ESG Company Analysis
「水と生きる」。この言葉を掲げるサントリーにとって、水は単なる原料ではありません。天然水もビールも清涼飲料も、すべては水から生まれます。水は、いわば事業の生命線です。だからこそサントリーは、くみ上げる以上の水を森で育て、次の世代へと水の大切さを伝えてきました。本記事では、この「水と生きる」を原点に、天然水の森・水育・環境ビジョン2050・容器包装という観点から、サントリーのESG経営を公式情報をもとに分析します。
この記事の目次
01
サントリーのESG経営とは|「水と生きる」が原点
まず、サントリーのESG経営の全体像と、その原点にある考え方を整理しましょう。
すべては、水から
水を原料とする事業の生命線として、ESGの取り組みを水を軸に展開する。
出典:サントリーグループの公表情報をもとにgreenote作成
水が事業の生命線
サントリーのESG経営を理解するカギは、たったひとつの言葉に集約される。それが「水と生きる」です。サントリーは、天然水やビール、ウイスキー、清涼飲料など、その多くを水から生み出す企業だ。水がなければ、事業そのものが成り立ちません。水は、まさに事業の生命線なのです。
この事業特性が、サントリーのESGのあり方を決めている。多くの企業にとって、水は数あるテーマのひとつかもしれません。しかしサントリーにとって、水は中心であり、原点です。だからこそ、その取り組みは、他社にはない深さと一貫性を持っている。水リスクの考え方は、関連記事の水リスクとはもあわせてご覧ください。
2005年の企業メッセージ
「水と生きる」が企業メッセージとして掲げられたのは、2005年のことでした。ESGやサステナビリティという言葉が、まだ今ほど広まっていなかった時代です。その頃から、サントリーは水への感謝と責任を、企業の姿勢として明確に打ち出していました。
このメッセージは、単なる広告のコピーではありません。水の恵みに感謝し、それを守り育てていく。その決意を社会に約束したものです。以来20年にわたり、この言葉はサントリーの環境活動の背骨であり続けている。事業の原点を、そのまま企業の存在意義へと昇華させた点に、この会社の一貫性がある。
02
天然水の森|くみ上げる以上の水を育む
サントリーのESGを象徴するのが、この「天然水の森」の取り組みです。
くみ上げる以上の水を、育む
2025年時点で全国16都府県26か所・12,000ヘクタール超。森を手入れし雨水が地下にしみ込みやすくして水源を守り、生物多様性の再生にもつなげる。
出典:サントリーグループの公表情報をもとにgreenote作成
「水と生きる」を、最も具体的なかたちにしているのが、「天然水の森」です。これは、サントリーが水を育むために整備・保全している森林を指します。その規模は、決して小さくありません。2025年時点で、全国16都府県の26か所、あわせて12,000ヘクタールを超える面積に広がっている。
この取り組みの核心は、その目標にあります。サントリーは、工場でくみ上げる地下水の量以上の水を、森で育む(涵養する)ことをめざしているのです。それも、くみ上げる量の2倍以上という水準を掲げている。森を適切に手入れすると、土がやわらかくなり、雨水が地下にしみ込みやすくなります。こうして水源が守られ、あわせて生物多様性の再生にもつながる。使う分を、自然の力で取り戻す。この発想が、天然水の森の真髄です。自然を活かした取り組みは、関連記事のネイチャーポジティブとはもあわせてご覧ください。
03
水のサステナビリティと「水育」
森だけでなく、工場での節水や次世代への教育にも、水を軸とした取り組みが広がっています。
使い方も、伝え方も
工場の節水
製造工程での水使用量の削減を、世界の拠点で進める。
水育(みずいく)
子どもたちが水の大切さや森のはたらきを学ぶ次世代環境教育。森での体験や出張授業を国内外で展開。
水を守る文化そのものを、次の世代へ育てる。
出典:サントリーグループの公表情報をもとにgreenote作成
水への取り組みは、森の外にも広がっています。ひとつが、工場での節水です。飲料をつくる過程では、洗浄などに多くの水を使います。サントリーは、この製造工程での水使用量を減らす取り組みを、世界の拠点で進めている。水を育むだけでなく、賢く使う。その両面から、水と向き合っているのです。
そして、もうひとつが「水育(みずいく)」です。これは、子どもたちを対象とした、次世代向けの環境教育プログラムだ。水の大切さや、水を育む森のはたらきを、体験や授業を通じて学んでもらう。森での体験学習や、学校への出張授業などのかたちで、国内外に広がっている。水の恵みを事業の糧とする企業として、その価値を次の世代へ伝えていく。水を守る「文化」そのものを育てようとする、息の長い取り組みです。
04
脱炭素|環境ビジョン2050
水と並ぶもう一つの柱が、脱炭素です。環境ビジョン2050の目標を見ていきます。
2050年、バリューチェーン実質ゼロへ
2030年(中間目標)
自社の排出(Scope1・2)を50%削減、バリューチェーン(Scope3)を30%削減
2050年
バリューチェーン全体(Scope1・2・3を含む)で温室効果ガス排出を実質ゼロ
出典:サントリーグループ 環境ビジョン2050をもとにgreenote作成
サントリーの環境の取り組みは、水だけではありません。もう一つの柱が、脱炭素です。長期目標である「環境ビジョン2050」では、2050年までに、バリューチェーン全体(Scope1・2・3を含む)で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることをめざしている。
そこへ至る道筋も、数字で示されています。中間目標として、2030年には、自社の排出(Scope1・2)を50%削減、バリューチェーン全体(Scope3)を30%削減する目標を掲げている。飲料事業では、原料の農産物の生産から、容器の製造、輸送、そして冷やして売る段階まで、幅広い排出がある。だからこそ、自社だけでなくバリューチェーン全体を見すえた目標が欠かせません。バリューチェーンの排出の考え方は、関連記事のScope3とはもあわせてご覧ください。
05
容器包装と社会・ガバナンス
ペットボトルの取り組みと、社会(S)・ガバナンス(G)の姿勢も見ておきましょう。
容器も、人も、社会も
容器包装
2030年までにグローバルのペットボトルを100%サステナブル化。リサイクル素材や植物由来へ切り替え、新たな化石由来原料を使わない。使用済みを再びボトルにする「ボトルtoボトル」も推進。
社会・ガバナンス
- 地域社会との共生
- 人材・多様性の尊重
- 公正な企業統治
出典:サントリーグループの公表情報をもとにgreenote作成
飲料メーカーにとって、避けて通れないのが容器包装です。とくにペットボトルは、使い捨てプラスチックの問題と直結します。サントリーは、2030年までに、グローバルで使うペットボトルを100%サステナブル化する目標を掲げている。リサイクル素材や植物由来素材へ切り替え、新たな化石由来の原料を使わない、という内容です。
とりわけ力を入れているのが、使用済みのペットボトルを、再びペットボトルへと生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」の水平リサイクルです。資源を循環させ、新たな石油の使用を抑える。社会(S)とガバナンス(G)の面では、水を育む活動を通じた地域社会との共生、人材や多様性の尊重、そして公正な企業統治に取り組んでいる。水を守る企業として、地域とのつながりを大切にする姿勢が、随所にうかがえる。
06
まとめ|サントリーのESG経営から学べること
サントリーのESG経営は、事業の原点である「水」と深く結びついている点に特徴があります。最後に、要点を振り返りましょう。
サントリーに学ぶ、3つのポイント
事業の原点と結ぶ
ESGを事業の生命線である「水」と深く結びつける。
本質的な目標
くみ上げる以上の水を育むという、分かりやすく本質的な目標。
文化として育てる
水育など次世代教育で、取り組みを社会や文化に広げる。
出典:サントリーグループの公表情報をもとにgreenote作成
サントリーのESG経営を振り返ると、いくつかの学びが見えてきます。
- ESGの原点は企業メッセージ「水と生きる」(2005年制定)。水を事業の生命線ととらえ、取り組みを水を軸に展開する
- 天然水の森は16都府県26か所・12,000ヘクタール超。くみ上げる地下水の2倍以上を育むことをめざす
- 工場の節水や、次世代環境教育「水育」を通じて、水を守る文化そのものを育てる
- 脱炭素の環境ビジョン2050で、2050年にバリューチェーン全体で実質ゼロ(2030年にScope1・2を50%・Scope3を30%削減)
- ペットボトルを2030年に100%サステナブル化、ボトルtoボトルの水平リサイクルも推進
サントリーのESG経営から学べるのは、自社の事業の原点とESGを深く結びつける力です。「水と生きる」という一貫した軸があるからこそ、天然水の森も、水育も、脱炭素も、ばらばらの施策ではなく、ひとつの物語としてつながっています。自社にとっての「水」は何か。そう問い直すことが、説得力あるESG経営への第一歩なのかもしれません。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。
FAQ
よくある質問(FAQ)
Q. サントリーの「水と生きる」とは何ですか?
「水と生きる」は、サントリーが2005年に定めた企業メッセージです。サントリーは、天然水やビール、清涼飲料など、水を原料とする事業を営んでおり、水はまさに事業の生命線です。だからこそ、水の恵みに感謝し、それを守り育てていくという決意を、この言葉に込めています。ESG経営、とくに環境の取り組みが、すべて「水」を軸に展開されている点が、サントリーの大きな特徴です。
Q. サントリー天然水の森とは何ですか?
天然水の森とは、サントリーが水を育むために整備・保全している森林のことです。2025年時点で、全国16都府県の26か所、あわせて12,000ヘクタールを超える面積に広がっています。特徴は、工場でくみ上げる地下水の量以上の水を、森で育む(涵養する)ことを目標にしている点です。森を手入れすることで、雨水が地下にしみ込みやすくなり、水源が守られます。生物多様性の再生にもつながる取り組みです。
Q. 「水育(みずいく)」とは何ですか?
水育とは、サントリーが行う次世代向けの環境教育プログラムです。子どもたちが、水の大切さや、水を育む森のはたらきを学ぶ機会を提供しています。森での体験学習や、学校への出張授業などを通じて、国内外で展開されています。事業で水の恵みを受けている企業として、その価値を次の世代に伝えていく。水を守る文化そのものを育てようとする取り組みといえます。
Q. サントリーの環境ビジョン2050とは何ですか?
環境ビジョン2050は、サントリーの長期の環境目標です。柱の一つが脱炭素で、2050年までに、バリューチェーン全体(Scope1・2・3を含む)で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることをめざしています。中間目標として、2030年には自社の排出(Scope1・2)を50%削減、バリューチェーン全体(Scope3)を30%削減する目標を掲げています。水の持続可能性とあわせて、環境全体を見すえたビジョンです。
Q. サントリーはペットボトルにどう取り組んでいますか?
サントリーは、2030年までに、グローバルで使用するペットボトルを100%サステナブル化することをめざしています。具体的には、リサイクル素材や植物由来素材への切り替えを進め、新たな化石由来の原料を使わない、という目標です。使用済みのペットボトルを再びペットボトルにする「ボトルtoボトル」の水平リサイクルにも力を入れています。容器包装は、飲料メーカーにとって重要な環境テーマです。
Q. サントリーのESG経営から学べることは何ですか?
大きく3つあります。1つ目は、自社の事業の根幹(水)と、ESGの取り組みを深く結びつけている点です。2つ目は、くみ上げる以上の水を育むという、分かりやすく本質的な目標を掲げている点です。3つ目は、水育のように、次世代への教育を通じて、取り組みを社会や文化にまで広げている点です。事業の原点に根ざしたESG経営の、一つの理想形といえます。
Sources
出典・参考(一次情報)
- サントリーグループ「サステナビリティ」
- サントリーグループ「サントリー天然水の森(水源涵養・生物多様性の再生)」
- サントリーグループ「水資源への取り組み」
※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年7月17日