MetaのESG経営を分析|Scope3とウォーターポジティブ

2026.07.23
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

テクノロジー海外

脱炭素の目標を「達成した」と聞くと、ゴールに見えます。しかし本当の勝負は、その先にあります。Facebook・Instagramを運営するMetaは、自社の排出をすでに2020年にゼロにしました。にもかかわらず、いま同社の排出の99%が残っています。なぜでしょうか。答えは「Scope3」、すなわちサプライチェーン全体の排出にあります。本記事では、MetaのESG経営を、Scope3とウォーターポジティブを軸に、公式情報と公開報道をもとに中立に分析していきます。

この記事の目次

01

MetaのESG経営とは|自社は達成、次はScope3

まず、Metaがどんな会社で、その脱炭素がいまどの段階にあるのかを整理しましょう。

自社は達成、次はその先へ

Meta=Facebook・Instagram・WhatsAppを運営する巨大IT企業
達成済み自社の直接排出と電力(Scope1・2)を2020年にネットゼロ
これから2030年にバリューチェーン全体でネットゼロとウォーターポジティブ

CO2だけでなくにも目を向ける。

出典:Metaの公表情報をもとにgreenote作成

2030年ネットゼロとウォーターポジティブ

Metaは、Facebook・Instagram・WhatsAppなどを運営する巨大IT企業です。脱炭素で掲げる大きな目標は、2つです。ひとつが、2030年にバリューチェーン全体でネットゼロを達成すること。もうひとつが、同じく2030年にウォーターポジティブ、つまり使う以上の水を環境に還すことです。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

CO2だけでなく、にも目を向けている点が、Metaの特徴のひとつです。この2つの目標が、同社のESG経営の両輪になります。まずは、脱炭素の現在地から見ていきましょう。

Scope1・2は2020年に達成済み

じつはMetaは、脱炭素で早くから成果を上げてきました。自社の直接排出(Scope1)と、使う電力に伴う排出(Scope2)を、2020年にネットゼロにしています。オフィスや自社データセンターの電力を、100%再エネでまかなうなどして達成しました。公表情報によれば、2017年比で運用時の排出を94%削減したとされます。

では、もう脱炭素は終わったのでしょうか。答えは、いいえです。自社の運用はゼロにできても、部品の製造や建設など、事業を支えるサプライチェーン全体の排出が残っています。これがScope3です。Metaの本当の勝負は、ここから始まります。ScopeごとのCO2の分け方は、関連記事のScope3とはもあわせてご覧ください。

02

Scope3という本丸|排出の99%はここ

Metaの脱炭素の主戦場は、いまやScope3です。

排出の99%は、サプライチェーン

近年の純排出のうち99%がScope3
最大の要因資本財(データセンターなどの建設)約6割
次ぐ要因購入した製品・サービス 約2割

目標=2031年末までにScope3を2021年の基準から超えない。だが建設が続き抑制が課題

出典:Metaの公表情報をもとにgreenote作成

Metaの脱炭素の本丸は、Scope3です。その大きさは、際立ちます。公表情報によれば、近年の純排出のうち、なんと99%がScope3でした。自社運用(Scope1・2)はすでにゼロなので、残る排出のほぼすべてが、サプライチェーンから生まれているのです。

では、Scope3の中身は何でしょうか。最大の要因は、資本財、すなわちデータセンターなどの建設です。全体の約6割を占めます。次いで、購入した製品・サービスが約2割です。つまり、AI時代に向けてデータセンターを建てるほど、その建設に伴う排出が増えていく構図になります。Metaは、2031年末までにScope3を2021年の基準から超えないことを目安に掲げています。しかし、建設が続くなかでこれを抑えるのは、容易ではありません。ここが、Metaの最大の課題だといえます。

03

ウォーターポジティブ|水を還す会社へ

Metaのもうひとつの柱が、水への取り組みです。

使う以上に、水を還す

ウォーターポジティブ=2030年までに使う水より多くの水を環境に還す
背景データセンターはサーバーを冷やすため水を使う
目標水ストレスの高い地域では消費量の200%、中程度の地域では100%を回復する

出典:Metaの公表情報をもとにgreenote作成

Metaの環境目標は、CO2だけではありません。にも力を注いでいます。掲げるのが、2030年までのウォーターポジティブです。これは、使う水よりも多くの水を、環境に還すという考え方になります。なぜ水かというと、データセンターはサーバーを冷やすために水を使うためです。IT企業にとって、水は見過ごせないテーマなのです。

その目標は、地域の事情に応じてきめ細かく設定されています。公表情報によれば、水不足が深刻な水ストレスの高い地域では、消費量の200%を回復します。中程度の地域では100%です。使う場所の状況に合わせて、還す量を変える。CO2の陰に隠れがちな水という資源に、正面から向き合う。この姿勢も、Metaのサステナビリティの特徴だといえます。

04

再エネの調達|100%マッチングと15GW

電力の脱炭素では、着実な実績を積んでいます。

電力は、100%再エネへ

Metaの電力の脱炭素
マッチング電力消費を100%クリーンで再生可能なエネルギーでまかなう
支援Metaが支援する風力・太陽光で15GW超を世界の電力系統に追加

電力の脱炭素では着実な実績。だから次の焦点はScope3や水へ。

出典:Metaの公表情報をもとにgreenote作成

Scope3という難題を抱える一方で、Metaは電力の脱炭素で着実な成果を上げてきました。公表情報によれば、電力消費を100%クリーンで再生可能なエネルギーでマッチングしているのです。使う電気と同じ量の再エネを、購入などで確保しているわけです。

さらに、Metaが支援する風力・太陽光の発電プロジェクトは、15GWを超える規模で、世界の電力系統に新しい再エネを追加しているとされます。自社が使うだけでなく、社会全体の再エネを増やすことにも貢献しているのです。電力については、すでに高い水準にある。だからこそ、次の焦点が、建設などのScope3や水へと移っているわけです。再エネの枠組みは、関連記事のRE100とはもあわせてご覧ください。

05

AIとGAFAM|共通の逆風の中で

MetaのESGも、AIという逆風の中にあります。

巨大IT共通の、AIという逆風

共通の課題=AI・データセンターの拡大で、電力と建設の排出が増える
Metaの焦点自社Scope1・2は達成済み。資本財を含むScope3と水が主戦場
他のGAFAMGoogleは24/7カーボンフリー、Appleは製品とサプライチェーン、Microsoftはカーボンネガティブ

アプローチは違うが、AIによる排出増は共通の論点。優劣ではない。

出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成

Metaが抱えるScope3の課題は、じつは巨大IT全体に共通するものです。その背後にあるのが、AIです。ここは、明るい面だけでなく、厳しい現実も冷静に見ておく必要があります。AIの開発・利用には、データセンターの増設が欠かせません。その建設や運用が、排出を押し上げるのです。Metaの場合、建設に伴う資本財の排出が、Scope3の大部分を占めます。データセンターと電力の関係は、関連記事のデータセンターの電力問題とはもあわせてご覧ください。

この構図は、ほかのGAFAMも同じです。Googleは電力を毎時間カーボンフリーにする24/7 CFE、Appleは製品とサプライチェーン、Microsoftはカーボンネガティブと、力点はそれぞれ違います。しかし、AIによる急拡大と2030年目標をどう両立するかは、各社に共通する大きな論点です。どれが優れているという話ではありません。それぞれのアプローチと、実際の排出実績の両方を見ることが大切です。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。

プラットフォームの社会責任(S)|コンテンツモデレーションという難題

Meta(旧Facebook)のSの中心は、30億人超が使うプラットフォームの安全性とコンテンツモデレーションです。ヘイトスピーチや偽情報への対応状況を「透明性レポート」で定期公表し、削除件数や検出率を開示しているとされます。SNSの社会的影響が問われる時代に、その開示姿勢自体がESG評価の対象です。

社内では他テック企業と同様にダイバーシティ年次報告を続けており、リモートワークの大規模導入でも知られます。ただし青少年への影響などをめぐる内部告発・訴訟は継続しており、S評価は流動的です。

ガバナンス(G)|監督委員会という統治実験と創業者支配

Metaのガバナンスで特筆すべきは、コンテンツ判断を外部の専門家が審査する「監督委員会(Oversight Board)」という独立機関を自ら設立したことです。企業の意思決定を外部機関が覆せる仕組みは、プラットフォーム統治の壮大な実験とされます。

一方で、株式はデュアルクラス構造でマーク・ザッカーバーグ氏が議決権の過半を保持しており、「一人の創業者を株主が交代させられない」構造は機関投資家の批判が続く論点です。Googleと並び、創業者支配のメリット・デメリットを考える教材といえます。

06

まとめ|MetaのESG経営から学べること

Metaの現在地は、脱炭素の「本当の難所」がどこにあるかを、私たちに教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

Metaに学ぶ、3つのこと

本丸はScope3自社を達成した先、サプライチェーンの排出こそ最大の壁
水も見るウォーターポジティブでCO2以外の環境課題にも向き合う
AIと向き合うデータセンター拡大による排出増をどう抑えるかが課題

出典:Metaの公表情報・公開報道をもとにgreenote作成

MetaのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • Facebook等を運営する巨大IT企業。自社運用(Scope1・2)は2020年にネットゼロ達成(2017年比で運用排出94%削減)
  • いまの本丸はScope3=近年の純排出の99%。最大は資本財(データセンター建設)で約6割
  • 2030年ネットゼロウォーターポジティブ(高水ストレス地域で消費の200%を還す)
  • 電力は100%再エネマッチング、支援する再エネは15GW超と着実
  • ⚠️AIによる建設・排出増が課題=GoogleやMicrosoftとも共通の論点

Metaから学べるのは、脱炭素の本当の難所は、自社ではなくサプライチェーン(Scope3)にあるという現実です。多くの企業にとって、自社運用の削減は入り口にすぎません。取引先や建設まで含めた排出をどう減らすかが、最大の壁になります。水にも目を向ける姿勢も、示唆に富みます。もっとも、AIによるデータセンター拡大が、その挑戦を一段と難しくしているといえます。だからこそ、掲げた目標だけでなく、実際の排出実績とその開示まで見ることが欠かせません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. Meta(旧Facebook)のESG経営の特徴は何ですか?

Metaは、Facebook・Instagram・WhatsAppなどを運営する巨大IT企業です。脱炭素では、自社の直接排出と電力(Scope1・2)を2020年にすでにネットゼロにしています。そのため、いまの焦点は、部品や建設などサプライチェーン全体の排出(Scope3)に移っています。あわせて、水を消費以上に還す「ウォーターポジティブ」という独自の目標も掲げているのが特徴です。

Q. Scope1・2とScope3の違いは何ですか?

Scope1は自社が直接出す排出、Scope2は使う電気などに伴う排出、Scope3はそれ以外のサプライチェーン全体の排出を指します。Metaは、自社運用にあたるScope1・2を2020年に達成し、100%再エネでまかなっています。一方、公表情報によれば、近年の純排出のうち99%はScope3で、特にデータセンターなどの建設(資本財)が最大の要因です。詳しくは関連記事もあわせてご覧ください。

Q. MetaのScope3目標はどうなっていますか?

Metaは、2030年にバリューチェーン全体でネットゼロを達成することをめざしています。その途中の目安として、公表情報によれば、2031年末までにScope3排出を2021年の基準から増やさない(超えない)ことを掲げています。ただし、データセンターの建設が続くため、資本財を中心とするScope3をどう抑えるかが、大きな課題として残ります。

Q. ウォーターポジティブとは何ですか?

ウォーターポジティブは、使う水よりも多くの水を環境に還す考え方です。Metaは2030年までにこれを達成する目標を掲げています。データセンターはサーバーを冷やすために水を使うため、水は重要なテーマです。公表情報によれば、水ストレスの高い地域では消費量の200%を、中程度の地域では100%を回復(還元)することをめざしています。

Q. AIはMetaの脱炭素にどう影響していますか?

大きな逆風になっています。AIの開発・利用にはデータセンターの増設が欠かせず、その建設や運用が排出を押し上げます。とりわけ、建設に伴う資本財の排出はScope3の大部分を占めます。Metaは再エネの購入や炭素会計で相殺を図りますが、AIによる急拡大と2030年ネットゼロをどう両立するかは、GoogleやMicrosoftとも共通する大きな論点です。

Q. MetaのESG経営から学べることは何ですか?

大きく2つあります。1つ目は、自社(Scope1・2)を早期に達成した先に、サプライチェーン(Scope3)という本丸へ進む段階の踏み方です。多くの企業にとって、Scope3こそ最大の壁になります。2つ目は、水(ウォーターポジティブ)のように、CO2以外の環境課題にも目を向ける視点です。もっとも、AIによる排出増という課題は残ります。目標と実績の両面を見ることが大切です。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月12日

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