大和ハウス工業のESG経営を分析|建てるほど再エネが増える

2026.07.20
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

建設・住宅国内

建物を建てれば、その分だけCO2が出る——。ふつうは、そう考えます。ところが、「建てるほど、再エネが増える」と言い切る会社があります。総合住宅・建設大手の大和ハウス工業です。住宅や施設を建てながら、同時に社会の再生可能エネルギーを増やしていく。建設を、排出源ではなく脱炭素の力に変えるという発想です。では、それはどうやって実現するのでしょうか。本記事では、大和ハウス工業のESG経営を、「建てるほど再エネが増える」という思想を軸に、公式情報をもとに中立に分析していきます。

この記事の目次

01

大和ハウスのESG経営とは|建てるほど再エネが増える

まず、大和ハウスがどんな会社で、その脱炭素がなぜ独特なのかを整理しましょう。

建てるほど、再エネが増える

大和ハウス工業=総合住宅・建設・まちづくり大手
特徴戸建て・賃貸・商業施設・物流施設・まちづくり。自ら再エネ発電事業も手がける
目標2050年度ネットゼロ 2030年度にGHG50%削減

建物をつくる会社が、エネルギーもつくる

出典:大和ハウス工業の公表情報をもとにgreenote作成

住宅とまちづくりの会社

大和ハウス工業は、日本を代表する総合住宅・建設会社です。戸建て住宅や賃貸住宅に加え、商業施設や物流施設、そしてまちづくりまで、幅広く手がけています。ビルの施工を主とする一般的なゼネコンとは、少し性格が異なります。住宅とまちづくりに強みを持つ点が、大きな特徴です。

さらに近年は、自ら再生可能エネルギーの発電事業にも取り組んでいます。太陽光や風力の発電所を持ち、電気をつくる側にも回っているのです。建物をつくる会社が、エネルギーもつくる。この組み合わせこそが、後で見る「建てるほど再エネが増える」という発想の土台になっているのです。

2050年ネットゼロへの道筋

大和ハウスグループは、2050年度までに、温室効果ガス排出のネットゼロをめざしています。その通過点として、2030年度に温室効果ガスを50%削減する計画です。脱炭素の全体像は、関連記事のカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。

この目標の土台にあるのが、2016年に策定した環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」です。気候変動対策、自然環境との調和、資源循環と水環境の保全、化学物質による汚染の防止という、4つの重点テーマを掲げています。長期のビジョンと、具体的な数値目標。その両方を持つことで、着実に脱炭素を進める姿勢を示しています。

02

Endless Green Program|「建てるほど再エネが増える」

大和ハウスの脱炭素を象徴する、独特の考え方です。

建設を、脱炭素の力に変える

ふつうの発想建てるほどCO2が増える
大和ハウスの発想建てるほど新たな再エネが生まれ、社会の脱炭素が加速する

新築に太陽光を載せ、建物をエネルギーを生む場所に変える。環境行動計画 Endless Green Program。

出典:大和ハウス工業の公表情報をもとにgreenote作成

大和ハウスの脱炭素で、もっとも特徴的なのが、環境行動計画「Endless Green Program」の考え方です。そこでは、こう宣言されています。建物を建てるほど、新たな再生可能エネルギーが生まれ、社会の脱炭素が加速する——。

ふつう、建設は「排出を増やす活動」と受け止められがちです。しかし大和ハウスは、その常識をひっくり返します。新築の住宅や建物に太陽光パネルを載せれば、その建物はエネルギーを生む場所になります。つまり、建てれば建てるほど、社会に再エネが増えていくのです。建設を、排出源ではなく、脱炭素を進める力に変える。この発想の転換こそが、大和ハウスのESG経営の核心だといえます。

03

ZEH・ZEBと全屋根太陽光|住宅から脱炭素

使う建物そのものを、エネルギーを生む場所に変えます。

住まいを、ゼロエネルギーに

ZEH・ZEB=使うエネルギーを実質ゼロに近づけた住宅やビル
省エネ高い断熱と効率設備でエネルギー消費を抑える
創エネ屋根の太陽光で電気をつくる

2030年までに新築をほぼ全てZEH・ZEB化し全屋根に太陽光。再エネ100%のまちづくりへ。

出典:大和ハウス工業の公表情報をもとにgreenote作成

「建てるほど再エネが増える」を具体的に支えるのが、ZEH・ZEBです。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、高い省エネ性能と、太陽光などの創エネを組み合わせ、建物が使うエネルギーを実質ゼロに近づけたものを指します。

大和ハウスは、この普及に力を注いでいます。公表情報によれば、2030年までに、新築の住宅や建物をほぼすべてZEH・ZEB仕様にし、屋根には太陽光パネルを設置する方針です。一軒一軒、一棟一棟が、エネルギーを生む小さな発電所になっていくわけです。さらにその先には、街全体を再エネでまかなう再エネ100%のまちづくりという構想もあります。住宅という、暮らしにもっとも近い場所から、脱炭素を積み上げていく。ここに、住宅大手ならではの強みが表れています。

04

RE100と3つの国際イニシアチブ|先進性

大和ハウスは、国際的な枠組みでも先頭を走ってきました。

業界に先んじて、世界の枠組みへ

2018年 住宅・建設業界で初めて3つの国際イニシアチブに同時参加
SBT科学に基づく削減目標
EP100エネルギー生産性の倍増
RE100事業の電力を再エネ100%に

公表情報によれば、2023年度に購入電力の再エネ100%を達成

出典:大和ハウス工業の公表情報をもとにgreenote作成

大和ハウスの脱炭素は、国内にとどまりません。国際的な枠組みでも、業界の先頭を走ってきました。象徴的なのが、2018年の出来事です。この年、大和ハウスは住宅・建設業界で初めて、3つの国際イニシアチブに同時参加しました。

その3つとは、科学に基づく削減目標を掲げるSBT、エネルギー生産性の倍増をめざすEP100、そして事業で使う電力を再エネ100%にするRE100です。とりわけRE100については、公表情報によれば、2023年度に購入電力の再エネ100%を達成しています。掲げるだけでなく、実際に達成にこぎつけた点は、注目に値します。RE100の仕組みは、関連記事のRE100とはもあわせてご覧ください。業界に先んじて世界の基準に飛び込む。その先進性が、大和ハウスの強みのひとつです。

05

大成建設・清水建設との対比|同じ建設でも道は違う

建設業界の中でも、脱炭素への向き合い方はさまざまです。

同じ建設でも、力点は違う

共通=2050年カーボンニュートラルをめざす
大和ハウス住宅・まちづくり。建てるほど再エネが増える。ZEHと全屋根太陽光
大成建設ゼネコン。環境配慮コンクリートなどつくる時の材料技術
清水建設ゼネコン。Beyond ZeroとZEB・施工現場のCO2モニタリング

事業の性格が違えば脱炭素の力点も変わる。優劣ではない

出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成

同じ「建設」でも、脱炭素への道は一つではありません。ここで、これまで取り上げた2社と比べてみましょう。3社に共通するのは、2050年のカーボンニュートラルをめざす点です。一方で、事業の性格が違えば、力点も変わってきます。

大和ハウスは、住宅・まちづくりを主軸に、「建てるほど再エネが増える」ZEHと全屋根太陽光を前面に出します。これに対し、大成建設は環境配慮コンクリートなど「つくる時」の材料技術に、清水建設はBeyond ZeroとZEB、施工現場のCO2モニタリングに強みを示します。住宅中心の大和ハウスと、大型建築が中心のゼネコン2社。得意分野の違いが、脱炭素の進め方の違いになって表れているのです。どれが優れているという話ではありません。複数の会社を並べて見ることで、建設業界の脱炭素が立体的に見えてきます。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。

人的資本と多様性(S)|建設業界で先行する女性活躍

大和ハウス工業は、2007年に人事部内へ専任組織を設けて以来、建設・住宅業界で女性活躍を先導してきました。女性管理職の数値目標を早くから掲げ、施工管理の現場にも多数の女性技術者が従事。こうした取り組みが評価され、内閣府の「女性が輝く先進企業表彰」(内閣府特命担当大臣表彰)を受賞したとされます。

男性中心とされてきた建設現場での多様化は、担い手不足という業界課題への回答でもあります。女性活躍推進法の枠組みを超えた「現場の構造改革」として注目される事例です。

ガバナンス(G)|巨大グループの統治と持続性

創業者・石橋信夫の理念を受け継ぐ巨大グループとして、経営の監督には社外取締役(女性を含む)が参画し、事業スピンオフ・M&Aを重ねる経営の規律を支えているとされます。

住宅・物流施設から環境エネルギーまで事業が広がる同社では、E(ZEH・再エネ)の推進もグループ統治の実行力に懸かっています。

06

まとめ|大和ハウス工業のESG経営から学べること

大和ハウスの歩みは、事業のとらえ方しだいで、脱炭素は攻めの一手になりうることを教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

大和ハウスに学ぶ、3つのこと

事業を力に変える建てるほど再エネが増える。建設を脱炭素の力に
暮らしから積み上げるZEHと全屋根太陽光で住まいから脱炭素
先んじて動く業界初のRE100など国際枠組みに早くから参加し達成

出典:大和ハウス工業の公表情報をもとにgreenote作成

大和ハウス工業のESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • 総合住宅・まちづくり大手。2050年度ネットゼロ(2030年度にGHG50%削減)と長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」
  • Endless Green Program=「建てるほど再エネが増える」。建設を排出源ではなく脱炭素の力に変える
  • ZEH・ZEB全屋根太陽光で、住まいから脱炭素。再エネ100%のまちづくりへ
  • 2018年に業界初でSBT・EP100・RE100に同時参加し、2023年度にRE100達成
  • 大成建設・清水建設とは力点が異なる=住宅中心という事業の性格が表れる(優劣ではない)

大和ハウスから学べるのは、事業のとらえ方しだいで、脱炭素は「守り」から「攻め」に変わるということです。建設を排出源とみなせば重荷ですが、再エネを生む機会ととらえれば、成長の柱になります。業界に先んじて世界の枠組みに飛び込む姿勢も、示唆に富みます。もっとも、真のネットゼロには、資材やサプライチェーンの脱炭素も欠かせません。理想と、乗り越えるべき課題の両面を見つめることが、企業のESGを深く理解する助けになります。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. 大和ハウス工業とはどんな会社ですか?

大和ハウス工業は、日本を代表する総合住宅・建設会社です。戸建て住宅や賃貸住宅に加え、商業施設や物流施設、まちづくりまで幅広く手がけます。ビルの施工を主とする一般的なゼネコンとは異なり、住宅とまちづくりに強みを持つ点が特徴です。近年は、自ら再生可能エネルギーの発電事業も手がけ、脱炭素を成長の柱に据えています。

Q. 大和ハウスの脱炭素目標はどうなっていますか?

大和ハウスグループは、2050年度までに温室効果ガス排出のネットゼロをめざしています。中間目標として、2030年度に温室効果ガスを50%削減する計画です(基準年は公式情報をご確認ください)。土台には、2016年に策定した環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」があり、気候変動対策や資源循環など4つの重点テーマを掲げています。

Q. 「建てるほど再エネが増える」とはどういう意味ですか?

大和ハウスの環境行動計画「Endless Green Program」が掲げる考え方です。建物を建てるほど、新たな再生可能エネルギーが生まれ、社会の脱炭素が加速する、という発想を指します。新築の住宅や建物に太陽光パネルを載せ、エネルギーを生む場所に変えていくのです。建てることが排出を増やすのではなく、逆に再エネを増やす。この前向きな転換が、大和ハウスの脱炭素の核心です。

Q. ZEH・ZEBとは何ですか?

ZEH(ゼッチ)はネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ZEB(ゼブ)はネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略です。高い省エネ性能と、太陽光などの創エネを組み合わせ、建物が消費するエネルギーを実質ゼロに近づけたものを指します。大和ハウスは、2030年までに新築の住宅や建物をほぼすべてZEH・ZEB仕様にし、屋根には太陽光パネルを設置する方針を掲げています。

Q. 大和ハウスのRE100などの取り組みは進んでいますか?

はい。大和ハウスは2018年に、住宅・建設業界で初めて、SBT・EP100・RE100という3つの国際イニシアチブに同時参加しました。RE100は事業で使う電力を再エネ100%にする枠組みで、EP100はエネルギー生産性の倍増をめざす枠組みです。公表情報によれば、2023年度には、購入電力の再エネ100%を達成しています。業界に先んじた先進性が特徴です。

Q. 大和ハウスのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、「建てるほど再エネが増える」のように、事業そのものを脱炭素の力に変える発想です。建設を排出源ではなく、再エネを生む機会へと転換しています。2つ目は、RE100などに業界で先んじて参加する、先進性への姿勢です。もっとも、達成には資材やサプライチェーンの脱炭素も欠かせません。理想と課題の両面を見ることが大切です。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月20日

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