ESG評価・格付けとは|MSCI・FTSE・CDPなど主要機関と企業の対応を解説

2026.06.13
ESG投資

同じ会社なのに、ある評価機関では高得点、別の機関では平凡。ESG評価の世界では、こうした「ねじれ」が当たり前に起こります。投資家がますます重視するESG評価とは、いったい何を測り、どう使われているのでしょうか。

ESG評価・格付けとは、企業の環境・社会・ガバナンスの取り組みを、第三者の評価機関が分析し、スコアや等級で点数化したものを指します。投資判断やESG指数の銘柄選定、資金調達の条件にまで影響する、企業価値の新しいものさしです。

本記事では、ESG評価の意味と重要性から、公開情報ベースと質問票ベースという2つのタイプ、MSCI・FTSE・CDPなど主要な評価機関、評価が割れる理由、そして企業に求められる対応までを、わかりやすく解説します。開示の「次」に問われるテーマとして、お役に立てれば幸いです。

ESG評価は「開示」と「投資」をつなぐ

開示を土台に評価され、評価が投資につながる

STEP 1

企業の情報開示

有価証券報告書・統合報告書・サステナサイト

STEP 2

ESG評価機関がスコア化

MSCI・FTSE・CDP・Sustainalytics など

STEP 3

活用

投資判断・ESG指数の銘柄選定・資金調達条件

評価の材料は企業の開示情報。だからこそ、質の高い開示がESG評価の土台になります。

目次

ESG評価・格付けとは|企業のESGを点数化する仕組み

まずは、ESG評価という言葉の意味と、なぜそれが重要なのかを押さえましょう。ここを理解すると、開示との関係も見えてきます。

ESG評価・格付けとは

ESG評価は、企業の環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)への取り組みを、専門の評価機関が分析し、点数や等級で表したものです。財務諸表には表れない、非財務の側面を評価します。

評価の材料は、企業が開示する情報です。統合報告書やサステナビリティサイト、有価証券報告書といった開示資料をもとに、各機関が独自の手法でスコアを算出します。いわば、企業のESGの通信簿のような存在です。ESG情報開示の全体像は、関連記事のESG情報開示とは|基礎・開示の枠組みと企業が押さえるポイントもあわせてご覧ください。

なぜ重要か|投資・指数・資金調達に直結

ESG評価が重視されるのは、それが具体的なお金の流れに直結するからです。多くの機関投資家が、投資先を選ぶ際にESG評価を参考にします。

とりわけ大きいのが、ESG指数への組み入れです。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用するESG指数では、評価の高い企業が選ばれます。指数に入れば、その指数に連動する膨大な資金が自社の株式に向かいます。さらに、ESG評価は融資や債券の条件にも影響し始めています。評価は、もはや無視できない経営課題です。ESG投資の全体像は、関連記事のESG投資とは|手法と市場の広がりもあわせてご覧ください。

信用格付けとの違い

ESG格付けは、よく知られた信用格付けとは異なります。信用格付けは、企業が借りたお金を返せるか、という財務的な信用力を測るものです。評価機関が違っても、結果はおおむね一致するのが普通です。

一方ESG格付けは、非財務の幅広いテーマを扱うため、何を重視するかが機関によって分かれます。後で見るように、同じ企業でも評価が大きく食い違うことが珍しくありません。この点が、信用格付けとの決定的な違いです。

2つのタイプ|公開情報ベースと質問票ベース

ESG評価は、情報の集め方で大きく2つに分かれます。それぞれの違いを押さえると、対応の勘所が見えてきます。

公開情報ベース(MSCI・FTSEなど)

1つ目が、公開情報ベースの評価です。企業が公開している開示資料や報道などをもとに、評価機関が独自にスコアを付けます。MSCI、FTSE、Sustainalyticsなどがこのタイプです。

特徴は、企業が回答作業をしなくても評価される点にあります。裏を返せば、開示が不十分だと、実態より低く評価されかねません。「やっていても、書いていなければ評価されない」。公開情報型では、開示の充実がそのままスコアに響きます。

質問票ベース(CDP・S&P CSAなど)

2つ目が、質問票ベースの評価です。評価機関が送る質問書に、企業が回答し、その内容がスコア化されます。CDP、S&P Global CSA/DJSI、EcoVadisなどが代表例です。

このタイプでは、企業側に回答を作成するプロセスが発生します。質問は詳細で量も多く、対応には相応の体制と工数が必要です。そのぶん、自社の取り組みを能動的に伝えられる余地も大きいといえます。

2タイプで企業の関与が変わる

2つのタイプの最大の違いは、企業の関与度です。公開情報型は、企業が動かなくても勝手に評価が付きます。だからこそ、日頃の開示の質が問われます。

質問票型は、企業が回答しなければ評価が進みません。期限内に、的確に回答する必要があります。自社がどの評価を受けているかを把握し、タイプに応じた備えをすることが、対応の第一歩です。

主要なESG評価機関

代表的なESG評価機関には、それぞれ特徴があります。主要な機関のスコア形式と位置づけを整理しましょう。

主要なESG評価機関の比較

タイプ・スコア形式・特徴で整理

評価機関タイプスコア特徴
MSCI公開情報AAA〜CCC8,300社超。GPIFのMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の基礎
FTSE Russell公開情報0〜57,200社超。GPIFのFTSE Blossom Japan Indexの基礎
CDP質問票A〜D-気候変動・水・森林。2024年に約22,000社が回答
Sustainalytics公開情報リスク値ESGリスクの大きさを評価。低いほど良い
S&P CSA質問票スコアDJSI(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ指数)の選定に使用

スコアの向きは機関で異なります。Sustainalyticsは低いほど良い点に注意。

各社公表情報・GPIF等より作成

MSCIとFTSE|GPIFのESG指数にも採用

MSCI ESG Ratingsは、世界8,300社超を対象とし、AAAからCCCの7段階で評価します。AAAが最高評価です。FTSE Russell ESG Ratingsは、世界7,200社超を対象に、0から5のスコアで評価します。

この2つは、日本企業にとってとりわけ重要です。GPIFが採用するESG指数のうち、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数はMSCIの、FTSE Blossom Japan IndexはFTSEの評価データにもとづいて銘柄が選ばれているためです。両機関の評価が、巨額の年金資金の流れに影響します。

CDP|気候・水・森林の質問書

CDPは、気候変動・水セキュリティ・森林という環境テーマに特化した、質問票ベースの評価です。企業が質問書に回答し、AからD-で格付けされます。Aが最高評価です。

その影響力は年々高まり、2024年には過去最多となる約22,000社が回答しました。気候分野での評価のデファクト標準といえる存在です。総合的なESG評価とは異なり、環境分野を深く掘り下げる点が特徴です。

Sustainalyticsとその他の機関

SustainalyticsのESG Risk Ratingsは、少し変わった視点を持ちます。企業価値に対するESG「リスク」の大きさを測り、スコアが低いほどリスクが小さく、良い評価となります。高いほど良い他の多くの機関とは、逆の読み方になる点に注意が必要です。

このほか、S&P Global CSA(DJSIの選定に使われる)、ISS ESG、Moody’s、サプライチェーン評価で知られるEcoVadisなど、多くの機関が存在します。自社がどの評価を受け、投資家がどれを見ているかを把握することが出発点です。

ESG格付けの課題|なぜ評価が割れるのか

同じ企業でも、評価機関によって格付けが大きく異なることがあります。その理由と論点を整理しましょう。

なぜ評価が割れるのか|ESG格付けの乖離

同じ1社でも、評価機関でスコアが食い違う

同じ企業 A社
評価機関 X
高評価
高い
評価機関 Y
中程度
評価機関 Z
低評価
低い

乖離が生じる3つの要因

  • 評価する項目の範囲が機関ごとに違う
  • 各項目のウェイト付けが異なる
  • 未開示情報を埋めるデータの推定方法が違う

信用格付けと違い、機関間の相関が低いのが特徴です。複数の評価を併せて見る視点が重要です。

評価の乖離(ダイバージェンス)

ESG格付けの最大の論点が、評価の乖離(ダイバージェンス)です。同じ企業を評価しても、機関によって結果が大きく食い違う現象を指します。

信用格付けでは、機関が違っても結果はほぼ一致します。ところがESG格付けでは、相関が低いことが多くの研究で示されてきました。ある機関のトップ評価企業が、別の機関では平均以下、ということも起こり得ます。投資家にとっても企業にとっても、悩ましい問題です。

基準・ウェイト・データの違い

なぜ乖離が生じるのでしょうか。要因は、主に3つあります。第一に、評価する項目の範囲が機関ごとに違います。第二に、各項目をどれだけ重視するかのウェイト付けが異なります。

第三に、開示されていない情報を埋めるデータの推定方法が違います。何を、どれだけ、どう測るか。その設計思想が機関ごとに異なるため、結果も分かれるのです。ESGという幅広く定義の難しい概念を扱う以上、ある程度は避けられない側面ともいえるでしょう。

透明性と「ESG格付け規制」の動き

乖離とあわせて問われているのが、評価手法の透明性です。スコアの算出過程がブラックボックスで、企業からは「なぜこの評価なのか」が見えにくい、という声も根強いのです。

こうした懸念を背景に、EUなどではESG格付けの提供者を対象とする規制の整備が進んでいます。評価の透明性や、利益相反の管理を求める動きです。ESG評価は、評価する側のあり方も問われる段階に入っています。見せかけの環境配慮を見抜く視点は、関連記事のグリーンウォッシュとは|見せかけの環境配慮を見抜くポイントもあわせてご覧ください。

企業に求められる対応

ESG評価にどう向き合えばよいのでしょうか。実務での対応のポイントを整理します。

土台は開示の充実(SSBJ・ISSB対応)

何よりの土台は、開示の充実です。とりわけ公開情報型の評価では、開示されていない取り組みは評価されません。実際にやっていることを、漏れなく、わかりやすく開示することが出発点になります。

折しも、SSBJやISSBといった開示基準の整備が進んでいます。これらに沿って質の高い開示を行うことは、そのままESG評価の改善にもつながります。開示と評価は、地続きの関係にあるのです。サステナビリティ開示基準は、関連記事のSSBJ基準とは|日本のサステナビリティ開示基準もあわせてご覧ください。

重点を置く評価機関を絞る

すべての評価機関に、満点で対応するのは現実的ではありません。限られたリソースを、効果的に配分することが欠かせません。

そこで重要なのが、重点を置く評価機関を絞ることです。自社の主要な投資家が、どの評価を重視しているか。自社が組み入れられたい指数は、どの機関のデータを使うか。そうした観点から優先順位をつけ、メリハリのある対応をすることが賢明です。

評価機関との対話とデータ整備

最後に、評価機関との対話とデータ整備です。質問票型では、期限内に的確に回答する体制が要ります。公開情報型でも、評価に事実誤認があれば、対話を通じて修正を求められる場合があります。

社内に散らばるESGデータを整え、継続的に開示・回答できる体制を築く。地道ですが、これが評価向上の王道です。ただし、評価を上げること自体が目的化しないよう注意が必要です。評価は、あくまで実態を映す鏡。本質は、ESGの取り組みそのものの質です。

まとめ|ESG評価は「開示」と「投資」をつなぐ

ESG評価・格付けは、企業のESGを点数化し、投資へとつなぐ仕組みです。最後に、要点を振り返ります。

  • ESG評価とは、企業のE・S・Gの取り組みを第三者が点数化したもので、投資判断・ESG指数・資金調達に直結する
  • 公開情報ベース(MSCI・FTSE・Sustainalytics)と質問票ベース(CDP・S&P CSAなど)の2タイプがある
  • MSCI・FTSEはGPIFのESG指数の基礎で、日本企業に影響大。CDPは環境分野の質問書で2024年に約22,000社が回答
  • 同じ企業でも評価が割れるダイバージェンスが課題で、基準・ウェイト・データの違いが要因。透明性をめぐる規制も進む
  • 企業対応の土台は開示の充実(SSBJ・ISSB)。重点機関を絞り、対話とデータ整備を進めることが現実的である

ESG評価は、開示と投資をつなぐ結節点です。評価に振り回されるのではなく、質の高い開示と、実のある取り組みで応えること。それが、長期的な企業価値の向上につながります。ESG・サステナビリティの全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。greenoteでは、ESG・サステナビリティ開示の実務情報を、これからもお届けしていきます。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

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