シュナイダーエレクトリックのESG経営を分析|自社と社会の脱炭素

2026.07.18
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

電機海外

脱炭素の主役は、風車や太陽光パネルだけではありません。すでにある電気を、いかに「賢く使うか」。ここにも、大きな削減の余地があります。この「エネルギーの使い方」を最適化する事業で、世界をリードするのが、フランスのシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)です。同社は「世界で最も持続可能な企業」に選ばれたこともあります。本記事では、自社の脱炭素と、顧客の脱炭素を助ける事業という二つの役割を軸に、そのESG経営を公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

シュナイダーエレクトリックのESG経営とは|エネルギーの使い方を変える

まず、シュナイダーエレクトリックがどんな企業で、そのESG経営がなぜ注目されるのかを整理しましょう。

二つの役割で、脱炭素へ

エネルギーマネジメントの世界的企業
自社を減らす事業活動やサプライチェーンの排出を減らす
社会を助ける省エネや電化の製品で、顧客の排出削減を助ける

エネルギーの使い方を最適化する事業が、脱炭素に直結する。

出典:Schneider Electricの公表情報をもとにgreenote作成

エネルギーマネジメントの世界的企業

シュナイダーエレクトリックは、フランスに本拠を置く、エネルギーマネジメントと産業オートメーションの世界的企業です。ビルや工場、データセンター、住宅など、あらゆる場所で、電気を効率よく安全に使うための機器やソフトウェアを提供しています。

聞き慣れない社名かもしれませんが、その役割は重要です。同社が扱うのは、電気を「つくる」より、電気を「うまく使う」ための技術だからです。分電盤や電力の制御機器、そしてエネルギーの使用状況を見える化するソフトウェアなど。エネルギーの無駄をなくす、いわば縁の下の力持ちのような存在になります。

二つの役割で脱炭素に挑む

同社のESG経営を理解する鍵は、二つの役割にあります。ひとつは、他の多くの企業と同じように、自社の排出を減らす役割です。事業活動やサプライチェーンから出るCO2を削減していきます。

もうひとつが、より特徴的な役割です。省エネや電化を実現する製品・サービスを通じて、顧客や社会全体の排出削減を助ける役割になります。自社を減らすだけでなく、社会を減らす。この二つを同時に担える点が、エネルギーマネジメント企業ならではの強みです。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

02

事業を通じた貢献|省エネ・電化で顧客の排出を減らす

同社のESG経営の最大の特徴は、本業そのものが脱炭素に直結している点です。

本業が、社会の排出を減らす

シュナイダーの製品・サービス省エネ機器やエネルギー管理システム、電化を支える技術
顧客の効果電力消費を減らし、CO2の排出を減らせる

この社会の削減分を削減貢献と呼ぶ。ただし、自社の排出量とは別の指標。

出典:Schneider Electricの公表情報をもとにgreenote作成

シュナイダーエレクトリックのESG経営で、まず注目すべきは、本業のあり方です。同社の製品やサービスは、それ自体が顧客の省エネと脱炭素に役立ちます。たとえば、エネルギーの使用状況を見える化し、無駄を減らすシステムや、化石燃料の設備を電気に置き換える電化を支える技術です。使えば使うほど、社会のCO2が減っていく。そんな事業構造になっています。電化について詳しくは、関連記事の電化(電化シフト)とはもあわせてご覧ください。

こうして社会で減らされたCO2を、「削減貢献(avoided emissions)」と呼びます。同社は、この削減貢献を経営の重要な指標として掲げてきました。ただし、ここで一点、大切な注意があります。削減貢献は、自社の排出量(Scope1・2・3)とは別に計算される指標だということです。社会の削減に大きく貢献していても、それが自社の排出をゼロにするわけではありません。両者を区別して見ることが、正しい理解につながります。サプライチェーン排出の考え方は、関連記事のScope3とはもあわせてご覧ください。

03

自社の脱炭素目標|2025年カーボンニュートラルから2050年ネットゼロへ

他社を助けるだけでなく、自社の足元の削減にも高い目標を掲げています。

三つの段階で、ネットゼロへ

2025年自社オペレーションのカーボンニュートラル
2030年自社の排出Scope1・2を2017年比で90%削減し、除去で残りを埋め合わせるネットゼロレディ
2050年バリューチェーン全体でネットゼロ

科学的根拠にもとづく目標。2030年までに事業活動での生物多様性の正味の損失もなくす。

出典:Schneider Electricの公表情報をもとにgreenote作成

顧客の脱炭素を助ける一方で、シュナイダーエレクトリックは、自社の足元でも高い目標を掲げています。その目標は、科学的根拠にもとづき、段階的に設定されました。公表情報によれば、まず2025年に、自社オペレーションのカーボンニュートラルを目指します。工場やオフィスなど、自社の活動から出るCO2を実質ゼロにする段階です。

次に2030年には、自社の排出(Scope1・2)を2017年比で90%削減し、残りをCO2の除去で埋め合わせる「ネットゼロ・レディ」なオペレーションを目指します。そして最終的に、2050年にはバリューチェーン全体でのネットゼロを掲げています。あわせて、2030年までに事業活動での生物多様性の正味の損失をなくすことも目標にしました。気候だけでなく自然にも視野を広げている点が、包括的です。

04

Schneider Sustainability Impact|成果を測って開示する

目標を掲げるだけでなく、その進み具合を測り、開示する仕組みがあります。

掲げて、測って、開示する

Schneider Sustainability Impact(SSI)
KPIを設定気候や資源、公平性などのテーマごとに指標を決める
スコアで管理達成度を数値で追う
四半期ごとに公表定期的に開示して透明性を高める

目標を掲げるだけでなく、達成度を定期的に数字で示す

出典:Schneider Electricの公表情報をもとにgreenote作成

高い目標を掲げても、進み具合がわからなければ、絵に描いた餅になりかねません。そこでシュナイダーエレクトリックが用いるのが、Schneider Sustainability Impact(SSI)という独自の仕組みです。これは、サステナビリティの成果を測り、開示するための枠組みになります。

SSIでは、気候や資源、公平性といったテーマごとに、具体的なKPI(指標)を設定します。そして、その達成度をスコアとして管理し、四半期ごとに公表しているのが特徴です。目標を掲げるだけでなく、達成度を定期的に数字で示す。この姿勢が、取り組みの透明性と実効性を支えています。サステナビリティは「言うだけ」になりがちだからこそ、測って開示するSSIの仕組みには、学ぶべき点が多くあります。

05

「世界で最も持続可能な企業」と評価される理由と留意点

高い評価を受ける背景と、あわせて知っておきたい留意点を見ておきましょう。

高い評価と、冷静な視点

評価される理由本業が脱炭素に直結し、自社の削減目標も高く、成果を測って開示している。世界で最も持続可能な企業に選ばれたこともある
留意点削減貢献は自社の排出削減とは別の指標。外部評価は評価の基準によって変わりうる

出典:Schneider Electricの公表情報および公開報道をもとにgreenote作成

シュナイダーエレクトリックは、外部からの評価も高い企業です。国際的なランキングで、「世界で最も持続可能な企業」に選ばれたこともあります。その理由は、これまで見てきた通りです。本業が脱炭素に直結し、自社の削減目標も高く、しかも成果を測って開示している。この三拍子がそろっている点が、高い評価につながっています。

ただし、冷静な視点も持っておきたいところです。第一に、前述の通り、削減貢献は自社の排出削減とは別の指標である点です。社会への貢献と、自社の足元の削減は、分けて評価する必要があります。第二に、外部評価は、その評価の基準や手法によって結果が変わりうるという点です。あるランキングで高くても、別の基準では評価が異なることもあります。評価をうのみにせず、中身を見る。そうした姿勢が、ESGを正しく理解するうえで欠かせません。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。

06

まとめ|シュナイダーエレクトリックのESG経営から学べること

シュナイダーエレクトリックの歩みは、本業とサステナビリティを一致させることの強さを教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

シュナイダーに学ぶ、3つのこと

本業と一致させるエネルギーを効率化する事業そのものが、社会の脱炭素に貢献する
自社も高い目標2050年バリューチェーン全体ネットゼロへ、段階的に
測って開示するSSIで達成度を四半期ごとに数字で示す

出典:Schneider Electricの公表情報をもとにgreenote作成

シュナイダーエレクトリックのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • フランスのエネルギーマネジメントの世界的企業。エネルギーの使い方を最適化する事業が中核
  • 二つの役割で脱炭素に挑む。自社の排出を減らしつつ、省エネ・電化の製品で顧客の削減も助ける
  • 顧客側の削減を削減貢献として重視。ただし自社の排出量(Scope1・2・3)とは別の指標
  • 自社目標は2025年オペレーションCN・2030年Scope1・2を2017年比90%削減・2050年バリューチェーン全体ネットゼロ
  • SSIで成果を測り、四半期ごとに開示。透明性の高さが「世界で最も持続可能な企業」の評価にもつながる

シュナイダーエレクトリックから学べるのは、本業とサステナビリティを一致させることの強さです。エネルギーを効率化する事業そのものが、社会の脱炭素に役立つ。だからこそ、事業の成長と環境貢献が、同じ方向を向きます。加えて、SSIのように成果を測って開示する姿勢は、取り組みの信頼性を高めます。一方で、削減貢献と自社削減は別の指標であることや、外部評価は基準しだいで変わることも、冷静に押さえておきたいところです。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. シュナイダーエレクトリックとはどんな企業ですか?

シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)は、フランスに本拠を置く、エネルギーマネジメントと産業オートメーションの世界的企業です。ビルや工場、データセンター、住宅などで、電気を効率よく安全に使うための機器やソフトウェアを提供しています。エネルギーの「使い方」を最適化する事業を中核とするため、その製品やサービスが、顧客の省エネと脱炭素に直接つながる点が特徴です。

Q. シュナイダーエレクトリックのESG経営の特徴は何ですか?

最大の特徴は、二つの役割で脱炭素に挑んでいる点です。1つ目は、自社の事業活動やサプライチェーンの排出を減らすこと。2つ目は、省エネや電化を実現する製品・サービスを通じて、顧客や社会全体の排出削減を助けることです。とくに後者は「削減貢献」と呼ばれ、自社の排出削減とは別に、社会のCO2を減らす貢献として重視されています。本業そのものが脱炭素に直結する点が、同社のESG経営を際立たせています。

Q. 「削減貢献」とは何ですか?自社の排出削減とどう違いますか?

削減貢献(avoided emissions)とは、企業の製品やサービスが、社会で使われることによって減らしたCO2の量を指します。たとえば、省エネ機器やエネルギー管理システムを導入した顧客が、電力消費を減らせた分がこれにあたります。ただし、これは自社の排出量(Scope1・2・3)とは別に計算される指標です。削減貢献が大きいからといって、自社の排出がゼロになるわけではありません。両者は区別して理解する必要があります。

Q. シュナイダーエレクトリックの脱炭素目標はどうなっていますか?

科学的根拠にもとづく目標として、複数の段階が設定されています。公表情報によれば、2025年に自社オペレーションのカーボンニュートラル、2030年に自社の排出(Scope1・2)を2017年比で90%削減し、除去で残りを埋め合わせる「ネットゼロ・レディ」なオペレーションを目指しています。そして2050年には、バリューチェーン全体でのネットゼロを掲げています。あわせて、2030年までに事業活動での生物多様性の正味の損失をなくすことも目標にしています。

Q. Schneider Sustainability Impact(SSI)とは何ですか?

Schneider Sustainability Impact(SSI)は、シュナイダーエレクトリックがサステナビリティの成果を測り、開示するための独自の仕組みです。気候や資源、公平性などのテーマごとに具体的なKPI(指標)を設定し、その進み具合をスコアとして四半期ごとに公表しています。目標を掲げるだけでなく、達成度を定期的に数字で示すことで、取り組みの透明性と実効性を高めているのが特徴です。

Q. シュナイダーエレクトリックのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、本業とサステナビリティを一致させている点です。エネルギーを効率化する事業そのものが、社会の脱炭素に貢献しています。2つ目は、成果を測って定期的に開示する姿勢です。SSIのように進み具合を数字で示すことは、取り組みの信頼性を高めます。一方で、削減貢献と自社の排出削減は別の指標であることや、外部評価は評価の基準によって変わりうることも、あわせて理解しておくことが大切です。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月18日

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