半固体電池とは|全固体電池との違いと「橋渡し」技術としての位置づけをわかりやすく解説

2026.06.27
脱炭素技術

次世代電池というと、いま最も話題なのが全固体電池とはです。けれども、その本格普及を待つあいだに、現実的な「つなぎ役」として実用化が進む電池。それが、液体と固体の中間をいく半固体電池です。

本記事では、半固体電池とは何かを、できるだけかみ砕いて、そして全固体電池との違いを軸に解説します。電解質をゲル状にする仕組み、液体・半固体・全固体の3段階の位置づけ、メリットと注意点、そして実用化の現在地までを順に見ていきましょう。あわせて、ためる技術の現在地である系統用蓄電池(BESS)市場の今もご覧ください。

この記事の目次

半固体電池とは

まず、半固体電池をひとことで整理します。「液体と固体の、ちょうど中間にある電池」という発想から入りましょう。

半固体電池をひとことで言うと

半固体電池(準固体電池とも呼ばれます)とは、電解質を、液体でも完全な固体でもない「ゲル状」にして、内部の液体を減らしたリチウム電池です。電池の中でイオンを運ぶ電解質を、ジェル状に半分固めたイメージになります。

いまのリチウムイオン電池は、電解質にさらさらの液体を使っています。全固体電池は、これをカチカチの固体に置き換えます。半固体電池は、その中間のとろりとしたゲルを使う、いわば「いいとこ取り」をねらった電池なのです。

「液体」と「固体」の中間に立つ

ポイントは、半固体電池が両者のあいだに立つ橋渡し役だという点です。液体電池の弱点だった発火のリスクを、液体を減らすことで抑えつつ、全固体電池ほどの製造の難しさは避けられます。

完全な固体をめざすと、技術的な壁が一気に高くなります。そこで「まず液体を減らすところから始めよう」というのが、半固体電池の現実的な発想です。理想を一足飛びに追うのではなく、今できる改善を積み重ねる。そんな堅実なアプローチが、半固体電池の持ち味だといえます。

仕組み――電解質をゲル状にする

半固体電池の肝は、電解質を液体のままでも完全な固体でもなく、その中間のゲル状にする点にあります。

電解質の状態で見る、3つの電池

半固体は、液体と固体のちょうど中間

液体が減り、固体に近づく →

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リチウムイオン電池

液体(さらさら)

いま広く普及。安くて実績があるが、発火に注意。

🟢

半固体電池

ゲル(とろり)

液体を減らして安全性を向上。作りやすく、橋渡しの位置。

🧊

全固体電池

固体(カチカチ)

安全性・性能の上限が高い本命。量産には壁。

半固体は、液体と固体のちょうど中間。橋渡しの位置にあります。

出典:NEDO等の公開情報・各社発表をもとにgreenote作成

電解液を減らしてゲル化する

具体的には、これまでたっぷり使っていた液体の電解質を、ゲル化剤などで半固体(ゲル状)に変え、液体の量を大きく減らします。電解質が流れ出しにくくなることで、液漏れや発火といった、液体電池ならではのリスクを抑えられます。

それでいて、ゲルの中はイオンがそれなりに動きやすいため、性能を大きく損なわずに済みます。完全な固体にすると、イオンの通り道の確保が一気に難しくなりますが、半固体なら、液体の動きやすさをある程度残せます。安全性と性能のバランスを、現実的なところで取る工夫だといえるでしょう。

既存の製造ラインを活かせる

半固体電池には、見逃せない強みも。それは、いまのリチウムイオン電池の製造設備を、一部活かして作れることです。

全固体電池は、固体どうしを精密に貼り合わせるなど、まったく新しい製造技術を必要とします。これに対し半固体電池は、従来の製法に近い工程で作れるため、新たな巨額の設備投資を抑えつつ、比較的早く量産に移れます。理想の性能を追うより、まず実用化のハードルを下げる——。この「作りやすさ」こそが、半固体電池が早く世に出られる最大の理由です。

全固体電池・リチウムイオン電池との違い

半固体電池の位置づけは、液体のリチウムイオン電池と、固体の全固体電池と並べて見ると、すっきり理解できます。

3種類の電池を比べる

半固体は、作りやすさと安全性のバランスを取った中間解

観点
リチウムイオン
半固体
全固体
電解質
液体
ゲル(半固体)
固体
安全性
注意が必要
向上
高い
作りやすさ・量産
成熟
既存ラインを活かせる
新技術が必要で難しい
性能の上限
標準
中程度
高い
実用化
普及済み
始まっている
これから

半固体は作りやすさと早さ、全固体は性能の上限が強み。役割が異なります。

出典:NEDO等の公開情報・各社発表をもとにgreenote作成

液体・半固体・全固体の3段階

3つの電池の違いは、電解質の「固さ」で整理できます。液体のリチウムイオン電池、ゲルの半固体電池、固体の全固体電池。右へ進むほど液体が減り、安全性と性能の上限は高まる一方、製造は難しくなる。

リチウムイオン電池は、すでに広く普及し、安くて実績も十分。全固体電池は、安全性も性能も最も高めうる本命ですが、量産には大きな壁が残るのが現実です。半固体電池は、そのちょうど真ん中。液体電池より安全で、全固体より作りやすい、バランス型のポジションにいます。

なぜ「橋渡し」と呼ばれるのか

半固体電池は、しばしば「橋渡し(ブリッジ)技術」と呼ばれます。理由は、全固体電池が本格普及するまでの「つなぎ」の役割を担うからです。

全固体電池の量産には、まだ時間がかかると見られています。その間、何もしないのではなく、今できる範囲で安全性とエネルギー密度を高めた電池を世に出す。それが半固体電池の役どころです。液体から固体へ一足飛びに進むのではなく、半固体という中間地点を踏むことで、技術と市場を着実に育てていく。そんな現実的な道筋を描く存在なのです。

メリットと、ここに注意

半固体電池には、全固体を待たずに使える強みがある一方、中間ゆえの限界も。両面を見ていきます。

いいとこ取り、ただし中間ゆえの限界も

半固体電池のメリットと注意点

メリット

液体を減らし安全性が向上

既存の製造ラインを活かせる

全固体より早く量産・実用化できる

エネルギー密度も従来より高めやすい

注意点

全固体ほど安全性・性能の上限は高くない

一部に液体が残るため発火リスクはゼロにならない

あくまで本命までの「橋渡し」という位置づけ

作りやすさと早さが強み。性能の天井は全固体に譲ります。

出典:NEDO等の公開情報・各社発表をもとにgreenote作成

安全性と「作りやすさ」

半固体電池の二大メリットが、安全性と作りやすさです。液体を減らすことで、発火や液漏れのリスクを従来のリチウムイオン電池より抑えられます。同時に、エネルギー密度も従来より高めやすく、EVの航続距離の改善などにつながります。

そして何より、既存の製造ラインを活かして早く量産できる点が際立ちます。全固体電池が実用化の時期で苦戦するなか、半固体は「いま手に入る改善」として、すでに市場に出始めています。完璧を待たずに、着実に前進できる。ここにこそ、半固体電池の実利があるのです。

性能の上限と「半分は液体」

一方で、注意点も冷静に押さえておく必要があります。半固体電池は、あくまで中間的な存在であり、全固体電池ほど安全性やエネルギー密度の上限は高くありません。性能の「天井」では、本命の全固体に一歩譲る。

また、名前のとおり一部に液体(ゲル)が残るため、発火のリスクが完全にゼロになるわけではない点も見落とせません。液体電池より安全とはいえ、「燃えない電池」になるわけではないのです。半固体電池は、万能の解ではなく、全固体までの過渡期を支える現実解として捉えるのが妥当でしょう。

実用化の現在地

半固体電池は、全固体電池に先んじて、すでに実用化が始まっています。世界と日本の現在地を見ていきます。

全固体より早い商用化

最大の特徴が、全固体電池より早く実用化が進んでいることです。製造のハードルが低いため、研究段階にとどまる場面が多い全固体に対し、半固体はすでにEVなどへの搭載が始まっています。

「次世代電池=全固体」というイメージが強いなかで、実は先に社会へ出てきているのは半固体のほうだ、という点は意外に知られていません。理想の全固体を待つあいだ、半固体が現実の脱炭素やEV普及を、足元で支え始めているのです。技術の世界では、必ずしも「最高の技術」が最初に普及するとは限らない、という好例だといえます。

中国勢の先行と日本の動き

この分野では、中国メーカーの先行が目立ちます。たとえばWeLion(衛藍新能源)が半固体電池をEV向けに供給し、長い航続距離をうたうモデルに搭載された例が報じられました。電池大手のCATLが発表した高エネルギー密度の電池も、半固体的な技術と説明される場合があります。

日本でも、企業や研究機関が半固体・全固体の双方で開発を進めています。日本勢が全固体という「本命」で先行をめざす一方、中国勢は半固体という「現実解」で素早く市場を押さえにきている——。この戦略の違いも、半固体電池をめぐる見どころの一つです。なお、各社の製品仕様や商用化の状況は、今後変わりうる点には留意が必要です。

半固体電池をどう捉えるか

半固体電池は、液体のリチウムイオン電池と固体の全固体電池の中間に立ち、「作りやすさ」と「安全性」のバランスをとった現実解です。理想の全固体を待つのではなく、今できる改善を積み重ねて社会に届ける。その堅実さが、脱炭素やEV普及を足元から後押しします。

大切なのは、半固体電池を「全固体の劣化版」と見下すのでも、「全固体は不要」と早合点するのでもなく、「本命へ向かう過渡期を支える、重要な橋渡し」として捉えることでしょう。半固体で市場と技術を育てながら、本命の全固体へバトンをつなぐ。蓄電池の進化は、こうした段階を踏んで進んでいきます。ためる技術の全体像は長期エネルギー貯蔵(LDES)とは電力システムまるわかりガイド次世代エネルギー技術ガイドもあわせてご覧ください。

最高の技術が、いつも一番乗りするとは限りません。半固体電池は、「ちょうどいい今」を選ぶことの大切さを、私たちに教えてくれる存在なのです。なお本記事は、特定の技術・企業・金融商品への投資を推奨するものではなく、技術の現在地と展望を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. 半固体電池と全固体電池は、何が違うのですか?

A. 電解質の状態が違います。全固体電池は、電解質を完全に固体にします。これに対し半固体電池は、電解質をゲル状(半固体)にして液体を減らすもので、一部に液体が残っています。つまり、従来の液体のリチウムイオン電池と、完全固体の全固体電池の、ちょうど中間に位置するのが半固体電池です。完全固体ではないぶん作りやすく、全固体より早く実用化しやすいのが特徴です。

Q. 半固体電池と全固体電池は、どちらが優れているのですか?

A. 一長一短で、役割が異なります。半固体電池は、既存の製造設備を活かしやすく、全固体を待たずに実用化できる『作りやすさ』と『早さ』が強みです。一方の全固体電池は、安全性やエネルギー密度を高められる『性能の上限』で勝りますが、量産には技術的な難しさが残ります。半固体は本格普及までの『橋渡し』、全固体は『本命』、という関係で捉えると分かりやすいでしょう。

Q. 半固体電池は、もう市販されているのですか?

A. 全固体電池に先立って、すでに実用化が進んでいます。とくに中国のメーカーが先行し、長い航続距離をうたう電気自動車に半固体電池が搭載された例が報じられています。ただし、製品の仕様や呼び方はメーカーによって幅があり、状況は変わりうるものです。本記事は特定の製品や企業の優劣を断定するものではなく、技術の位置づけを整理したものです。

最終更新日:2026年6月27日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

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