SRI(社会的責任投資)とは|歴史・手法とESG投資との違いをわかりやすく解説

2026.06.28
ESG投資

「ESG投資」という言葉は、いまやすっかり定着しています。では、その源流にあたるSRI(社会的責任投資)をご存じでしょうか。お金のもうけだけでなく、倫理や社会的責任も考えて投資する——。じつは100年近い歴史を持つこの考え方が、今日のサステナブルな投資の土台になっています。

本記事では、SRIとは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。倫理から始まった歴史、スクリーニングという手法、そして混同されやすいESG投資との違い、日本での歩みまでを順に見ていきましょう。あわせてESG投資とはを読むと、投資とサステナビリティの関係がよりクリアになるはずです。

この記事の目次

SRI(社会的責任投資)とは

まず、SRIをひとことで整理します。「お金のもうけだけでなく、社会的責任も考えて投資する」という発想から入りましょう。

SRIをひとことで言うと

SRI(社会的責任投資、Socially Responsible Investment)とは、財務的な収益だけでなく、投資先企業が倫理や社会的責任の観点で望ましいかどうかも考えて、投資先を選ぶ投資手法です。たとえば「たばこや武器をつくる会社には投資しない」「環境に配慮した会社を選ぶ」といった具合に、お金に『価値観』を持ち込むのがSRIの本質。

ふつうの投資は、リターン(もうけ)の大きさで投資先を選びます。SRIはそこに、「この会社は社会的に望ましいか」という物差しを加える。投資を通じて、よりよい社会をめざそうとする考え方だといえます。

ESG投資の「源流」

いまでは「ESG投資」のほうが広く知られていますが、SRIはそのESG投資の源流にあたる存在です。倫理的な動機から始まったSRIが、長い時間をかけて発展し、やがて企業価値の観点を取り込んだESG投資へとつながっていった——。そんな大きな流れがある。

つまりSRIを理解することは、いまのサステナブルな投資が「どこから来たのか」を知ることでもある。その歴史は、意外なほど古い。

歴史――倫理から始まった投資

SRIの始まりは、意外なほど古く、宗教的な倫理観にさかのぼります。その歩みを見ていきましょう。

倫理から始まり、ESG投資へ

1920年代
米国
宗教的な倫理観から、たばこ・酒・ギャンブル関連企業を除外(ネガティブスクリーニングの起源)
1960年代
ベトナム反戦を背景に、軍需産業への投資を問題視
1980年代
南アフリカのアパルトヘイト反対で、進出企業からの投資撤退(ダイベストメント)
2006年
国連が責任投資原則(PRI)を提唱。ESGの視点を投資へ
現在
ESG投資・責任投資・サステナブル投資へと発展

その時々の社会的・倫理的な問題意識を反映して育ってきた。

出典:公開情報をもとにgreenote作成(年代・定義には諸説あり)

起源は1920年代の宗教的倫理

SRIのルーツは、1920年代の米国にあるとされます。きっかけは、キリスト教的な倫理観でした。教会などが資産を運用する際に、たばこ・アルコール・ギャンブルといった「罪深い」とされる事業にかかわる企業を、投資先から外した

この「望ましくない企業を除外する」という考え方が、SRIの出発点になった。もうけよりも、まず「自分たちの信条に反する投資はしない」。倫理が、投資の判断基準になった最初の一歩だったといえます。

ベトナム反戦・アパルトヘイトを経て

その後SRIは、時代の社会問題を映しながら広がっていきます。1960年代には、ベトナム反戦運動の高まりを背景に、軍需産業への投資が問題視された。投資家が「戦争で利益を上げる企業には投資したくない」と声を上げたのです。

1980年代には、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)への反対から、同国に進出する企業から投資を引き揚げる動き(ダイベストメント)が世界的に広がった。このように、SRIはその時々の倫理的な問題意識を反映して育ってきた投資なのです。

手法――スクリーニングが中心

SRIで投資先を選ぶときの中心的な方法が、スクリーニング(ふるい分け)です。代表的な考え方を見ていきます。

投資先を、価値観でふるい分ける

ネガティブスクリーニング

除外する

倫理的に望ましくない業種を投資対象から外す。例:たばこ・アルコール・ギャンブル・武器・化石燃料など。SRIで最も古い代表的手法。

ポジティブ・テーマ型

選ぶ

社会や環境への貢献度が高い企業を積極的に選ぶ。再生可能エネルギーなど特定テーマに投資する手法も。

これらの考え方は、いまのESG投資にも受け継がれている

出典:公開情報をもとにgreenote作成

ネガティブスクリーニング(除外)

SRIでもっとも古く、代表的な手法がネガティブスクリーニングです。これは、倫理的に望ましくないとされる業種を、投資対象からあらかじめ除外するやり方。前述のたばこ・アルコール・ギャンブルに加え、武器、化石燃料などが除外の対象になることもある。

シンプルで分かりやすいのが特徴ですが、「何を望ましくないとするか」は、投資家の価値観や時代によって変わります。だからこそSRIは、その担い手の倫理観を映す鏡でもありました。

ポジティブ・テーマ型スクリーニング

逆に、望ましい企業を積極的に選ぶのがポジティブスクリーニングです。環境や社会への貢献度が高い企業、ガバナンスが優れた企業などを、評価して投資先に組み入れます。

さらに、再生可能エネルギーや水、教育といった特定のテーマに絞って投資する「テーマ型」もある。「除外する」だけでなく「応援したい会社を選ぶ」——。こうした前向きな選び方は、いまのESG投資やインパクト投資にも受け継がれています

ESG投資との違い

よく似た言葉に「ESG投資」があります。SRIとどう違うのか、転換点となった出来事とあわせて整理します。

出発点が違う:倫理か、企業価値か

SRIとESG投資の違い

SRI(社会的責任投資)

出発点は倫理・社会的な価値観

望ましくない企業を除外、望ましい企業を選ぶ

評価するのは一部の企業

ESG投資

出発点は中長期の企業価値・リスク

ESGへの配慮が業績に関わるという発想

原則すべての企業が評価対象

転換点 = 2006年・責任投資原則(PRI):国連が機関投資家にESGの視点を求めた → SRIからESG投資へ

SRIは源流、ESG投資はその発展形。否定し合うものではない。

出典:公開情報をもとにgreenote作成

倫理が出発点か、企業価値が出発点か

SRIとESG投資は、よく似ていますが、出発点が決定的に違います。SRIは、「倫理的に望ましいか」という価値観が出発点。望ましくない企業を外し、望ましい企業を選ぶため、評価するのは一部の企業にとどまる。

これに対しESG投資は、「ESGへの配慮が、中長期の企業価値やリスクに関わる」という発想が出発点です。倫理というより、投資のリターンを左右する要素としてESGを見る。だから、原則としてすべての企業が評価の対象になります。同じ「社会を考える投資」でも、立ち位置が異なるのです。

転換点は2006年の責任投資原則(PRI)

両者をつなぐ転換点が、2006年でした。当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が、金融業界に向けて責任投資原則(PRI、Principles for Responsible Investment)を提唱。機関投資家に対し、投資判断にESGの視点を組み込むよう求めた。

これを契機に、倫理を中心としたSRIから、企業価値を軸にESGを織り込むESG投資・責任投資へと、世界の潮流が大きく広がっていった。SRIが築いた「投資に社会的視点を持ち込む」土台の上に、より体系的なESG投資が花開いた——。そう捉えると、両者の関係がよく見えます。

日本のSRIと現在地

日本でもSRIは静かに広がってきた。その歩みと、いまの位置づけを見ていきます。

1999年のエコファンドから

日本でSRIが知られるきっかけになったのが、1999年に登場したエコファンドだとされます。環境への取り組みが優れた企業に投資する投資信託で、これが日本で初めてのSRI型金融商品の一つとされています。その後、2000年代に入って、SRIという言葉が少しずつ知られるようになりました。

当初は規模も小さく、限られた投資家のものでした。しかし、社会的な視点を投資に持ち込むという発想は、着実に根を下ろしていきます。これが、のちのESG投資の広がりへの素地になりました。

いまはESG投資・責任投資へ

現在では、「SRI」という言葉そのものは、以前ほど使われていません。代わりに主流となったのが、「ESG投資」「責任投資」「サステナブル投資」といった呼び方です。世界的にも、年金基金などの大きな機関投資家がESGを投資判断に組み込むようになり、規模は飛躍的に拡大した。

日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などがESG投資に本格的に取り組み、企業のESG情報の開示への要請も高まっています。SRIは、こうした大きな流れの出発点として、いまも意味を持ち続けています。

SRIをどう捉えるか

SRI(社会的責任投資)は、倫理や社会的責任の観点を投資に持ち込む、約100年の歴史を持つ投資の考え方です。宗教的倫理に基づくネガティブスクリーニングから始まり、ベトナム反戦やアパルトヘイトといった時代の問題を映しながら発展し、2006年の責任投資原則(PRI)を転換点に、ESG投資という大きな潮流へと受け継がれました

大切なのは、SRIを「古い言葉」と切り捨てるのではなく、「いまのサステナブルな投資が、どんな問題意識から生まれたのかを示す源流」として捉えることでしょう。倫理から始まった投資が、やがて企業価値の評価と結びつき、世界の金融を動かすほどの力になった——。その歴史を知ると、ESG投資とは何かも、より深く理解できます。

お金に、価値観を持ち込む。その素朴な問いから始まったSRIは、サステナブルファイナンスの長い物語の、最初の1ページなのです。なお本記事は、特定の投資手法や金融商品への投資を推奨するものではなく、概念と歴史を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. SRIとESG投資は、何が違うのですか?

A. 出発点が違います。SRI(社会的責任投資)は『倫理的に望ましいか』という価値観から、たばこや武器など特定の業種を除外したり、社会貢献的な企業を選んだりします。一方ESG投資は、環境・社会・ガバナンスへの配慮が『中長期の企業価値やリスク』に関わるという発想から、原則すべての企業を評価対象にします。SRIはESG投資の源流にあたり、2006年の責任投資原則(PRI)を転換点に、世界の潮流はESG投資へと広がりました。詳しくはESG投資の解説もご覧ください。

Q. SRIの「スクリーニング」とは何ですか?

A. 投資先を一定の基準でふるい分けることです。代表は『ネガティブスクリーニング』で、たばこ・アルコール・ギャンブル・武器など、倫理的に望ましくないとされる業種を投資対象から除外します。逆に、環境や社会への貢献度が高い企業を積極的に選ぶ『ポジティブスクリーニング』や、再生可能エネルギーなど特定テーマに投資する手法もあります。これらはいまのESG投資にも受け継がれています。

Q. SRIはもう使われない言葉なのですか?

A. 完全になくなったわけではありませんが、近年は『ESG投資』『責任投資』『サステナブル投資』という呼び方が主流です。SRIが倫理的な価値観を出発点にしていたのに対し、これらは企業価値やリスクの観点を重視します。SRIは、いまのサステナブルな投資につながる歴史的な源流として理解しておくと、全体像がつかみやすくなります。本記事は特定の投資手法や金融商品を推奨するものではありません。

最終更新日:2026年6月28日

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

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greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

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