PRI(責任投資原則)とは|国連が定めた6つの原則とESG投資の起点・GPIF署名の意味をわかりやすく解説

2026.06.28
ESG投資

いまや当たり前になった「ESGを考えて投資する」という発想。その世界的な出発点が、2006年に国連が主導して生まれたPRI(責任投資原則)です。当時の国連事務総長コフィー・アナンの呼びかけで、世界の機関投資家が「投資の判断にESGを組み込む」と約束した——。日本でも、GPIFが2015年に署名し、ESG投資が一気に広がりました。本記事では、その6つの原則と、ESG投資の起点としての意味を、PRI・GPIFなどの一次情報をもとに、わかりやすく解説します。

ESG投資の全体像はESG投資とは、その源流はSRI(社会的責任投資)とはもあわせてご覧ください。

この記事の目次

PRI(責任投資原則)とは

まず、PRIをひとことで整理します。「機関投資家が、投資の判断にESGを組み込むことを約束する、国連主導の原則」という発想から入りましょう。

PRIをひとことで言うと

PRIとは、Principles for Responsible Investment(責任投資原則)の略で、機関投資家が、投資の意思決定のプロセスに、環境(E)・社会(S)・企業統治(G)の課題を組み込むことを促す、国連主導の原則です。2006年に策定された。年金基金や運用会社といった、大きなお金を動かすプロのお金の出し手に向けたものです。

ポイントは、これが法律ではなく、賛同する投資家が「署名」して自主的に参加する枠組みだということ。署名した機関投資家は、6つの原則を実行することを約束します。「お金の流れを、ESGを考える方向へ向ける」——。その世界共通の旗印が、PRIなのです。

なぜ重要なのか――ESG投資の起点

PRIが重要なのは、それがESG投資を世界に広げた起点だからです。いまでこそ「ESG」という言葉は広く知られていますが、それを投資の世界の共通言語にしたのが、ほかならぬPRIでした。実は、「ESG」という言葉自体、PRIの策定をめぐる議論のなかで広まったとされます。

機関投資家が動かすお金は、桁違いに大きい。その巨大なお金が、ESGを考えて動くようになれば、企業の行動も社会も変わりうる。PRIは、「お金の力で持続可能な社会へ」という流れの、最初の大きな一歩でした。だからこそ、ESGやESG投資を理解するうえで、避けて通れない枠組みなのです。

成り立ち――2006年、国連から始まった

PRIを理解するには、それが生まれた2006年の背景を知るのが近道です。SRIからESG投資への転換点でもある。

国連の呼びかけから、ESG投資の世界へ

2006年・国連の呼びかけ

国連事務総長コフィー・アナンが世界の大手機関投資家に参画を呼びかけ、ニューヨーク証券取引所でPRIが発足。UNEP FIなどが関与。

ESG投資の世界的な広がりへ

機関投資家が投資判断にESGを組み込む流れが広がった。

投資の歴史のなかでの転換点

SRI

倫理を出発点とした投資

ESG投資

ESGを投資判断に組み込む

その転換点に立つのがPRI

出典:PRIなどの公開情報をもとにgreenote作成

国連事務総長アナンの呼びかけ

PRIの始まりは、2006年にさかのぼります。当時の国連事務総長コフィー・アナンが、世界の大手機関投資家に対し、責任投資原則の策定に参画するよう呼びかけたことがきっかけでした。そして同年4月、ニューヨーク証券取引所で、PRIの発足式典が開かれます。アナン自身が、取引開始のベルを鳴らしました。

策定には、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)国連グローバル・コンパクトが関わっている。国連という、特定の国や企業の利害を超えた立場が主導したことで、PRIは世界共通の枠組みとしての正統性を得た。お金の世界に、持続可能性という視点を、国際的な合意として持ち込んだのです。

SRIからESG投資への橋渡し

PRIは、投資の歴史のなかで、大きな転換点にあたります。それまで、社会に配慮した投資といえば、SRI(社会的責任投資)が中心でした。SRIは、宗教的・倫理的な価値観から、たばこや武器などの「好ましくない」企業を除外するのが出発点。倫理が主役だったのです。

これに対しPRIは、ESGを「投資リターンにも関わる、見るべき要素」として、投資判断に組み込むことを促しました。倫理だけでなく、企業価値やリスクの観点からESGを捉える——。この発想の転換が、SRIから、より広いESG投資へと、世界をシフトさせました。PRIは、その橋渡しを担ったのです。

6つの原則

PRIの中身は、署名した機関投資家が実行を約束する6つの原則です。一つずつ見ていきましょう。

署名機関が約束する、6つの原則

1

投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む

2

活動的な所有者となり、所有方針と慣習にESG問題を組み入れる(議決権行使・エンゲージメント)

3

投資先にESG課題の適切な開示を求める

4

資産運用業界で原則が受け入れられ実行されるよう働きかける

5

原則を実行する効果を高めるために協働する

6

原則の実行状況や進捗を報告する

とくに原則1の「組み込み」と原則2の「活動的な所有」が中核。

出典:PRIなどの公開情報をもとにgreenote作成

投資判断への組み込みから報告まで

PRIの6つの原則は、署名した機関投資家が実行を約束する行動指針です。順に見ると、第1原則は「投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む」こと。第2原則は「活動的な所有者となり、所有方針と慣習にESG問題を組み入れる」こと。第3原則は「投資先にESG課題の適切な開示を求める」ことです。

続く第4原則は「資産運用業界で原則が受け入れられ、実行されるよう働きかける」ことを掲げます。第5原則が「原則を実行する効果を高めるために協働する」こと。そして第6原則では「原則の実行状況や進捗を報告する」ことが求められる。投資判断への組み込みから始まり、業界全体への働きかけ、そして報告まで——。一貫した責任投資のサイクルが描かれているのです。

鍵となる「組み込み」と「活動的な所有」

6つのなかで、とくに中核となるのが、第1原則と第2原則です。第1原則の「組み込み」は、ESGを単なる付け足しではなく、投資判断の本体に組み入れることを求めます。リターンとリスクを見るのと同じ目線で、ESGを見る、ということです。

第2原則の「活動的な所有」も重要です。投資家は、株式を持つことで、企業に意見を言う立場になります。議決権の行使やエンゲージメント(対話)を通じて、投資先にESGの改善を促す。ただ株を持つだけでなく、所有者として企業に働きかける——。この姿勢こそ、PRIが投資家に求める、責任ある行動の核心なのです。

署名機関の仕組み

PRIは、賛同する機関投資家が「署名」して参加する仕組みです。誰が署名し、何が求められるのかを整理します。

署名して参加し、報告する

署名機関の3つの区分

アセットオーナー

年金基金や保険会社など、お金の出し手

運用会社

アセットオーナーから委託されて運用する会社

サービス提供者

調査や助言などで運用を支える事業者

署名後に求められること

6つの原則の実行状況を年次で報告し、取り組みの評価(アセスメント)を受ける。最低限の要件を満たさないと参加を続けられない場合もある。

出典:PRIなどの公開情報をもとにgreenote作成

3つの区分――アセットオーナー・運用会社・サービス提供者

PRIに参加するには、「署名」します。署名する機関は、大きく3つの区分に分かれます。1つめが、アセットオーナー。年金基金や保険会社など、お金の出し手です。2つめが、運用会社(アセットマネージャー)。アセットオーナーから委託を受けて、実際に運用する会社です。

そして3つめが、サービス提供者。調査や助言などで、運用を支える事業者です。お金を出す人、運用する人、支える人——。投資にかかわる幅広い主体が署名することで、PRIは業界全体を巻き込む力を持ちます。とくに影響が大きいのが、巨額の資金を持つアセットオーナーの署名。次に述べる日本のGPIFは、その典型です。

署名後の報告とアセスメント

署名は、ゴールではなくスタートです。署名した機関には、6つの原則の実行状況を、年次で報告することが求められます。「ESGをどう投資に組み込んだか」「どんなエンゲージメントをしたか」を、毎年まとめて開示するのです。

さらに、その取り組みは評価(アセスメント)を受けます。掛け声だけで中身が伴わない署名を防ぐため、最低限の要件も設けられ、これを満たさない機関は、参加を続けられない場合もあります。署名したら、実行し、報告し、評価される——。この規律があるからこそ、PRIは「名ばかり」に終わらず、責任投資の実質を担保しているのです。

日本とPRI――GPIF署名の転機

日本でESG投資が一気に広がった背景には、ある大きな機関投資家のPRI署名がありました。

GPIF署名が、日本のESG投資を動かした

2015年・GPIFが署名

世界最大級の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名。国内の機関投資家のあいだでESG投資の重要性が一気に認識され、市場が拡大した。

世界での広がり

署名機関

約5,300

世界の主要な機関投資家が参加

運用資産残高

約128兆米ドル

2024年時点

数値は時点により変わりうる。

出典:PRI・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の公開情報をもとにgreenote作成

2015年、GPIFが署名した意味

日本でPRIが大きな意味を持ったのが、2015年です。この年、世界最大級の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、PRIに署名しました。私たちの年金を運用する、巨大な公的機関の署名は、日本の投資の世界に強烈なメッセージを送るものだった。

GPIFのような巨大なアセットオーナーがESGを重視すれば、その資金を運用する運用会社も、ESGに本気で取り組まざるをえません。実際、この署名を機に、国内の機関投資家のあいだでESG投資の重要性が一気に認識され、日本のESG投資市場は急拡大しました。GPIFの署名は、日本のESG投資の事実上の号砲だったといえます。

世界での広がり

視野を世界に広げると、PRIの広がりは圧倒的です。署名機関は約5,300にのぼり、その運用資産残高(AUM)は、2024年時点で約128兆米ドルに達しています(PRIの2024年次報告)。これは、世界の主要な機関投資家の多くが、PRIに名を連ねていることを意味します。

もはやPRIは、一部の意識の高い投資家の取り組みではなく、責任投資の世界標準となっています。これだけの規模のお金が「ESGを考える」と表明していること自体が、企業に与える影響は計り知れません。お金の流れが、世界規模でESGを向いた——。その象徴が、PRIなのです。なお、署名機関数や運用資産は時点によって変わりうるため、最新の数値は確認が必要です。

意義と課題

ESG投資を世界に広げたPRIですが、その実効性をめぐる課題もあります。中立に整理します。

広げた意義と、問われる実効性

意義

ESGを投資の共通言語にし、世界の巨大な資金を責任投資へ向けた。SRIからESG投資への流れを後押しし、企業のESGへの取り組みを促した。

課題

署名しても中身が伴わないウォッシュの懸念。取り組みの実効性をどう測るか。近年は米国を中心とした反ESGの逆風も受ける。

PRIは規律づくりを進めつつ、責任投資の質をどう高めるかが問われている。

出典:PRIなどの公開情報をもとにgreenote作成

ESG投資を主流にした意義

PRIの最大の意義は、ESGを投資の「主流」に押し上げたことです。かつては一部の理念的な投資家のものだった責任投資を、世界の巨大な資金が向かう先へと変えました。ESGという共通言語が広まり、企業も「投資家に評価されるにはESGに取り組む必要がある」と考えるようになった。

この変化が、企業のESG情報開示や、サステナビリティ経営を後押ししてきたのです。投資家が見るから、企業が動く——。お金の流れを通じて、社会全体の持続可能性を高めるという好循環の、起点をつくったのがPRIです。その歴史的な役割は、非常に大きいといえます。

ウォッシュ批判と反ESGの逆風

一方で、課題もあります。1つが、ウォッシュ(見せかけ)への懸念です。PRIに署名しても、実際の投資にESGが十分に反映されていない機関がある、という批判は根強い。署名が「ESGに熱心」というアピールの道具になってはいないか、という指摘です。PRIが報告やアセスメント、最低要件を強化してきたのは、この懸念に応えるためでもあります。

もう1つが、反ESG(アンチESG)の逆風です。近年、とくに米国では、「ESGは投資リターンを犠牲にする」「政治的だ」といった批判が強まっています。こうした動きのなかで、署名を見直す動きが出ることもある。ESG投資の意義と、その実効性や中立性をどう両立させるか——。PRIは、広がりの先で、その質を問われる段階に入っているのです。

PRIをどう捉えるか

PRIは、2006年に国連が主導して定めた、機関投資家が投資の判断にESGを組み込むための6つの原則です。当時の国連事務総長アナンの呼びかけで発足し、SRIからESG投資への転換点となりました。アセットオーナーや運用会社が署名して参加し、実行状況を報告する。日本ではGPIFが2015年に署名したことが、ESG投資拡大の大きな転機になりました。世界では署名機関が約5,300、運用資産残高(AUM)は約128兆ドル規模に広がっています(PRIの2024年次報告)。

大切なのは、PRIを「投資家の自主的な努力目標」と軽く捉えるのではなく、「お金の流れを、世界規模でESGへと向けた、責任投資の出発点であり共通の旗印」として理解することでしょう。ウォッシュや反ESGといった課題はありますが、それらに向き合いながら規律を高めてきた歴史でもあります。ESG投資やSRI、インパクト投資とあわせて捉えると、責任ある投資の大きな流れが見えてきます。ESGや金融の全体像はESG完全ガイドもご覧ください。

巨大なお金が、ESGを考えて動く。その世界共通の約束が、PRIです。投資の力で持続可能な社会をめざす流れの、原点となった枠組みなのです。なお本記事は制度や考え方を中立に整理したものであり、特定の投資や金融商品を推奨するものではありません。最新の内容はPRIやGPIFなどの公表資料でご確認ください。

あわせて読みたい:世界最大級の年金基金は投資先に何を求めるのか → GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは|ESG投資と「重大ESG課題」2026年版

よくある質問(FAQ)

Q. PRI(責任投資原則)とは何ですか?

A. 2006年に国連が主導して定めた、機関投資家のための原則です。投資の意思決定プロセスに、環境・社会・企業統治(ESG)の課題を組み込むことを促す、6つの原則からなります。賛同する機関投資家が『署名』して参加する自主的な枠組みで、ESG投資を世界に広げる起点となりました。当時の国連事務総長コフィー・アナンの呼びかけで策定されました。

Q. PRIの6つの原則とは何ですか?

A. ①投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む、②活動的な株式所有者となり、所有方針・慣習にESG問題を組み入れる(議決権行使やエンゲージメント)、③投資先にESG課題の適切な開示を求める、④資産運用業界で原則が受け入れられ実行されるよう働きかける、⑤原則を実行する効果を高めるために協働する、⑥原則の実行状況や進捗を報告する、の6つです。

Q. PRIと日本のESG投資の関係を教えてください。

A. 日本でESG投資が一気に広がる転機になったのが、世界最大級の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年にPRIへ署名したことです。これにより、国内の機関投資家のあいだでESGを投資判断に組み込む重要性が広く認識され、市場の拡大につながりました。PRIは、SRI(社会的責任投資)からESG投資への流れを世界規模で後押しした枠組みといえます。

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出典・参考(一次情報)

最終更新日:2026年7月1日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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