したりした先の企業は、事業でCO2を排出します。この投融資先の排出(投融資排出、ファイナンスド・エミッション)が、金融機関の排出の大部分を占めます。つまり、お金の流れを通じて社会全体の脱炭素に影響を与えられる点が、銀行のESGの核心になります。
Q. SMBCのカーボンニュートラル目標はどうなっていますか?
SMBCは、2050年カーボンニュートラルに向けた「気候変動対策ロードマップ」を掲げています。目標は2階建てです。自社の事業活動から出る排出(Scope1・2)を2030年にネットゼロ、お金を貸した先を含む投融資ポートフォリオの排出(Scope3)を2050年にネットゼロにすることをめざしています。自社の削減を先行させ、その先の投融資全体へと進む構造です。
Q. GREEN×GLOBE 2030とは何ですか?
GREEN×GLOBE 2030(グリーン・グローブ 2030)は、SMBCグループのサステナビリティに関する取り組みです。2020年に策定されました。柱のひとつが、サステナビリティに資するファイナンスの実行です。2030年までに、環境や社会の課題解決に役立つファイナンスを累計30兆円(うちグリーンファイナンスを20兆円)実行する目標を掲げています。お金の出し手として、社会全体の脱炭素や課題解決を後押しする役割です。
Q. SMBCの石炭火力への方針はどうなっていますか?
SMBCは、石炭火力発電に関連する融資について、2040年までに融資残高をゼロにする方針を掲げています。化石燃料の中でもCO2排出の大きい石炭火力に、明確な期限を設けて縮小していく方針です。ただし、急に融資を止めればエネルギー供給や地域経済への影響もあるため、脱炭素へ移行する企業を支えながら、段階的に減らしていく姿勢がとられています。批判と対応の両面がある論点です。
Q. SMBCのESG経営から学べることは何ですか?
大きく2つあります。1つ目は、自社の排出だけでなく、投融資という本業を通じた影響に責任を持とうとしている点です。2つ目は、石炭火力残高ゼロのように、化石燃料融資に明確な期限を示している点です。MUFGなど他のメガバンクとあわせて見ると、日本の金融業界全体が、お金の流れを通じて脱炭素に向かおうとしている姿が見えてきます。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。
Sources
出典・参考(一次情報)
- SMBCグループ「気候変動への対応」
- SMBCグループ「サステナビリティ」
- SMBCグループ「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」
- 三井住友FG|コーポレート・ガバナンス
※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年7月19日