DE&Iとは|ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンと男女賃金差異の開示を解説

2026.06.14
ESG開示

「多様な人材が大切だ」とは、誰もが口にします。けれども、多様な人を集めるだけで、組織は本当に力を発揮できるのでしょうか。集めた多様性を活かしきれなければ、それは宝の持ち腐れです。DE&Iは、この「集める」と「活かす」の両方に答えようとする考え方です。

DE&Iとは、ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)・インクルージョン(包摂)の頭文字をとった言葉です。多様な人材が、公平な機会のもとで互いを尊重し、能力を発揮できる状態を目指します。

本記事では、DE&Iの3つの言葉の意味から、なぜ今重視されるのか、女性活躍推進法にもとづく男女賃金差異の開示など日本の制度、DE&Iが対象とする領域、そして企業に求められる対応までを、最新情報をふまえてわかりやすく解説します。

DE&Iの3つの要素

多様性を「集める」だけでなく、公平な機会で「活かす」

Diversity

ダイバーシティ
(多様性)

性別・年齢・国籍・障害・性的指向など、多様な人材が組織にいる状態。

Equity

エクイティ
(公平性)

一人ひとりの状況に応じて支援を調整し、機会を公平にする。

Inclusion

インクルージョン
(包摂)

多様な人材が受け入れられ、尊重され、能力を発揮できる。

従来のD&I(多様性+包摂)に、公平性を意味するエクイティを加えた考え方です。

出典:各種公表資料をもとに作成

目次

DE&Iとは|多様性・公平性・包摂

まずは、DE&Iという言葉を構成する3つの要素の意味と、その関係を押さえましょう。ここを理解すると、取り組みの方向性が見えてきます。

DE&Iとは

DE&Iは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンの3語から成る言葉です。もともとは、多様性と包摂を指すD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)という言葉が広く使われてきました。そこに、公平性を意味するエクイティ(Equity)が加わったのが、DE&Iです。

なぜ、エクイティが加えられたのでしょうか。多様な人材を集め、受け入れるだけでは、一人ひとりが置かれた状況の違いまでは埋まりません。その違いに目を向け、公平な機会を整える。この視点を明確にするために、エクイティが重視されるようになりました。

ダイバーシティとインクルージョンの関係

ダイバーシティとインクルージョンは、よくセットで語られますが、意味は同じではありません。ダイバーシティは、多様な人材が組織に「いる」状態を指します。性別や年齢、国籍など、属性の多様性そのものです。

一方インクルージョンは、その多様な人材が「活かされている」状態を指します。受け入れられ、意見を尊重され、能力を発揮できているか。多様性を集めるのがダイバーシティ、それを活かすのがインクルージョン。両者がそろってはじめて、多様性は組織の力になります。

エクイティ(公平性)とイクオリティ(平等)の違い

DE&Iの理解で、つまずきやすいのがエクイティ(公平性)です。これは、イクオリティ(平等)とよく混同されます。両者の違いは、DE&Iの核心といえます。

イクオリティ(平等)は、全員に同じ支援を一律に与える考え方です。これに対しエクイティ(公平性)は、一人ひとりの状況や障壁の違いを踏まえ、必要な支援を調整します。身長の違う人に同じ高さの台を配るのが平等、それぞれに合った高さの台を配るのが公平、というたとえがよく使われます。結果として同じスタートラインに立てるよう整える。それが、エクイティの考え方です。

公平性(エクイティ)と平等(イクオリティ)

DE&Iで重視されるのは「公平性」

イクオリティ(平等)

全員に、同じ支援や機会を一律に与える。

例:身長の違う人に、同じ高さの台を配る

エクイティ(公平性)

一人ひとりの状況や障壁の違いを踏まえ、必要な支援を調整する。

例:それぞれに合った高さの台を配る

違いを踏まえて支援を整え、結果として同じスタートラインに立てるようにするのが公平性です。

出典:DE&Iに関する一般的な定義をもとに作成

なぜ今DE&Iが重要なのか

DE&Iは、もはや理念にとどまりません。経営や投資の観点から、なぜ重視されるのかを整理しましょう。

人的資本経営との関係

DE&Iが注目される大きな背景にあるのが、人的資本経営の広がりです。人材を「コスト」ではなく、価値を生む「資本」と捉える考え方です。その資本の価値を最大化するうえで、多様な人材が活躍できる環境は欠かせません。

多様な人材が、それぞれの力を存分に発揮する。それは、人的資本の価値を高めることに直結します。DE&Iは、人的資本経営を支える土台のひとつです。人的資本経営の全体像は、関連記事の人的資本経営とは|人材版伊藤レポートと実践のポイントもあわせてご覧ください。

イノベーションと人材獲得

DE&Iには、具体的な経営上のメリットもあります。第一に、イノベーションです。同質な集団からは、似た発想しか生まれにくいもの。多様な視点が交わることで、新しい価値が生まれやすくなるのです。

第二に、人材の獲得と定着です。働き手が職場を選ぶ時代において、多様性を尊重する企業は、優秀な人材から選ばれやすくなります。逆に、多様性に背を向ける組織は、人材を逃しかねません。DE&Iは、持続的な競争力の源泉でもあるのです。

ESG評価・投資家の視点

DE&Iは、投資家からも注視されています。ESGの「S(社会)」の重要テーマとして、ESG評価機関は企業の多様性への取り組みを評価項目に組み込んでいます。女性管理職比率などは、その代表的な指標です。

つまり、DE&Iへの取り組みは、企業価値の評価に直接かかわります。取り組みが進んでいなければ、評価で不利になりかねません。DE&Iは、社会的な要請であると同時に、投資家との対話における重要な論点になっています。ESG評価の仕組みは、関連記事のESG評価・格付けとは|主要機関と企業の対応もあわせてご覧ください。

日本の制度と開示義務

DE&Iは、日本でも制度として後押しされています。とりわけ進む、賃金や女性活躍の開示を見ていきましょう。

男女賃金差異の開示義務と対象拡大

女性活躍推進法にもとづく公表義務が広がる

2022年7月

301人超の企業

男女の賃金差異を公表(全労働者・正規・非正規ごと/事業年度終了後おおむね3か月以内)。

2026年4月

101人以上に拡大

対象企業が大きく拡大。あわせて女性管理職比率の公表も義務化。

有価証券報告書での開示(人的資本)

女性管理職比率
男性の育休取得率
男女間賃金差異

出典:女性活躍推進法(厚生労働省)・有価証券報告書の開示制度をもとに作成

女性活躍推進法と男女賃金差異の開示

日本のDE&I政策の中心にあるのが、女性活躍推進法です。この法律にもとづき、2022年7月の省令改正で、大きな一歩が踏み出されました。常時雇用する労働者が301人以上の企業に、男女の賃金の差異の公表が義務づけられたのです。

公表は、「全労働者」「正規雇用」「非正規雇用」の区分ごとに行います。男性の賃金を100としたときの女性の割合などで示し、事業年度終了後おおむね3か月以内に公表します。賃金という、これまで見えにくかった格差を数値で開示させる。実効性のある制度として注目されました。

2026年4月の対象拡大

この開示義務は、さらに強化されます。2025年の法改正により、2026年4月1日から対象が大きく広がります。これまで301人以上だった対象企業が、常時雇用労働者101人以上へと拡大されるのです。

加えて、男女の賃金差異だけでなく、女性管理職比率の公表も義務化されます。より多くの企業が、より多面的な情報を開示していきます。中堅・中小企業にとっても、DE&Iと開示は、もはや他人事ではありません。対応の準備が求められています。

有価証券報告書での開示

開示の動きは、有価証券報告書にも及びます。上場企業などの有価証券報告書では、人的資本に関する情報として、女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間の賃金差異の開示が求められます。

これにより、投資家は企業のDE&Iの実態を、財務情報と並べて確認できるようになりました。サステナビリティ開示の一環として、DE&Iの数値が定着しつつあります。有価証券報告書での開示の全体像は、関連記事の有価証券報告書のサステナビリティ開示とは|記載内容と義務化もあわせてご覧ください。

DE&Iの主な領域

DE&Iが対象とする多様性は、性別だけではありません。主な領域を押さえましょう。

ジェンダーと女性活躍

最も取り組みが進んでいるのが、ジェンダー、とりわけ女性活躍の領域です。女性管理職比率の向上や、男女の賃金格差の是正、男性の育児休業取得の促進などが、具体的なテーマです。

日本は、諸外国に比べてジェンダーギャップが大きいと指摘されてきました。だからこそ、女性活躍推進法をはじめとする制度で、重点的に後押しされています。多くの企業にとって、まず着手すべき領域といえます。

障害者雇用と法定雇用率

障害の有無も、DE&Iの重要な領域です。障害者雇用促進法は、企業に一定割合以上の障害者雇用を求める法定雇用率を定めています。この雇用率は、段階的に引き上げられてきました。

民間企業の法定雇用率は、2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へと引き上げられる予定です。対象となる企業の範囲も広がっています。単に雇用率を満たすだけでなく、障害のある人が活躍できる環境を整えることが、本来のDE&Iの姿です。

国籍・世代・LGBTQなど

DE&Iが対象とする多様性は、さらに広がります。国籍や民族、世代の違い、性的指向・性自認(LGBTQ)、育児や介護との両立、価値観の多様性なども含まれます。

これらはいずれも、一律の対応では活かしきれません。それぞれの事情に応じた、きめ細かな配慮が求められます。性別や障害にとどまらず、あらゆる属性や事情を持つ人材が活躍できる組織を目指す。それが、DE&Iが描く全体像です。

企業に求められる対応

DE&Iを掛け声で終わらせないために、企業は何をすべきでしょうか。実務のポイントを整理します。

数値目標とKPIの設定

出発点となるのが、数値目標とKPIの設定です。女性管理職比率や男女賃金差異、障害者雇用率など、測れる指標を定め、現状と目標を明らかにします。測定できなければ、進捗も管理できません。

ただし、数値の達成だけを追うと、形式的な取り組みに陥る危険もあります。なぜその目標を目指すのか。目的を見失わないことが大切です。数値は、あくまで実態を映し、改善を促すための道具として活かします。

制度だけでなく風土へ

DE&Iの成否を分けるのは、制度よりも風土です。育児休業や多様な働き方の制度を整えても、それを使いにくい空気があれば、絵に描いた餅になります。多様な人材が安心して意見を言え、力を発揮できるか。問われるのは、職場の文化です。

ここで鍵を握るのが、インクルージョンです。多様性を「集める」制度から、それを「活かす」風土へ。一人ひとりが尊重され、当事者意識を持って関わる組織文化を育てることが、DE&Iを本物にします。

開示と情報発信

最後に、取り組みの開示と情報発信です。前述のとおり、男女賃金差異や女性管理職比率などの開示は、もはや義務です。求められた数値を、正確に開示することが土台になります。

そのうえで、自社の考え方や取り組み、課題をストーリーとして発信することが効果的です。投資家や求職者は、数値の背景にある姿勢を見ています。開示を、対話と改善の起点として活かす。その姿勢が、DE&Iへの信頼を育てます。サステナビリティ経営の全体像は、関連記事のサステナビリティ経営とは|ESGを統合する考え方と進め方もあわせてご覧ください。

まとめ|多様性を成果につなげる

DE&Iは、多様な人材が公平な機会のもとで活躍できる状態を目指す考え方です。最後に、要点を振り返りましょう。

  • DE&Iとは、ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)・インクルージョン(包摂)の3つからなり、多様性を「集める」だけでなく「活かす」ことを目指す
  • エクイティ(公平性)は、全員一律のイクオリティ(平等)と異なり、一人ひとりの状況に応じて機会を整える考え方である
  • DE&Iは人的資本経営の土台であり、イノベーション・人材獲得・ESG評価の観点からも重視される
  • 日本では男女の賃金差異の開示が義務化され、2026年4月から対象が101人以上へ拡大、女性管理職比率の公表も義務に。有価証券報告書での開示も進む
  • 企業に求められるのは、KPI設定にとどまらず、制度から風土へ踏み込み、開示を対話と改善につなげること

DE&Iは、多様性を集めることがゴールではありません。多様な人材が、公平な機会のもとで力を発揮し、それが組織の成果につながってこそ、意味を持ちます。制度を整え、風土を育て、開示で対話する。その積み重ねが、多様性を真の競争力へと変えていきます。ESG・サステナビリティの全体像はESGとは|意味・E/S/G・情報開示・投資まで完全ガイドもあわせてご覧ください。greenoteでは、ESG・サステナビリティ開示の実務情報を、これからもお届けしていきます。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

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サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月20日

この記事の著者

greenote編集部

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