オーステッド(Ørsted)のESG経営を分析|石炭から世界一の洋上風力へ

2026.07.17
サステナビリティ開示

ESG Company Analysis

電力・再エネ海外

石炭を燃やしていた会社が、わずか10年ほどで、世界一の風力発電企業に生まれ変わる。そんなことが、本当に起こったのです。デンマークのオーステッド(Ørsted)です。かつてはヨーロッパ有数の石炭火力の会社でしたが、いまや洋上風力の世界的リーダーになりました。「黒から緑」と呼ばれるこの大転換は、脱炭素の最も鮮やかな成功例として、世界中から注目されている。本記事では、その軌跡と目標、そして直面する課題までを、公式情報をもとに中立に分析します。

この記事の目次

01

オーステッドのESG経営とは|「黒から緑」への大転換

まず、オーステッドがどんな企業で、なぜ世界から注目されるのかを整理しましょう。

黒から、緑へ

かつてDONG Energy。石炭火力や石油・ガスが主力の、化石燃料集約型の電力会社
いまØrsted。世界最大級の洋上風力企業で、再生可能エネルギーが主力

2017年に社名を変更し、再エネ企業へ生まれ変わった

出典:Ørstedの公表情報をもとにgreenote作成

かつては石炭火力の会社だった

いまでこそ再生可能エネルギーの旗手ですが、オーステッドの出発点は、まったく逆でした。同社の前身は、DONG Energy(デンマーク石油天然ガス)という会社です。その名のとおり、石油やガス、そして石炭火力を主力とする、ヨーロッパでも有数の化石燃料集約型の電力会社でした。

2008年の時点では、発電と熱供給の約85%を化石燃料が占めていたとされます。二酸化炭素を大量に排出する、いわば「黒い」会社だったわけです。この事実を知ると、その後の転換がいかに劇的だったかが、よくわかります。

世界一の洋上風力企業へ

そんな会社が、いまや世界最大級の洋上風力発電の企業になりました。2017年には、電磁気を発見したデンマークの科学者ハンス・クリスティアン・エルステッドにちなみ、社名をオーステッド(Ørsted)へと変更します。石油天然ガスの名を捨て、科学者の名を掲げる。この社名変更こそが、生まれ変わりの象徴でした。

洋上風力とは、海の上に風車を建てて発電する方法です。陸上より強く安定した風が吹き、広い土地も要りません。オーステッドは、この技術に早くから賭け、開発から建設、運営までを担う世界的リーダーへと駆け上がった。洋上風力について詳しくは、関連記事の洋上風力・浮体式風力とはもあわせてご覧ください。

02

「黒から緑」の軌跡|10年でなしとげた転換

40年かかると見込まれた転換を、同社は約10年で実現しました。

40年の計画を、10年で

2008年発電・熱供給の約85%が化石燃料
2009年再エネ中心への転換を決断。当初は40年かけて比率を反転させる計画
約10年後計画をはるかに前倒しで、再エネ中心を達成

出典:Ørstedの公表情報をもとにgreenote作成

オーステッドの転換で、まず驚かされるのがそのスピードです。同社は2009年ごろ、再生可能エネルギーを中心とする会社へ生まれ変わることを決断しました。当初の計画では、化石燃料と再エネの比率を反転させるのに、およそ40年かかると見込んでいたという。

ところが実際には、この転換を約10年でなしとげてしまった。石炭からの撤退を段階的に進め、2023年には石炭事業から離れ、最後の石炭火力発電所も閉鎖へと向かいます。数十年かかると思われた変革を、その4分の1の期間で実現する。この「黒から緑(Black to Green)」の物語は、大企業でも本気になれば短期間で変われることを、世界に示した。脱炭素の全体像は、関連記事のネットゼロとはもあわせてご覧ください。

03

脱炭素目標|Scope1・2を98%削減、2040年に全体ネットゼロ

オーステッドの脱炭素目標と、その達成状況を見ていきます。

達成した目標と、次の目標

達成2025年に、事業と発電のScope1・2排出を2006年比で約98%削減。世界の電力会社で初めて、科学的根拠にもとづく2025年目標を達成
次の目標2040年に、サプライチェーン全体のScope3を含めてネットゼロ

2017年に、SBTi認定の削減目標を設定。

出典:Ørstedの公表情報をもとにgreenote作成

オーステッドの目標は、掛け声だけではありません。同社は2017年に、SBTi(科学的根拠にもとづく目標イニシアチブ)の認定を受けた、事業と発電(Scope1・2)の削減目標を設定しました。あわせて、石炭からの撤退も表明します。目標を科学の裏づけとともに掲げた点が、同社の本気度を物語ります。

そして、その成果は数字にはっきりと表れた。公表情報によれば、2025年には、Scope1・2の排出を2006年比で約98%削減し、世界の電力会社として初めて、科学的根拠にもとづく2025年の脱炭素目標を達成したとされます。さらにオーステッドは、2021年に電力会社として初めて、バリューチェーン全体(Scope1〜3)の科学的根拠にもとづくネットゼロ目標を設定した。その期限は2040年です。自社だけでなく、部材の調達などサプライチェーンまで含めて排出をゼロにする。この視野の広さが、次の挑戦になります。サプライチェーン排出の考え方は、関連記事のScope3とはもあわせてご覧ください。

04

主力事業|世界一の洋上風力と再エネ99%

転換を支えた主力事業と、いまのエネルギー構成を確認しましょう。

風を、世界の電力に

再生可能エネルギーが、発電量の約99%
洋上風力
主力・世界最大級
陸上風力
太陽光
蓄電
水素・グリーン燃料や
バイオエネルギー

1991年の世界初の洋上風力発電所から続く歩み。

出典:Ørstedの公表情報をもとにgreenote作成

オーステッドの転換を支えたのが、洋上風力という主力事業です。同社は1991年、世界初の洋上風力発電所であるデンマークのヴィンデビーにかかわった歴史を持ちます。以来、技術とともに事業を育て、いまでは開発・建設・運営を一貫して手がける世界最大級の洋上風力事業者へと成長した。

事業の柱は洋上風力ですが、それだけではありません。陸上風力や太陽光、蓄電、さらには再生可能エネルギー由来の水素やグリーン燃料、バイオエネルギーまで、幅広く手がけている。その結果、公表情報によれば、再生可能エネルギーが同社の発電量の約99%を占めるまでになりました。かつて85%が化石燃料だった会社が、いまや99%が再エネ。この数字の逆転こそ、「黒から緑」の到達点を示しています。企業の再エネ活用については、関連記事のRE100とはもあわせてご覧ください。

05

転換の現実と課題|洋上風力への逆風

華やかな転換の裏で、近年は事業環境の厳しさにも直面しています。

転換を、どう持続させるか

先進的に進んだ、脱炭素の転換

▼ 近年の逆風 ▼

資材価格や金利の上昇で、コストが増加
サプライチェーンの制約
一部地域での事業環境の変化

大胆な脱炭素と、事業としての持続性の両立が次の課題。

出典:Ørstedの公表情報および公開報道をもとにgreenote作成

ここまで見てきた転換は、たしかに鮮やかです。しかし、その足元には、目を向けるべき現実もあります。近年、洋上風力の業界全体が、厳しい逆風に直面しているからです。

背景にあるのは、資材価格や金利の上昇によるコストの増加、部材を安定して調達するうえでのサプライチェーンの制約、そして一部の地域における事業環境の変化などです。オーステッドも、こうした影響を受け、一部プロジェクトの見直しや損失計上を迫られる場面があった。脱炭素の転換それ自体は先進的に進んだ一方で、その転換を支える事業を、いかに持続的に収益化していくか。ここに、次の大きな課題があります。華やかな成功物語の裏にある、この現実的な難しさも、あわせて見ておく必要があります。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではなく、事業の評価を断定するものでもありません。

06

まとめ|オーステッドのESG経営から学べること

オーステッドの歩みは、脱炭素の可能性と、その難しさの両方を、私たちに教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。

オーステッドに学ぶ、3つのこと

事業はまるごと変えられる化石燃料の会社が、10年ほどで世界一の再エネ企業へ
早い決断と技術への投資伸びる技術に、早くから賭ける
転換の先の持続性大胆な脱炭素と、事業の収益性をどう両立するか

出典:Ørstedの公表情報をもとにgreenote作成

オーステッドのESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。

  • 前身は石炭火力中心のDONG Energy。2008年時点で発電・熱供給の約85%が化石燃料だった
  • 2009年ごろに再エネ中心への転換を決断し、当初40年計画だった変革を約10年で実現(黒から緑)
  • 2017年にSBTi認定の削減目標を設定し、2025年にScope1・2を2006年比で約98%削減(電力会社で世界初の達成)
  • 2021年に電力会社として初めて、2040年のバリューチェーン全体ネットゼロ目標を設定
  • いまや再エネが発電量の約99%。一方で、洋上風力業界は資材費や金利の上昇などの逆風にも直面

オーステッドの歩みが教えてくれるのは、事業はまるごと変えられるという希望です。化石燃料に依存していた会社が、明確な戦略と早い決断によって、10年ほどで世界一の再エネ企業へと変わりました。同時に、その転換を支える事業の持続性という、現実的な課題も見えている。大胆な脱炭素と、事業としての収益性。この両方をどう両立させるかは、オーステッドだけでなく、脱炭素をめざすすべての企業に共通する問いといえます。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

FAQ

よくある質問(FAQ)

Q. オーステッド(Ørsted)とはどんな企業ですか?

オーステッドは、デンマークを拠点とする世界最大級の洋上風力発電の企業です。もともとはDONG Energy(デンマーク石油天然ガス)という社名で、石炭火力や石油・ガスを主力とする、ヨーロッパでも有数の化石燃料集約型の電力会社でした。2017年に、電磁気を発見したデンマークの科学者ハンス・クリスティアン・エルステッドにちなんでオーステッドへ社名を変更し、再生可能エネルギー企業へと生まれ変わりました。

Q. 「黒から緑」への転換とは何ですか?

「黒から緑(Black to Green)」とは、石炭など化石燃料(黒)を主力としていた事業を、洋上風力などの再生可能エネルギー(緑)へと転換した、オーステッドの経営変革を指す言葉です。2008年時点では発電・熱供給の約85%が化石燃料でしたが、同社はこの比率を反転させることを決断しました。当初は40年かかると見込まれた転換を、実際には約10年で実現し、世界の脱炭素の代表的な成功事例として知られています。

Q. オーステッドの脱炭素目標と達成状況はどうなっていますか?

オーステッドは2017年に、SBTi(科学的根拠にもとづく目標イニシアチブ)の認定を受けた、事業と発電(Scope1・2)の削減目標を設定しました。公表情報によれば、2025年には、Scope1・2の排出を2006年比で約98%削減し、世界の電力会社で初めて科学的根拠にもとづく2025年の脱炭素目標を達成したとされています。さらに2040年には、サプライチェーン全体(Scope3を含む)でネットゼロを達成することを目標に掲げています。

Q. オーステッドの主力事業は何ですか?

オーステッドの主力は、洋上風力発電です。1991年に世界初の洋上風力発電所(デンマークのヴィンデビー)にかかわった歴史を持ち、現在は世界最大級の洋上風力の開発・建設・運営事業者になっています。あわせて、陸上風力、太陽光、蓄電、再生可能エネルギー由来の水素・グリーン燃料、バイオエネルギーなども手がけています。公表情報によれば、再生可能エネルギーが同社の発電量の約99%を占めるまでになりました。

Q. オーステッドの転換にはどんな課題がありますか?

近年、洋上風力の業界全体が、資材価格や金利の上昇、サプライチェーンの制約、一部地域での事業環境の変化など、厳しい逆風に直面しています。オーステッドも、これらの影響で一部プロジェクトの見直しや損失計上を迫られる場面がありました。脱炭素の転換それ自体は先進的に進んだ一方で、その転換を支える事業をいかに持続的に収益化していくかが、次の課題になっています。なお本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。

Q. オーステッドのESG経営から学べることは何ですか?

最大の学びは、化石燃料に依存していた企業でも、明確な戦略と決断があれば、短期間で事業をまるごと転換できるという事実です。オーステッドは、洋上風力という「これから伸びる技術」に早くから賭け、10年ほどで世界一の再エネ企業へと変わりました。一方で、その転換を支える事業の収益性という現実的な課題も見えてきています。大胆な脱炭素と、事業としての持続性をどう両立するか。オーステッドの歩みは、その両面を示しています。

Sources

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月17日

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