合成燃料(e-fuel)・合成メタンとは|CO2と水素からつくる仕組み・種類・課題をわかりやすく解説

2026.06.28
脱炭素技術

電気自動車(EV)が増えても、飛行機や船、いま走っているガソリン車をすぐ電化するのは簡単ではありません。そこで注目されるのが、CO2と水素から人工的につくる燃料——合成燃料(e-fuel)です。燃やしてもCO2を新たに増やさない「カーボンニュートラル燃料」として、期待が高まっています。

本記事では、合成燃料とは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。CO2と水素からつくる仕組み、e-メタンや合成油といった種類、既存インフラを使える強みと用途、そしてコストの課題までを順に見ていきましょう。原料となる水素についてはグリーン水素とは、CO2の利用全体はカーボンリサイクルとはとあわせて読むと、つながりがつかめます。

この記事の目次

合成燃料(e-fuel)とは

まず、合成燃料(e-fuel)をひとことで整理します。「CO2と水素から、人工的につくる燃料」という発想から入りましょう。

合成燃料をひとことで言うと

合成燃料とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原料に、人工的に合成してつくる燃料です。とくに、再生可能エネルギーの電気からつくった水素を使うものを、英語で「electro(電気)」の頭文字をとってe-fuel(イーフューエル)と呼びます。

できあがる燃料は、ガソリンや軽油、メタンなど、いま使われている燃料とほぼ同じ性質を持ちます。化石燃料を地中から掘り出す代わりに、CO2と水素を材料にして、燃料を「組み立てる」イメージ。だから合成燃料なのです。

なぜ「カーボンニュートラル燃料」なのか

「燃料なら、燃やせばCO2が出るのでは?」と思うかもしれません。そのとおりで、合成燃料も燃やせばCO2を出します。ポイントは、その炭素がどこから来たかです。

合成燃料の原料となるCO2を、工場の排ガスや大気から回収したものでまかなえば、燃焼で出るCO2は「もともと回収したCO2」。回収と排出が打ち消し合い、大気中のCO2を新たに増やさない計算になります。これがカーボンニュートラル燃料と呼ばれる理由です。ただし、これは原料の水素が再エネ由来で、CO2も回収由来であってこそ。原料のつくり方しだいで、脱炭素の効果は大きく変わります

仕組み――CO2と水素からつくる

合成燃料は、二つの原料を組み合わせてつくります。その原料と、合成のプロセスを見ていきましょう。

CO2と水素から、燃料をつくる

合成燃料の仕組みと炭素の循環

グリーン水素(H2)再エネの電気で水を分解
回収したCO2工場の排ガスや大気から
合成FT合成・メタネーション
合成燃料
(e-fuel)
燃やして使う → CO2

↻ 燃焼で出たCO2は、ふたたび「回収したCO2」として原料に戻る(炭素が循環する)

回収したCO2と再エネ水素を使えば、全体で大気のCO2を新たに増やさない

出典:資源エネルギー庁・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

原料は「回収CO2」と「グリーン水素」

合成燃料の原料は、水素とCO2の二つです。このうち水素は、再生可能エネルギーの電気で水を分解する水電解とはでつくったグリーン水素を使います。製造時にCO2を出さない水素が、脱炭素のカギを握ります。

もう一方のCO2は、回収してきたものを使います。工場や発電所の排ガスから集めたり、DAC(直接空気回収)とはで大気から直接集めたり——。捨てられる、あるいは大気にあるCO2を「炭素の材料」として再利用する。つまり合成燃料は、水素とCO2という二つの脱炭素技術が出会う場所でもあるのです。

合成のプロセス(FT合成・メタネーション)

集めた水素とCO2を、化学反応で結びつけると、燃料ができます。代表的な作り方が、いくつかあります。一つは、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成。一酸化炭素と水素から、ガソリンや軽油のような液体の炭化水素をつくる、歴史ある技術です。

もう一つが、CO2と水素からメタンをつくるメタネーション。さらに、メタノールをつくるメタノール合成もあります。どのプロセスを使うかで、できあがる燃料の種類が変わる。次に、その種類を見ていきましょう。

種類――e-メタン・合成油・e-メタノール

合成燃料は、つくり方しだいで、気体にも液体にもなります。代表的な種類を見ていきます。

合成燃料の主な種類

気体

e-メタン(合成メタン)

都市ガスの主成分と同じ。既存のガス導管やガス機器をそのまま活用できる。

液体

合成油

e-ガソリン・e-ディーゼル・e-ケロシン。既存のエンジンで使え、自動車から航空機まで。

液体

e-メタノール

常温で扱いやすく、船舶の燃料などとして実用化が進む。

気体のe-メタン、液体の合成油・e-メタノール。用途に合わせて使い分ける。

出典:資源エネルギー庁・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

e-メタン(合成メタン)

気体の合成燃料の代表が、e-メタン(合成メタン)です。CO2と水素からメタネーションでつくるメタンで、都市ガスの主成分と同じ。そのため、いまある都市ガスの導管やガス機器を、そのまま使えるのが大きな強みです。

ガスインフラを大きく作り替えずに、ガスの脱炭素を進められる——。この現実性から、日本のガス会社が実証や導入に力を入れています。「メタネーション」は、都市ガスのカーボンニュートラル化を担う中心的な技術として期待されています。

合成油とe-メタノール

液体の合成燃料も重要です。FT合成でつくる合成油は、e-ガソリン・e-ディーゼル・e-ケロシン(灯油・ジェット燃料相当)などになり、自動車から航空機まで幅広く使えます。とくに航空向けは、持続可能な航空燃料(SAF)の一種としても注目される領域です。

さらに、e-メタノールも有力です。常温で液体で扱いやすく、船舶の燃料として実用化が進みつつあります。脱炭素が難しい外航船の分野で、アンモニアなどと並ぶ選択肢の一つ。このように、合成燃料は気体・液体さまざまな顔を持ち、用途に応じて使い分けられます。

強みと用途――既存インフラをそのまま使える

合成燃料が注目される最大の理由は、いまある設備をそのまま活かせることです。その強みと用途を見ていきます。

いまある設備を、そのまま使える

合成燃料の強み=ドロップイン

合成燃料(e-fuel)
↓ 改造せずに置き換え
既存のエンジン改造不要でそのまま
ガソリンスタンド・タンク給油インフラを活用
都市ガスの導管e-メタンをそのまま供給
タンカー・パイプライン既存の輸送網を活用

設備を入れ替えなくてよい。電化が難しい航空・船舶などでこそ生きる

出典:資源エネルギー庁・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

ドロップイン――エンジンも給油所もそのまま

合成燃料の最大の強みは、ドロップイン性です。ドロップインとは、いまある設備に、そのまま入れ替えて使えるという意味。合成燃料はガソリンや軽油と性質が近いため、車のエンジンも、ガソリンスタンドも、輸送のタンカーも、改造せずに使えます

これは、電気自動車のように車両や充電設備をまるごと入れ替える必要がある電化とは、大きく異なる点です。インフラの作り替えコストを抑えられる——。すでに世界中に張りめぐらされた燃料インフラを活かせることが、合成燃料の現実的な魅力なのです。

電化が難しい分野(航空・船舶など)

とはいえ、すべてを合成燃料にするわけではありません。乗用車のように電化が進む分野は、電気で動かすほうが効率的です。合成燃料が真価を発揮するのは、電化が難しい分野

その代表が、航空機と船舶です。飛行機や大型船は、重いバッテリーでは長距離を動かしにくく、電化のハードルが高い。こうしたhard-to-abate(削減が難しい)分野でこそ、エネルギー密度が高く既存エンジンで使える合成燃料が活きます。電化できるものは電化し、難しい分野を合成燃料で補う——。この使い分けが基本の考え方です。

課題と展望

大きな期待の一方で、合成燃料の本格普及には、解くべき課題も残る。

コストとエネルギー損失

最大の課題は、やはりコストです。現在の製造コストは、おおむね1リットルあたり数百円規模と試算され、市販のガソリンより高いのが現状。しかも、そのコストの大きな割合を、原料である水素の調達費が占めます。安いグリーン水素を大量に確保できるかが、価格を左右します。

もう一つが、エネルギーの変換ロスです。電気から水素をつくり、さらにCO2と合成して燃料にする——。各段階でエネルギーが失われるため、再エネの電気をそのまま使う場合に比べると効率は下がります。だからこそ「電化できるものは電化」が原則で、合成燃料は電化が難しい分野に絞って使うのが合理的だといえます。

大量の水素・CO2と政策

普及には、大量のグリーン水素と回収CO2を、安定して確保することも欠かせません。原料の供給網(サプライチェーン)づくりが、これからの大きな課題です。

こうしたなか、日本も動いています。当初は2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略で2040年までの商用化を掲げていましたが、2023年に経済産業省が、商用化目標を2030年代前半に前倒しすると発表しました。あわせて、合成燃料の導入促進に向けた官民協議会やグリーンイノベーション基金を通じて、技術開発や実証が後押しされています。なお、コストや効率、実用化の時期は、技術や前提によって変わりうる点には留意が必要です。

合成燃料(e-fuel)の課題と対応

課題

コストが高い。1Lあたり数百円規模と試算され、原料の水素調達費が大半を占める。

対応・ポイント

安いグリーン水素を大量に確保し、量産と技術改良でコストを下げる。

課題

エネルギー変換ロス。電気→水素→合成の各段階で効率が落ちる。

対応・ポイント

電化できるものは電化。合成燃料は電化が難しい分野に絞って使う。

課題

大量の水素・CO2の安定確保と供給網づくり。

対応・ポイント

官民協議会やGI基金で開発・実証。日本は商用化目標を2030年代前半に前倒し。

コスト・効率・実用化の時期は、技術や前提によって変わりうる点に留意が必要です。

合成燃料をどう捉えるか

合成燃料(e-fuel)は、回収したCO2とグリーン水素から燃料をつくり、いまあるエンジンやインフラをそのまま使える、現実的な脱炭素の選択肢です。e-メタンや合成油など種類は幅広く、とくに電化が難しい航空・船舶などのhard-to-abate分野で力を発揮します。一方で、コストの高さとエネルギーの変換ロスという課題は、まだ小さくありません。

大切なのは、合成燃料を「ガソリンの完全な代替」と過大評価することでも、「効率が悪い」と切り捨てることでもなく、「電化で減らせないところを埋める、補完的な脱炭素技術」として捉えることでしょう。電化を主役にしつつ、難しい分野を合成燃料や水素・アンモニアで補う。その役割分担のなかに、合成燃料の居場所があります。発電や蓄電を含む次世代の脱炭素技術の全体像は次世代エネルギー技術まるわかりガイドもご覧ください。

CO2を、やっかいものから「燃料の材料」へ。合成燃料は、炭素とどう付き合うかを問い直す、興味深い技術なのです。なお本記事は、特定の技術・事業・金融商品への投資を推奨するものではなく、技術の現在地と展望を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. 合成燃料(e-fuel)と、バイオ燃料や水素は何が違うのですか?

A. 合成燃料は、CO2と水素を原料に人工的に合成する燃料です。植物などを原料とするバイオ燃料とは原料が異なり、水素そのものを燃料として使う場合と違って、ガソリンや軽油・メタンなど『既存の燃料と同じかたち』につくれるのが特徴です。そのため、いまあるエンジンやインフラをそのまま使えます。水素のつくり方はグリーン水素や水電解の解説もあわせてご覧ください。

Q. 合成燃料は本当に「カーボンニュートラル」なのですか?

A. 条件しだいです。燃やせばCO2は出ますが、その原料として回収したCO2を使い、水素を再生可能エネルギー由来のグリーン水素でまかなえば、回収と排出が打ち消し合い、全体として新たなCO2を増やさない計算になります。逆に、化石燃料由来の水素やCO2を使えば、その効果は薄れます。原料のつくり方しだいで、脱炭素の効果が変わる点が重要です。

Q. 合成燃料は、これから普及するのですか?

A. 電化が難しい分野を中心に、期待が高まっています。一方で、製造コストの高さやエネルギーの変換ロスといった課題があり、すぐに安く大量に出回るわけではありません。日本では商用化目標が2030年代前半へ前倒しされ、官民で開発が進んでいますが、本記事は特定の価格や時期、企業を断定するものではなく、技術の現在地を中立に整理したものです。

最終更新日:2026年6月28日

この記事の著者

greenote編集部

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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