水電解とは|グリーン水素をつくる電解槽の仕組みと4つの方式をわかりやすく解説

2026.06.27
脱炭素技術

脱炭素の切り札として期待されるグリーン水素。その水素を、再エネの電気と水からつくり出す装置の心臓部が、水電解です。理科の実験でおなじみの「水の電気分解」を、産業規模で行う技術——。今回は、その仕組みと方式を掘り下げます。

本記事では、水電解とは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。電気で水を分ける仕組み、アルカリ形・PEM形などの4つの方式、再エネとの相性、そして課題までを順に見ていきましょう。つくった水素の全体像であるグリーン水素とはや、運び・使う側の水素サプライチェーンの今とあわせて読むと、水素の流れがつかめます。

この記事の目次

水電解とは

まず、水電解をひとことで整理します。「電気の力で、水を水素と酸素に分ける」という発想から入りましょう。

水電解をひとことで言うと

水電解とは、電気を使って、水(H2O)を水素(H2)と酸素(O2)に分解する技術です。水に電気を流すと、水素と酸素に分かれる。この身近な現象を、大規模かつ効率よく行うのが水電解です。

ポイントは、取り出した水素を、エネルギーとして使えることです。水素は燃やしても水になるだけで、CO2を出しません。しかも、水と電気さえあればつくれます。脱炭素の燃料として、水素に大きな期待が集まる理由が、ここにあります。

グリーン水素をつくる心臓部

ただし、水素なら何でも「green」というわけではありません。カギは、水電解に使う電気がどこから来るかです。もし再生可能エネルギーの電気で水を分解すれば、製造時にCO2を出さないグリーン水素になる。

逆に、化石燃料からつくる水素は「グレー水素」などと呼ばれ、色で区別されます。詳しくはグリーン水素とはをご覧ください。つまり水電解は、再エネの電気を、運べて・ためられる「水素」に変える変換装置。グリーン水素づくりの、まさに心臓部なのです。

仕組み――電気で水を水素と酸素に分ける

水電解の原理は、理科の実験でおなじみの「電気分解」です。それを大規模に、効率よく行うのが電解槽です。

電気で、水を水素と酸素に分ける

水電解の仕組み

水(H2O)
電気(再エネ)
電解槽電気で水を分解する
水素(H2)
酸素(O2)

再エネの電気で行えば、CO2を出さないグリーン水素になります。

出典:資源エネルギー庁・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

電気分解の基本

中学校の理科を思い出してみましょう。水に電気を流すと、片方の電極から水素が、もう片方から酸素が発生します。これが電気分解です。水電解は、この原理そのものを使っています。

違うのは、その「規模」と「効率」です。実験ではわずかな気体しか出ませんが、産業用の水電解では、大量の水素を連続して取り出します。そのために、電気を効率よく水素に変える工夫が凝らされた装置が使われます。シンプルな原理を、いかに大規模・高効率で回すかが、技術の腕の見せどころ。

電解槽(electrolyzer)の役割

その装置が、電解槽(electrolyzer/エレクトロライザー)です。電解槽は、水素を取り出す側と酸素を取り出す側を、電解質や膜で仕切った構造を持ちます。ここに電気を流すことで、水素と酸素を分けて集めます。

電解槽は、水電解システムの心臓部です。どんな材料で、どんな仕組みの電解槽を使うかによって、効率・コスト・再エネへの追従性が大きく変わる。だからこそ、各社が電解槽の方式でしのぎを削っているのです。次に、その代表的な方式を見ていきましょう。

主な4つの方式

水電解には、使う材料や温度の違いで、いくつかの方式。代表的な4つを見ていきましょう。

水電解の主な4方式

材料や温度の違いで個性が分かれる

アルカリ形(ALK)

歴史が長く比較的安価で実績が豊富。大規模製造で古くから使われてきた。

PEM形(固体高分子)

応答が速く再エネの変動に追従しやすい。コンパクトだが白金などの貴金属を使う。

AEM形(アニオン交換膜)

貴金属を減らせると期待される新しい方式。まだ開発段階。

SOEC(固体酸化物)

高い温度で動かすため効率が高い。廃熱利用と相性がよいが、耐久性が課題。

実績のアルカリ、変動に強いPEM、高効率のSOEC。用途で使い分けます。

出典:資源エネルギー庁・NEDO・IEAの公開情報をもとにgreenote作成

アルカリ形とPEM形

もっとも歴史が長く、広く使われてきたのがアルカリ形(ALK)です。アルカリ性の水溶液を使う方式で、比較的安価で、長年の実績があるのが強み。大規模な水素製造で、古くから使われてきました。

これに対し、近年注目を集めるのがPEM形(固体高分子形)です。特殊な膜を使うこの方式は、応答が速く、再エネの出力変動に追従しやすいのが特徴。装置をコンパクトにできる利点もあります。一方で、白金やイリジウムといった貴金属を使うため、コストや資源の制約が課題です。実績のアルカリ、変動に強いPEM——。この二つが、現在の主役格だといえます。

AEM形とSOEC(高温で動く)

さらに、新しい方式の開発も進んでいます。一つがAEM形(アニオン交換膜形)です。PEM形に似た構造ながら、高価な貴金属を減らせると期待される方式で、まだ開発段階。コストを下げる切り札として、研究が活発です。

もう一つが、SOEC(固体酸化物形)です。これは、高い温度で動かすのが特徴で、その熱を活かして効率を高められる点が魅力。工場の廃熱などと組み合わせれば、さらに効率を上げられます。ただし、高温で使うため耐久性の確保が課題です。用途や条件に応じて、これらの方式が使い分けられていきます。

再エネとの相性――変動に追従する

水電解が脱炭素のカギを握るのは、再生可能エネルギーと組み合わせたときです。その相性の良さを見ていきます。

余る再エネを、水素に変えてためる

Power-to-Gasという受け皿

☀️

太陽光・風力

晴れた昼などに電気が余る

⚙️

水電解(電解槽)

余る電気で水素をつくる

🛢️

水素としてためる・運ぶ

長くため、遠くへ運べる

電気のままでは貯めにくくても、水素なら長くためて運べる。出力制御で捨てられる電気も活かせます。

出典:資源エネルギー庁・NEDOの公開情報をもとにgreenote作成

余る再エネを水素に変える

太陽光や風力が増えると、晴れて風の強い日には電気が余ることがあります。送電網が混めば、その電気は出力制御(カーテイルメント)とはで捨てられてしまいます。

ここで水電解が活きてきます。余りそうな電気で水を分解し、水素に変えてためておくのです。電気はそのままでは大量にためにくい一方、水素なら長くため、運ぶこともできます。これは、電気を別のかたちに変えるセクターカップリングとはの「Power-to-Gas(電気を気体燃料に)」そのもの。捨てられるはずの再エネを、価値ある水素に変える受け皿となる。

応答性と出力制御

ただし、再エネの電気は、お天気しだいで強くなったり弱くなったりします。この変動に、電解槽がついていけるかが重要です。ここで効くのが、方式ごとの応答性の違い。

応答が速いPEM形などは、刻々と変わる再エネの出力に素早く追従できます。電気が多いときは多く、少ないときは少なく水素をつくる——。こうした柔軟な運転ができれば、再エネの変動を吸収しながら、むだなく水素を生み出せます。再エネ主力化の時代に、水電解の「追従性」が、ますます重要になっていくのです。

課題と展望

大きな期待の一方で、水電解の本格普及には、解くべき課題も残る。

コストと耐久性・貴金属

最大の課題が、コストです。じつは、つくる水素の価格の多くは、電力コストが占めます。そのため、安く大量の再エネ電力を確保できるかが、水素を安くする最大の前提になります。加えて、電解槽そのものの装置コストも、まだ高いのが現状です。

技術面では、耐久性も課題です。長期間、安定して動き続けられるか。さらにPEM形では、白金などの貴金属をどう減らすかも重要なテーマ。これらを一つずつ解決し、水素を安く・大量に・長くつくれるようにすることが、普及への道だといえます。

量産と政策

こうした課題に対し、世界が動き出しています。各国は、ギガワット級の大規模な電解槽の導入を目標に掲げ、量産によるコスト低減をめざしています。装置がたくさんつくられれば、価格は下がっていくと期待されます。

日本でも、グリーンイノベーション基金や水素社会推進法を通じて、水電解の技術開発や導入が後押しされています。再エネを安くする努力と、電解槽の量産。この両輪がかみ合ってはじめて、グリーン水素は身近なものになるでしょう。なお、コストや効率は技術や前提で変わりうる点には留意が必要です。

水電解の課題と対応

課題

コスト。水素価格の多くは電力コストが占め、電解槽の装置コストもまだ高い。

対応・ポイント

安く大量の再エネ電力の確保と、ギガワット級の量産で装置コストを下げる。

課題

耐久性・貴金属。長期安定運転や、PEM形での白金など貴金属の削減。

対応・ポイント

技術開発で一つずつ解決。日本はGI基金・水素社会推進法で後押し。

コストや効率は、技術や前提によって変わりうる点に留意が必要です。

水電解をどう捉えるか

水電解は、再エネの電気を「水素」という運べる・ためられるかたちに変える、グリーン水素づくりの心臓部です。アルカリ形やPEM形など方式ごとに個性があり、とくに変動に追従できる特性は、余る再エネを活かす受け皿として、再エネ主力化を支えます。一方で、コストや耐久性、貴金属といった課題は、まだ小さくありません。

大切なのは、水電解を単なる「水素をつくる装置」ではなく、「再エネと水素をつなぎ、エネルギーの形を変える要の技術」として捉えることでしょう。安い再エネ、効率のよい電解槽、そして水素を運び・使う仕組み。これらがそろってはじめて、水素社会は現実になります。発電や蓄電をはじめ、次世代の脱炭素技術の全体像は次世代エネルギー技術まるわかりガイドもご覧ください。

水と電気から、未来の燃料をつくる。水電解は、再エネの可能性を大きく広げる、地味だが決定的に重要な技術なのです。なお本記事は、特定の技術・事業・金融商品への投資を推奨するものではなく、技術の現在地と展望を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. 水電解とグリーン水素は、どういう関係ですか?

A. 水電解は、水素をつくる方法の一つです。電気で水を分解して水素を取り出しますが、そのとき使う電気が再生可能エネルギー由来であれば、製造時にCO2を出さない『グリーン水素』になります。同じ水素でも、化石燃料からつくれば『グレー水素』などと呼ばれ、つくり方で色分けされます。グリーン水素の全体像はグリーン水素の解説もあわせてご覧ください。

Q. 水電解の方式は、どれが優れているのですか?

A. 用途しだいで、一概には言えません。アルカリ形は歴史が長く比較的安価で実績が豊富、PEM形は再エネの変動に素早く追従でき小型化しやすい、SOEC(固体酸化物形)は高温で動かすぶん効率が高い、といった具合に得意分野が異なります。AEM形は貴金属を減らせる新しい方式として期待されています。再エネと組み合わせる用途では、変動に追従しやすいPEM形などが注目されています。

Q. 水素は、これから安くなるのですか?

A. 水素のコストの多くは、電気代が占めます。そのため、安く大量の再生可能エネルギー電力を確保できるかが、価格を下げる最大のカギです。加えて、電解槽そのものの量産やコスト低減、耐久性の向上も重要です。各国が大規模な導入目標を掲げており、量産が進めばコストは下がると期待されますが、本記事は特定の価格や時期を断定するものではありません。

最終更新日:2026年6月27日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

メールマガジン

制度改正と最新動向を、月に数回

水素・次世代エネルギー技術の動向と政策支援の変化を整理してお届けします。

無料で登録する

手を動かす段階なら、無料のExcelテンプレートもあります → 実務テンプレート

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

関連記事

目次