ESG Company Analysis
「つながる」は、あたりまえではありません。全国に張りめぐらされた基地局や通信網、そして休みなく動くデータセンターが、私たちの通信を支えています。その大手のひとつが、auを展開するKDDIです。膨大な電力を使う事業だからこそ、脱炭素の責任も重くなります。KDDIは、自社の排出をゼロにする目標を、10年も前倒ししました。本記事では、そのESG経営を、環境計画「KDDI GREEN PLAN 2030」とカーボンニュートラル目標を軸に、公式情報をもとに中立に分析します。
この記事の目次
01
KDDIのESG経営とは|通信を支えるもう一つの雄
まず、KDDIがどんな企業で、そのESG経営がなぜ重要なのかを整理しましょう。
つながりを、支える責任
社会の情報インフラを支えるからこそ、環境責任が重い。
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
auを展開する総合通信企業
KDDIは、携帯電話ブランド「au」などを展開する、日本の総合通信企業です。携帯電話網や固定通信、そしてデータセンターまで、社会の情報インフラを幅広く運営している。多くの人が、その通信を毎日使っている。
前回取り上げたNTTと並ぶ、通信大手の一角です。両社は競い合いながら、日本の「つながる」を支えている。そして、そのインフラを動かすには、たえず電力が必要です。だからこそ、KDDIが環境にどう向き合うかは、社会にとっても小さくない意味を持ちます。
通信インフラならではの電力課題
KDDIのESGを考えるうえで、核心となるのが電力です。全国に無数にある携帯電話の基地局、大量のデータを処理するデータセンター。これらは24時間、動き続けています。そこには、膨大な電力が必要です。
しかも、スマートフォンの普及や動画・生成AIの利用拡大で、通信量は増え続けています。通信が増えれば、それを支える電力も増えます。放っておけば、電力消費とCO2排出は膨らむ一方です。この構造的な課題にどう立ち向かうか。ここが、KDDIのESG経営の出発点になります。データセンターの電力問題は、関連記事のデータセンターの電力問題とはもあわせてご覧ください。
02
KDDI GREEN PLAN 2030|3つの柱で環境に向き合う
KDDIのESG経営の軸となる、中長期の環境計画を見ていきます。
3つの柱で、環境に向き合う
中長期の環境保全計画
気候だけでなく、資源や自然まで幅広く取り組む。
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
KDDIの環境への取り組みを束ねるのが、中長期の環境保全計画「KDDI GREEN PLAN 2030」です。もともとは「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」として策定され、その後、現在の名称に改められました。長期の視点で環境課題に臨む姿勢が、その名に表れています。
この計画は、大きく3つの柱からなります。第一に、気候変動対策、すなわち脱炭素です。第二に、サーキュラーエコノミー、つまり資源を循環させる取り組み。第三に、生物多様性の保全です。気候だけに偏らず、資源や自然まで視野に入れる。環境課題を幅広くとらえている点が、この計画の特徴になります。循環経済の考え方は、関連記事のサーキュラーエコノミーとはもあわせてご覧ください。
03
カーボンニュートラル|自社は2030年度、全体は2040年度
KDDIの脱炭素目標と、その前倒しの経緯を確認しましょう。
前倒しで、加速する
自社の削減を早め、その先の全体最適へ段階的に進む。
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
KDDIの脱炭素目標は、段階的に設定されています。まず、自社の事業活動から出るCO2(Scope1・2)を、KDDIグループ全体で2030年度に実質ゼロにする目標を掲げています。注目すべきは、その経緯です。当初は2050年度を目標としていましたが、2022年に、これを2030年度へと大きく前倒ししました。目標を、状況に応じて引き上げたのです。
そして、その先も見据えています。原材料の調達など、サプライチェーン全体(Scope3を含む)については、2040年度にネットゼロを実現することをめざしています。まず自社の排出を早く減らし、その次に、事業の外まで含めた全体の削減へと進む。段階を踏んだ計画になっています。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。
04
省エネの現場|基地局とデータセンターの工夫
高い目標を支えるのは、電力を使う現場での地道な工夫です。
現場で、電力を減らす
大きな目標を、現場の地道な工夫が支える。
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
高い目標も、それを支える現場がなければ、絵に描いた餅です。KDDIの電力消費は、その多くが基地局や通信設備、データセンターで生じます。だからこそ、これらの省エネが、脱炭素のカギを握ります。同社は、基地局や通信設備の電力効率を高めるとともに、使う電力を再生可能エネルギーへ切り替える取り組みを進めている。
とりわけ興味深いのが、データセンターの工夫です。サーバーは、動くと熱を発します。その冷却に、大量の電力を使うのが、従来の課題でした。KDDIは、サーバーを液体に浸して冷やす「液浸冷却」という技術を活用します。この方式では、冷却にかかる消費電力を大幅に削減した事例も報告されています。目標という「旗」を、現場の技術が地道に支えている。ここに、脱炭素のリアルな姿があります。
05
循環・生物多様性・グリーン投資|気候の先へ
気候変動以外の取り組みや、社会全体への貢献も見ておきましょう。
気候の、その先へ
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
KDDIの環境への取り組みは、気候だけにとどまりません。GREEN PLAN 2030の柱でもある通り、循環経済にも力を入れています。通信機器などの資源をくり返し使い、廃棄を減らす。大量の機器を扱う通信企業だからこそ、重要なテーマです。加えて、生物多様性の保全にも配慮し、事業活動が自然に与える影響を抑えようとしている。
さらに、視野は社会全体へと広がります。KDDIは、KDDI Green Partners Fundというファンドを設立しました。これは、気候変動などの課題に挑むスタートアップ企業に投資する仕組みです。カーボンニュートラルに役立つ技術やサービスを持つ企業を、資金の面から支援します。自社の排出を減らすだけでなく、投資を通じて、社会全体の脱炭素に貢献しようとする姿勢が見えます。
06
まとめ|KDDIのESG経営から学べること
KDDIの歩みは、通信インフラ企業が担う責任と、その進め方を教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。
KDDIに学ぶ、3つのこと
出典:KDDIの公表情報をもとにgreenote作成
KDDIのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。
- au を展開する総合通信企業。基地局やデータセンターは大量の電力を使う
- 中長期の環境計画「KDDI GREEN PLAN 2030」は、気候・循環・生物多様性の3本柱
- 自社排出(Scope1・2)を2030年度に実質ゼロ(2050年度から前倒し)、全体は2040年度にネットゼロ
- 基地局の省エネや再エネ化、データセンターの液浸冷却など、現場の工夫で目標を支える
- KDDI Green Partners Fundで気候課題のスタートアップに投資し、社会の脱炭素にも貢献
KDDIから学べるのは、目標は引き上げられるという事実です。自社排出の実質ゼロを、2050年度から2030年度へ。20年もの前倒しは、簡単なことではありません。それを可能にするのが、基地局やデータセンターでの地道な省エネの積み重ねです。大きな旗と、現場の工夫。その両方があってこそ、脱炭素は前に進みます。通信という社会基盤を担う企業の責任の果たし方として、学ぶべき点が多くあります。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。
FAQ
よくある質問(FAQ)
Q. KDDIとはどんな企業ですか?
KDDIは、携帯電話ブランド「au」などを展開する、日本の総合通信企業です。携帯電話網や固定通信、データセンターなど、社会の情報インフラを幅広く運営しています。NTTと並ぶ通信大手であり、その事業には大量の電力が必要になるため、脱炭素をはじめとするESGへの取り組みが、経営の重要なテーマになっています。
Q. KDDI GREEN PLAN 2030とは何ですか?
KDDI GREEN PLAN 2030は、KDDIの中長期の環境保全計画です。もともと「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」として策定され、現在の名称に改められました。大きく3つの柱からなります。1つ目は気候変動対策(脱炭素)、2つ目はサーキュラーエコノミー(循環経済)の形成、3つ目は生物多様性の保全です。気候だけでなく、資源や自然まで含めて、環境課題に幅広く取り組む計画になっています。
Q. KDDIのカーボンニュートラル目標はどうなっていますか?
KDDIは、自社の事業活動から出るCO2(Scope1・2)を、KDDIグループ全体で2030年度に実質ゼロにする目標を掲げています。当初は2050年度を目標としていましたが、2022年にこれを2030年度へと前倒ししました。さらに、原材料の調達などサプライチェーン全体(Scope3を含む)については、2040年度にネットゼロを実現することをめざしています。自社の削減を早め、その先の全体最適へと段階的に進む計画です。
Q. KDDIは省エネのために何をしていますか?
KDDIの電力消費は、その多くが携帯電話の基地局や通信設備、データセンターで生じます。そのため、これらの省エネが脱炭素のカギになります。基地局や通信設備の電力効率を高めるとともに、使う電力を再生可能エネルギーへ切り替える取り組みを進めています。とくにデータセンターでは、サーバーを液体に浸して冷やす「液浸冷却」という技術を活用し、冷却にかかる消費電力を大幅に削減した事例もあります。
Q. KDDI Green Partners Fundとは何ですか?
KDDI Green Partners Fundは、KDDIが設立した、気候変動などの課題に取り組むスタートアップ企業へ投資するファンドです。カーボンニュートラルの実現に貢献する技術やサービスを持つ企業を支援することを目的としています。自社の排出を減らすだけでなく、投資を通じて、社会全体の脱炭素に役立つ技術やビジネスを育てようとする取り組みです。
Q. KDDIのESG経営から学べることは何ですか?
大きく2つあります。1つ目は、自社排出の実質ゼロ目標を2050年度から2030年度へ前倒しするなど、目標を状況に応じて引き上げている点です。2つ目は、気候変動だけでなく、循環経済や生物多様性、さらにはグリーン投資まで、環境課題に幅広く向き合っている点です。大量の電力を使う通信インフラ企業として、省エネの現場の工夫と、大きな目標の両方を進める姿勢が参考になります。
Sources
出典・参考(一次情報)
- KDDI「脱炭素社会(サステナビリティ)」
- KDDI「CO2排出量実質ゼロを2030年度へ前倒し(2022年)」
- KDDI「中長期の環境保全計画「KDDI GREEN PLAN」を策定」
※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年7月19日