積水化学のESG経営を分析|CDPトリプルA級の環境戦略と貢献製品

2026.06.20
サステナビリティ開示

ESGの先進企業として、しばしば名前が挙がるのが積水化学グループです。CDPの最高評価Aの常連であり、化学業界で初めてSBT認定を取得した同社は、他社がベンチマークする対象として外せません。なぜ積水化学のESG経営は高く評価されるのでしょうか。

本記事では、公開情報をもとに、積水化学の環境長期ビジョン、SBT・RE100といった目標設定、CDPでの評価、そして売上の大半を占める「サステナビリティ貢献製品」までを、実務担当者の視点で読み解きます。

目次

サステナビリティ | 積水化学工業株式会社 公式サステナビリティサイト サステナビリティ | 積水化学工業株式会社 積水化学および積水化学グループのサステナビリティです。サステナビリティの取り組みやサステナビリティ貢献製品、社会からの評価などの情報をご紹介します。 www.sekisui.co.jp

積水化学グループとESG経営

積水化学工業は、住宅事業で知られる一方、高機能材料やインフラ関連まで幅広く手がける素材・化学メーカーです。事業の多様さは、ESGの取り組みの幅広さにも表れます。

数字で見る積水化学のESG

先進性を示す5つのファクト

業界初のSBT

2018年6月

化学業界で初めてSBT認定を取得

RE100加盟

2020年8月

2030年に購入電力100%再エネへ

2050

GHGゼロ

事業活動からの排出をゼロに

A評価

CDP気候・水

森林もA-(2025年12月公表分)

76.8%

貢献製品の売上比率

FY2024 約9,968億円

公開情報をもとにgreenote編集部が整理。投資を勧めるものではありません。

出典:CDPおよび積水化学グループの公開情報をもとにgreenote作成

4つの事業領域

積水化学グループの事業は、大きく住宅(セキスイハイム等)、高機能プラスチックス、環境・ライフライン、メディカルなどに分かれます。住宅では省エネ・耐久性、インフラでは長寿命化、材料では環境負荷の低い製品——と、各事業がそれぞれの形で社会課題と接点を持つのが特徴です。

この事業構成の幅広さが、気候変動から資源循環、水リスクまで、多面的なESGテーマに取り組む素地となっているのです。素材メーカーでありながら、暮らしやインフラに近い製品を持つ点が、同社の特徴です。

ESGを経営の中核に据える姿勢

積水化学の特徴は、ESGを「コスト」や「義務」ではなく、成長戦略の中核に位置づけている点にあります。長期の環境ビジョンを掲げ、そこから中期計画・年次目標へと落とし込む一貫した設計を敷いている点も特徴です。

サステナビリティを経営から切り離さず、本業と一体で考える。この姿勢こそが、同社のESG評価の高さの土台だといえるでしょう。

環境長期ビジョン「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」

積水化学のESGの背骨となるのが、2050年を見据えた環境長期ビジョンです。長期の「ありたい姿」から逆算する設計が一貫しているのが強みといえます。

2050年に「生物多様性が保全された地球」へ

積水化学は、環境長期ビジョン「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」を掲げ、2050年に「生物多様性が保全された地球」の実現をめざしています(積水化学 サステナビリティ)。気候変動対策にとどまらず、自然全体との共生を最終的なゴールに据えている点が特徴です。

このビジョンは、遠い理想を掲げるだけのものではありません。2050年の姿から逆算(バックキャスト)して中期の環境計画に落とし込み、具体的な目標と結びつけているところに、実効性があります。

重点3課題(気候変動・資源枯渇・水リスク)

このビジョンでは、優先的に取り組む環境課題として、気候変動・資源枯渇・水リスクの3つです。いずれも、素材・化学メーカーの事業と密接にかかわるテーマです。

注目すべきは、課題を「気候」だけに絞らず、資源や水まで広く捉えている点です。事業が自然資本にどう依存し、どう影響するかを直視する姿勢は、TNFDなど自然関連の開示が広がるなかで、先見性があったといえます。マテリアリティの考え方はマテリアリティとはもあわせてご覧ください。

環境長期ビジョン2050の重点3課題

「生物多様性が保全された地球」をめざして

気候変動

2050年に事業活動からのGHGゼロ。SBT・RE100で再エネ転換を加速。

資源枯渇

資源の有効利用・循環を推進し、製品ライフサイクル全体での負荷を低減。

水リスク

水の持続可能な利用に取り組み、CDP水セキュリティでも高評価。

気候だけでなく資源・水まで広く捉えるのが、積水化学の環境戦略の特徴です。

出典:積水化学グループの公開情報をもとにgreenote作成

気候変動への取り組み(SBT・RE100)

脱炭素では、業界に先駆けた動きが目立ちます。象徴的なのが、SBTとRE100という2つの国際的な枠組みへの早期コミットです。

化学業界初のSBT認定

積水化学は、2018年6月に化学業界で初めてSBT(Science Based Targets)認定を取得しました。科学的根拠に基づく削減目標を、業界に先んじて掲げた形です。SBTの仕組みはSBT(Science Based Targets)とはで解説しています。

「業界初」という事実は、単なる先進性の証にとどまりません。早くから科学的な目標を持つことで、削減の道筋を具体的に描き、投資家や取引先に対する説明力を高めてきました。目標設定の速さが、後の評価の高さへとつながったのです。

2030年 購入電力100%再エネ・2050年 GHGゼロ

具体的な目標も明確です。積水化学は2020年8月にRE100へ加盟し、2030年までに購入電力を100%再生可能エネルギーに転換する方針を掲げています。さらに長期では、2050年までに事業活動からの温室効果ガス排出をゼロにする目標を設定しました。RE100の詳細はRE100とはもあわせてご覧ください。

短期(2030年の再エネ)と長期(2050年のゼロ)の二段構えで目標を置くことで、進捗を測りやすくしている点も巧みです。掲げて終わりではなく、達成への道筋まで描く——この一貫性が、同社の強みです。

CDPでの高評価と他社が学べる点

積水化学のESGは、第三者評価でも裏づけられています。なかでもCDPのスコアは、同社の取り組みの質を示す客観的な指標です。

気候変動A・水セキュリティAの常連

積水化学は、CDPの気候変動と水セキュリティの両分野で、最高評価のAスコアの常連です(2025年12月公表分)。森林分野でもA-と高く、3分野で高水準の評価を得ました(CDP)。気候だけでなく水・森林でも高評価という事実は、同社が環境課題を幅広くカバーしている証拠です。

CDPは、開示の透明性とパフォーマンスを厳しく評価する国際的なイニシアティブです。CDPの仕組みはCDPとはで解説しています。複数分野でAクラスを維持することは容易ではなく、ここに同社の取り組みの厚みがにじみます。

サプライヤーを巻き込む姿勢

注目すべきは、自社だけでなくサプライヤーを巻き込む姿勢です。積水化学は、CDPのサプライヤー・エンゲージメント・リーダーにも選定されています。これは、取引先の排出削減を促す取り組みが評価されたものです。

Scope3(サプライチェーン排出量)の削減には、取引先の協力が欠かせません。自社の足元だけでなく、バリューチェーン全体を動かそうとする姿勢は、多くの企業が見習うべき点だといえるでしょう。

サステナビリティ貢献製品|ビジネスとESGの両立

積水化学のESGを語るうえで、最も象徴的なのが「サステナビリティ貢献製品」という考え方です。ESGを収益と結びつける、同社ならではの発想が表れています。

売上の約77%を占める貢献製品

積水化学は、自然環境・社会課題の解決に大きく貢献する自社製品を「サステナビリティ貢献製品」と定義しています。2024年度には、その売上高が約9,968億円に達し、グループ総売上の約76.8%を占めました(積水化学 サステナビリティレポート)。

売上の大半が、社会・環境課題の解決に資する製品で構成されている——この数字は、ESGが本業と一体化していることを端的に示すものです。環境対応が売上を生むのであれば、取り組みは持続的になります。

本業を通じた価値創出という発想

ここに、積水化学のESG経営の本質があります。寄付や社会貢献活動としてではなく、本業の製品・サービスを通じて社会課題を解決し、それを収益に変える。いわゆるCSV(共通価値の創造)の発想です。

この考え方は、ESGを「やらされるもの」から「稼ぐための戦略」へと転換させます。だからこそ社内の納得感も高まり、取り組みが続く。ビジネスとESGを対立させない設計が、同社の持続力の源泉です。

実務担当者がベンチマークすべきポイント

積水化学の事例は、ESG先進企業の「型」を示しています。最後に、自社の実務に活かせる視点を整理します。

他社がベンチマークすべき3つの型

積水化学のESG経営に学ぶ

1

長期ビジョンからのバックキャスト

2050年のありたい姿から逆算し、中期・年次目標へ落とし込む。目標を絵に描いた餅にしない王道の設計。

2

ESGを本業の製品価値に結びつける

サステナビリティ貢献製品のように、環境対応を収益と両立させる(CSV)。だから取り組みが続く。

3

サプライヤーを巻き込む

自社だけでなくバリューチェーン全体で動く。Scope3対応が当たり前の時代の必須姿勢。

いずれも業種を問わず応用できる学びです。

出典:積水化学グループの公開情報をもとにgreenote作成

第一に、長期ビジョンからのバックキャスト設計です。2050年のありたい姿から逆算し、中期・年次の目標へ落とし込む構造は、目標を絵に描いた餅にしないための王道です。第二に、ESGを本業の製品価値に結びつける視点です。サステナビリティ貢献製品のように、環境対応を収益と両立させられれば、取り組みは持続します。

第三に、サプライヤーを巻き込み、バリューチェーン全体で動く姿勢です。Scope3対応が当たり前になるなか、取引先との協働は避けて通れません。これらはいずれも、業種を問わず応用できる学びです。他社のESG経営は、花王のESG経営を分析キリンのESG経営を分析もあわせてご覧ください。自社のベンチマークの参考になれば幸いです。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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