花王のESG経営を分析|CDP最高評価を続ける理由と水・脱炭素戦略を解説

2026.06.12
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

日用品国内

「キレイライフスタイルプラン」を軸に、CDP気候変動・水・フォレストで最高評価Aを獲得。製品ライフサイクル全体の環境負荷と、原材料調達まで踏み込む姿勢を読み解きます。

戦略

19重点取り組みテーマ

CDP評価

A×3気候・水・フォレスト

脱炭素

2040カーボンゼロ

その先へ

2050カーボンネガティブ

「ESG経営の好例として、まず名前が挙がる日本企業はどこか」。そう問われたとき、花王を思い浮かべる人は少なくないはずです。

🏢この記事は特集「企業ESG分析」の一部です。先進企業のサステナビリティ経営を、戦略・取り組み・開示の観点から読み解いています。企業ESG分析の一覧を見る →

花王は、アタックやビオレで知られる日用品大手でありながら、環境情報開示の国際イニシアチブ「CDP」で最高評価を続けるESG先進企業でもあります。その経営を貫くのが、ESG戦略「キレイライフスタイルプラン」です。

本記事では、花王のESG経営を、戦略の全体像、CDP最高評価の理由、水・脱炭素戦略、そしてパーム油など原材料調達の観点から分析します。なお本記事は公表情報にもとづく解説であり、特定企業への投資を推奨するものではありません。お役に立てれば幸いです。

柱1|快適な暮らしを

製品を通じて、人々のより豊かな暮らしを実現する。

柱2|思いやりのある選択を

社会のために、責任ある選択を積み重ねる。

柱3|すこやかな地球のために

気候・水・資源など、地球環境に配慮する。

基盤:正しい経営のために

ガバナンス・倫理・コンプライアンスが、3つの柱すべてを支える土台となります。この枠組みのもと、花王は全体で19の重点取り組みテーマを設定しています。

この記事の目次

01

花王のESG経営とは|「キレイライフスタイルプラン」が軸

花王のESG経営を理解するには、まず会社そのものと、戦略の骨格を押さえる必要があります。日用品メーカーである花王が、なぜ環境分野で高く評価されるのか。その出発点を見ていきましょう。

花王はどんな会社か(1887年創業・日用品とケミカル)

花王は、1887年(明治20年)に東京・日本橋で創業した、日本を代表する日用品メーカーです。解説動画『花王のESG戦略とは?』でも紹介されているとおり、社名の「花王」は、当時の高品質な国産石鹸「顔石鹸」に由来します。人を清潔に、健康にしたい——創業の精神は、そこにありました。

事業は、衣料用洗剤や化粧品、ヘルスケア製品などの「コンシューマープロダクツ事業」と、界面活性剤などの「ケミカル事業」に大きく分かれます。暮らしに身近な製品を数多く手がけているからこそ、製品が環境に与える影響も大きい。この事業特性が、花王のESG経営を方向づけてきたのです。

ESG戦略「キレイライフスタイルプラン」の全体像

花王のESG経営の中核が、2019年に公表された「キレイライフスタイルプラン」です。同動画によれば、この戦略はESGの取り組みを3つの柱と1つの基盤に分類し、全体で19の重点取り組みテーマを設定しています。

3つの柱とは、人々の「快適な暮らし」、社会への「思いやりのある選択」、そして「よりすこやかな地球」です。これらを「正しい経営」という基盤が支えます。製品を通じて生活者の暮らしを豊かにしながら、社会と地球環境にも配慮する。その全体像を一枚の絵として描いた点に、この戦略の特徴があります。

なぜ花王はESGで注目されるのか

花王が注目される理由は、取り組みの「本気度」と「継続性」にあると言えます。ESGを広報のための飾りに留めず、製品開発や原材料調達といった本業の中核に組み込んできました。

加えて、その成果を客観的な評価につなげている点も見逃せません。後述するCDPの最高評価は、その象徴です。長期戦略を掲げ、地道に開示を続ける。この姿勢が、国内外からの評価を支えてきたのです。

02

CDPで最高評価を続ける理由

花王のESG経営を語るうえで欠かせないのが、CDPでの高評価です。なぜ花王は、複数の環境分野で最高評価を得続けてこられたのでしょうか。その仕組みと背景を整理します。

CDPとは|環境情報開示の国際イニシアチブ

CDPとは、企業や自治体の環境への取り組みを評価・開示する国際的なイニシアチブです。気候変動、水セキュリティ、フォレスト(森林)といったテーマごとに、企業の情報開示や取り組みをAからDマイナスで格付けします。

最高評価の「A」を得た企業は「Aリスト」として公表され、世界中の投資家が参照します。ESG投資の考え方は、関連記事のESG投資とは|評価基準・手法と企業が押さえるべきポイントで整理しました。CDPは、いわば環境分野の「通信簿」のような存在と言えるでしょう。

花王の評価|気候変動・水・フォレストでA

花王は、このCDPで気候変動・水セキュリティ・フォレストの複数分野にわたり、最高評価のAを獲得した実績を持ちます。1つの分野で高評価を得る企業は数あれど、複数分野で同時にトップ評価を得る企業は、世界でも限られます。

花王は、その数少ない企業の一社として知られてきました。気候・水・森林という、互いに結びついた環境課題に総合的に取り組んできた成果と言えます。この「総合力」こそ、花王のESG経営を際立たせる点なのです。

評価を支える情報開示の姿勢

高評価の土台にあるのが、透明性の高い情報開示です。CDPの評価は、取り組みの実績だけでなく、それをどれだけ具体的かつ検証可能な形で開示しているかにも左右されます。

花王は、目標と進捗、課題までを継続的に開示してきました。都合のよい数字だけを並べるのではなく、ライフサイクル全体のデータを示す。こうした開示の質が、評価を支えてきたわけです。情報開示の枠組みは、関連記事のESG情報開示とは|基礎・開示の枠組みと企業が押さえるポイントもあわせてご覧ください。

気候変動 A

CO2削減目標と取り組みの開示。

水セキュリティ A

製品ライフサイクルの水と資源管理。

フォレスト A

パーム油など原材料の責任ある調達。

1分野での高評価は珍しくありませんが、複数分野で同時に最高評価を得る企業は世界でも限られます。

03

水への取り組み|製品ライフサイクルの水に向き合う

花王のESG経営を特徴づけるのが、水への徹底したこだわりです。なぜ日用品メーカーが、これほど水を重視するのでしょうか。その理由と取り組みを見ていきます。

なぜ花王にとって水が重要なのか

花王の製品の多くは、使う時に水を伴います。洗剤で衣類を洗い、シャンプーで髪を洗い、スキンケアで肌を整える。いずれの場面でも、水が欠かせません。

つまり花王にとって水とは、自社の工場で使う水だけの話ではないのです。消費者が製品を使う段階の水まで含めて、環境負荷を考える必要があります。製品ライフサイクル全体で水と向き合う。この発想が、花王の水戦略の出発点になっています。

事業活動と製品使用時の水を減らす

花王は、2つの面から水の課題に取り組んできました。1つは、自社の事業活動で使う水を効率化し、削減すること。もう1つは、製品の改良を通じて、消費者が使う段階の水を減らすことです。

たとえば、すすぎが一回で済む柔軟剤のような製品は、使用時の水と手間を同時に減らします。製品の力で、暮らしの中の水使用そのものを変えていく。ここに、メーカーならではのアプローチが表れているのです。

水資源の保全と情報開示

花王は、水の使用量を管理するだけでなく、水資源そのものの保全にも目を向けてきました。原材料の産地を含めた水リスクを把握し、流域の保全活動などにも関わっています。

そして、その取り組みと実績を、CDPの水セキュリティ分野などで継続的に開示してきました。使う量を減らし、資源を守り、結果を開示する。この一連の流れが、水分野での高評価につながっているわけです。

つくる時

原材料の生産・自社工場で使う水。

使う時(特に大きい)

洗濯・洗顔など、消費者が製品を使う段階の水。

捨てる時

排水・廃棄に伴う水への負荷。

花王は「使う段階の水が大きい」点に着目し、すすぎを減らす製品改良などで、暮らしの水使用そのものを変えていきます。

04

脱炭素戦略|2040年カーボンゼロ・2050年カーボンネガティブ

花王の脱炭素目標は、自社の枠を超えた野心的な内容です。製品のライフサイクル全体を見すえた発想が、その根底にあります。目標と具体策を整理しましょう。

カーボンゼロ・カーボンネガティブという目標

花王は、自社の事業活動で生じるCO2排出を2040年までに実質ゼロ(カーボンゼロ)にし、2050年にはカーボンネガティブを目指すと掲げています。カーボンネガティブとは、排出する以上に、削減や除去への貢献が上回る状態を指します。

これは、単に自社をゼロにするだけでなく、社会全体の脱炭素に貢献するという宣言です。カーボンニュートラルの基本的な考え方は、関連記事のカーボンニュートラルとは|意味・脱炭素との違いと2050年目標・企業の取り組みで整理しています。なお、こうした目標は時点により見直される場合があります。

製品を通じた削減(つめかえ・濃縮化)

花王の脱炭素で特徴的なのが、製品を通じた削減です。代表例が、つめかえ・つけかえ製品の普及です。容器を繰り返し使うことで、プラスチックとCO2の両方を減らせます。

さらに、洗剤の濃縮化も効果的です。製品を小さく軽くすれば、輸送時の排出も減らせます。こうした工夫は、循環型の発想とも通じます。関連記事のサーキュラーエコノミーとは|3原則・ビジネスモデルと企業の取り組みもあわせて参考になるはずです。

再生可能エネルギーとサプライチェーン

自社の排出削減に向けて、花王は再生可能エネルギーの活用も進めてきました。工場や事業所で使う電力を、再エネへ切り替える動きです。

加えて見すえているのが、サプライチェーン全体の排出、いわゆるScope3です。原材料の調達から製品の使用・廃棄まで、自社の外で生じる排出も大きいためです。Scope3の考え方は、関連記事のScope3とは|サプライチェーン排出量の算定方法と15カテゴリを解説で詳しく解説しました。

現在|排出の削減

省エネ・再エネ・製品改良(つめかえ・濃縮化)で着実に減らす。

2040年|カーボンゼロ

自社の事業活動で生じるCO2排出を実質ゼロに。

2050年|カーボンネガティブ

削減・除去への貢献が、排出を上回る状態へ。

「カーボンネガティブ」は、自社をゼロにするだけでなく社会全体の脱炭素に貢献する宣言です。目標は時点により見直される場合があります。

05

持続可能な原材料調達|パーム油と森林

花王のESG経営で、もう一つ重要なのが原材料の調達です。とりわけパーム油は、環境と人権の双方に関わる、難しいテーマと言えます。その論点と取り組みを見ていきましょう。

パーム油が抱える課題(森林・小規模農家)

パーム油は、洗剤や化粧品の原料として広く使われています。生産効率が高い有用な原料ですが、その栽培は課題も抱えます。農園の拡大が熱帯林の減少や生物多様性の損失につながる、という指摘です。

さらに、生産を支える小規模農家の労働環境や生活といった、社会的な論点もあります。生物多様性をめぐる企業の責任は、関連記事のネイチャーポジティブとは|30by30・生物多様性枠組と企業の取り組みでも触れています。パーム油は、環境と社会が交わる象徴的なテーマなのです。

花王の取り組み(認証・トレーサビリティ・農家支援)

花王は、このパーム油の課題に正面から向き合ってきました。柱となるのが、認証油の調達と、サプライチェーンのトレーサビリティ(追跡可能性)の確保です。どの農園に由来する原料かを把握し、問題のある調達を避ける狙いです。

加えて、小規模農家を支援する取り組みも進めてきました。持続可能な栽培の知識を広め、農家の生活向上を後押しする活動です。原料を「買う」だけでなく、産地の課題解決に関わる。ここに、花王の調達姿勢が表れています。

調達がCDPフォレスト評価につながる

こうした調達への取り組みは、CDPのフォレスト分野の評価に直結します。森林リスクのある原材料を、どれだけ責任ある形で調達しているか。その透明性が問われるためです。

花王が気候・水だけでなく森林でも高評価を得てきた背景には、パーム油などへの地道な取り組みがあります。原材料調達は、地味ながらESG経営の土台を成す領域です。サプライチェーンにまで踏み込む姿勢が、総合的な評価を支えていると言えるでしょう。

森林破壊・生物多様性の損失

認証油の調達を進め、問題のある農園に由来する原料を避ける。

トレーサビリティの欠如

サプライチェーンの追跡可能性を確保し、産地まで把握する。

小規模農家の生活・労働

持続可能な栽培知識の普及と、農家の生活向上を支援する。

開示の不足

CDPフォレスト分野などで、取り組みと実績を継続的に開示する。

原材料調達は地味ながら、ESG経営の土台を成す領域です。サプライチェーンまで踏み込む姿勢が、総合的な評価を支えています。

人的資本と多様性(S)|女性管理職比率を従業員比率と一致させる目標

花王のS領域で特筆すべきは、目標の立て方です。単に「女性管理職◯%」ではなく、2030年までに女性管理職比率を女性従業員比率と一致させる——つまり「登用の壁を構造的になくす」ことを目標に掲げているとされます。

化粧品・日用品という女性消費者が主役の事業で、意思決定層の多様性は商品力に直結します。DE&Iを「公平性(エクイティ)」から設計する姿勢は、女性活躍推進法時代のベンチマークです。

ガバナンス(G)|社外半数以上を目指す取締役会

ガバナンス面では、社外取締役を取締役の半数以上とし、取締役会の女性比率30%を目指す方針を示しているとされます。ESGを経営戦略の中核に置く「Kirei Lifestyle Plan」を、監督面から支える体制づくりです。

E(CDP最高評価)の常連である同社ですが、S・Gの目標もE同様に数値で管理する——この一貫性が花王のESG経営の型といえます。

06

まとめ|花王のESG経営から学べること

花王のESG経営は、ESG戦略「キレイライフスタイルプラン」を軸に、水・気候・森林という結びついた課題へ総合的に取り組む点に特徴がありました。その成果が、CDPでの複数分野にわたる最高評価につながってきたのです。

他社が学べるポイントは、大きく2つに整理できます。第一に、製品のライフサイクル全体(つくる・使う・捨てる)で環境負荷をとらえる視点です。第二に、長期の戦略にテーマを組み込み、課題まで含めて継続的に開示する姿勢です。一過性ではなく、本業と結びつけて粘り強く続けること。それが評価につながると言えます。

ESG先進企業の事例は、自社の取り組みを見直すヒントの宝庫です。greenoteでは、国内外の先進企業の分析を世界のESG先進企業 特集で順次お届けしていきます。あわせてご覧いただければ幸いです。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. 花王のESG戦略「キレイライフスタイルプラン」とは何ですか?

花王が掲げるESG戦略で、人々の暮らし・社会・地球という観点を3つの柱と1つの基盤に整理し、全体で19の重点取り組みテーマを設定したものです。製品を通じて快適な暮らしを実現しつつ、社会と地球環境に配慮した「正しい経営」を目指す枠組みです。

Q. 花王はなぜCDPで高く評価されているのですか?

花王は、CDP(環境情報開示の国際イニシアチブ)の気候変動・水セキュリティ・フォレストといった複数分野で、最高評価のAを得てきた実績があります。製品のライフサイクル全体で水やCO2に向き合い、パーム油など原材料の持続可能な調達にも取り組み、その内容を透明性高く開示してきたことが背景にあると考えられます。

Q. 花王はなぜ「水」を重視しているのですか?

花王の製品の多くは、洗剤やスキンケアなど、使う時に水を伴います。つまり自社工場の水だけでなく、消費者が製品を使う段階の水も含めて環境負荷を考える必要があるためです。花王は製品ライフサイクル全体で水と向き合い、使用量の削減や水資源の保全に取り組んでいます。

Q. 花王の脱炭素目標はどのような内容ですか?

花王は、自社の事業活動で生じるCO2排出を2040年までに実質ゼロ(カーボンゼロ)にし、2050年にはカーボンネガティブ(排出より除去・削減への貢献が上回る状態)を目指すという目標を掲げています。つめかえ製品や濃縮化など、製品を通じた削減も重視しています。なお目標は時点により見直される場合があります。

Q. 花王のパーム油への取り組みとは何ですか?

パーム油は洗剤などの原料になりますが、生産が森林破壊や小規模農家の課題と結びつくことがあります。花王は、認証油の調達やサプライチェーンのトレーサビリティ(追跡可能性)の確保、小規模農家の支援などに取り組んでいます。こうした調達への姿勢が、CDPフォレスト分野の評価にもつながっています。

Q. 花王のESG経営から企業が学べることは何ですか?

第一に、製品のライフサイクル全体(つくる・使う・捨てる)で環境負荷をとらえる視点です。第二に、水・気候・森林といったテーマを長期戦略に組み込み、継続的に情報開示している点です。一過性の取り組みではなく、本業と結びつけて粘り強く続ける姿勢が、外部評価の獲得につながっていると言えます。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

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