ESG・GHG算定ツールの選び方|タイプ別の違いと比較・選定の観点を解説

2026.06.20
環境情報

サステナビリティ開示の義務化が進み、「排出量をどう算定し、どう管理・開示するか」が多くの企業の課題になりました。その解決策として注目されるのが、ESG・GHG算定ツール(サステナビリティ管理SaaS)です。一方で、市場には多種多様なツールがあふれ、「結局どれを選べばいいのか」と頭を抱える担当者も少なくありません。

本記事では、特定の製品名を挙げるのではなく、ツールの「タイプの違い」と「選定の観点」を中立的に整理してみます。自社に合うツールを見極めるための、判断軸づくりにお役立てください。

目次

ESG・GHG算定ツールとは

ESG・GHG算定ツールとは、温室効果ガス排出量の算定や、サステナビリティに関するさまざまなデータの収集・管理・開示を効率化するソフトウェアの総称です。クラウドで提供されるSaaS形式が主流になっています。

なぜ専用ツールが必要なのか

排出量の算定や非財務情報の管理は、年々複雑になっています。Scope3まで含めれば、対象は自社にとどまらずサプライチェーン全体に広がります。データの収集元は社内外に散らばり、算定基準や排出原単位も定期的に更新されます。

これらを手作業で管理し続けるのは、現実的ではありません。専用ツールは、データ収集の自動化、原単位の組み込み、算定の自動計算、開示帳票の出力などを通じて、担当者の負担を大きく減らしてくれます。Scope3の考え方はScope3とはもあわせてご覧ください。

Excel管理の限界

多くの企業は、最初はExcelで算定を始めます。初年度や小規模なうちは、それで十分なことも多いでしょう。しかし、対象拠点や項目、更新頻度が増えるにつれ、Excel管理には限界が見えてきます。

入力ミスやファイルのバージョン管理、属人化、監査対応の煩雑さ——こうした課題が積み重なると、かえって非効率になりかねません。「どこで限界が来るか」を見極め、適切なタイミングでツール導入を検討するのが現実的です。

ツールの3つのタイプ

ひとくちにESGツールといっても、得意分野はさまざまです。大きく3つのタイプに整理すると、自社に必要なものが見えやすくなります。

ESG・GHG算定ツールの3タイプ

得意分野で選ぶと、自社に合うものが見える

①GHG算定特化型

得意

Scope1〜3の排出量の算定・可視化、削減シミュレーション

向く企業

まず排出量を正確に算定したい

②ESG統合管理型

得意

排出量+人的資本・水・廃棄物など非財務データ全般の一元管理

向く企業

開示全体を一元管理したい

③開示・レポーティング特化型

得意

CSRD・ISSBなど特定基準に沿った帳票・レポート作成

向く企業

特定の開示基準対応を効率化したい

機能が広いほど高機能・高コストになりやすい。目的に合うタイプを選ぶのが基本です。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

①GHG算定特化型

温室効果ガス排出量の算定・可視化に特化したタイプです。Scope1〜3の算定を効率化し、排出量の傾向分析や削減シミュレーションを得意とします。「まずは自社の排出量を正確に把握したい」という企業に向いています。GHG算定の基礎はGHGプロトコルとはで解説しています。

②ESG統合管理型

排出量にとどまらず、人的資本、水、廃棄物、人権など、非財務データ全般を一元的に収集・管理するタイプです。データを横断的に扱えるため、開示全体を効率化したい企業や、複数部門のデータを統合したい企業に適しています。その分、機能は広く、価格や運用負荷も高めになる傾向があります。

③開示・レポーティング特化型

CSRDやISSBといった特定の開示基準に沿って、帳票やレポートを作成することに強みを持つタイプです。基準ごとの要求項目に対応したテンプレートを備え、開示書類の作成を効率化します。特定の制度対応が急務な企業にとって、心強い選択肢になります。

導入で失敗しないための選定チェック項目

タイプの当たりをつけたら、次は個別の比較です。後悔しないために、最低限おさえたい観点をまとめました。

ツール選定の6つのチェック項目

自社の要件と照らし合わせて優先順位を

1

対応範囲

Scope1〜3のどこまでか、準拠する算定基準は何か

2

データ連携

既存システム・拠点データと連携できるか、拡張性は

3

グローバル対応

多言語・海外拠点・各国制度に対応できるか

4

原単位と更新

排出原単位データベースの収録範囲と更新頻度

5

監査・保証対応

第三者保証やデータの追跡可能性に対応できるか

6

サポートと定着

導入支援・サポート体制、社内で使いこなせるか

多機能ほど高コスト・高負荷。過不足のない範囲を見極めるのが鍵です。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

対応範囲(Scope1〜3・算定基準)

まず確認すべきは、ツールがカバーする範囲です。Scope1・2だけなのか、Scope3まで算定できるのか。準拠する算定基準(GHGプロトコル等)に対応しているか。自社が将来必要とする範囲まで見据えて確認しておくと、後の乗り換えを避けられます。

データ連携と拡張性

排出量の算定には、エネルギー使用量や購買データなど、多様な社内データが必要です。既存の基幹システムや拠点のデータと連携できるか、APIやインポート機能が充実しているかは、運用効率を大きく左右する要素です。事業拡大に応じて拡張できる柔軟性も重要です。

多言語・グローバル拠点への対応

海外拠点を持つ企業では、多言語対応や各国の制度・単位への対応が欠かせません。現地担当者がそのまま使えるか、為替や各国の排出係数に対応できるか。グローバルにデータを集約する必要がある企業は、この観点を早めに確認しておきましょう。

運用・信頼性の観点

機能の比較に目が行きがちですが、導入後に効いてくるのが運用と信頼性です。見落としがちな点を確認します。

排出原単位データベースと更新

排出量の算定精度は、使用する排出原単位に大きく左右される点です。ツールがどの原単位データベースを収録し、どのくらいの頻度で更新しているかは重要な比較ポイントです。原単位は制度改定で見直されるため、最新版への追従が速いツールほど安心して使えます。

監査・第三者保証への対応

開示する排出量データは、第三者保証の対象になることがあります。算定の根拠やデータの入力履歴をたどれる「追跡可能性(トレーサビリティ)」が確保されているか。監査人に説明できる形でデータを出力できるかは、信頼性を担保するうえで欠かせない要件です。

サポート体制と社内定着

どれほど高機能でも、使いこなせなければ意味がありません。導入時の伴走支援や、操作に迷ったときのサポート体制を確認しましょう。担当者が異動しても運用が止まらないよう、社内に定着させやすい操作性かどうかも、長く使ううえで重要です。

コストと導入プロセスの考え方

コストは料金表の数字だけでは測れません。導入から運用までを見据えた、総コストの考え方を押さえます。

料金体系の見方(初期・従量・規模)

ツールの料金は、初期費用、月額・年額の固定費、データ量や拠点数に応じた従量課金など、体系がさまざまです。表面的な価格だけでなく、自社の規模で実際にいくらになるのかを試算することが大切です。導入支援やカスタマイズの費用も忘れず確認しましょう。

スモールスタートと段階導入

最初から全機能・全拠点で導入する必要はありません。まずは主要拠点やScope1・2から始め、運用に慣れてから対象を広げる「段階導入」が現実的です。小さく始めて効果を確かめながら拡張すれば、投資の無駄も社内の混乱も抑えられます。

ツール選定の進め方(実務ステップ)

最後に、実際にツールを選ぶときの進め方を見ていきます。焦って製品比較から入らず、まず自社の要件を固めるのが成功のコツです。

要件定義→比較→トライアル→導入

おすすめの流れは4ステップです。第一に「要件定義」で、目的・対象範囲・必須機能・予算を明確にします。第二に、その要件で「比較」し候補を絞り込みます。第三に、無料トライアルやデモで「試用」し、操作性や自社データとの相性を確かめます。そのうえで「導入」へ進めば、ミスマッチを大きく減らせます。

まずは手元のテンプレートから始める

ツール導入の前に、まず手元で算定の全体像をつかむのも有効です。簡易なExcelテンプレートで一度算定してみると、自社に必要な範囲や項目が具体的に見え、要件定義の精度が上がります。greenoteでは、Scope3の簡易算定をはじめとする実務テンプレートを無料で配布しています。

ツール選定の進め方(4ステップ)

製品比較から入らず、まず要件を固める

1

要件定義

目的・対象範囲・必須機能・予算を明確化

2

比較

要件に沿って候補を絞り込む

3

トライアル

デモ・無料試用で操作性と相性を確認

4

導入

スモールスタートで段階的に展開

まず手元のテンプレートで算定の全体像をつかむと、要件定義の精度が上がります。

出典:各種公開情報をもとにgreenote作成

まとめ|自社の目的から逆算して選ぶ

ESG・GHG算定ツールは、排出量の算定から非財務データの管理、開示まで、担当者の負担を大きく減らす心強い味方です。ただし、ツールには「算定特化」「統合管理」「開示特化」といったタイプの違いがあり、多機能なほど高コスト・高負荷になりがちです。

大切なのは、ツールを目的化せず、「自社が何を達成したいか」から逆算して選ぶことです。対応範囲・データ連携・原単位・監査対応・コストといった観点で要件を整理し、スモールスタートで試しながら自社に合うものを見極めましょう。まずは手元のテンプレートで算定の全体像をつかむことが、その第一歩になります。関連して、CO2排出量算定ツールとはや開示基準のISSBとはもあわせてご覧ください。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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