ESG Company Analysis
わたしたちが毎日を過ごすビルや住まい。その建物は、つくる時にも、使う時にも、たくさんのCO2を生み出します。だからこそ、建物をつくる建設会社の脱炭素は、社会全体に大きな影響を与えます。大手ゼネコンの清水建設は、「Beyond Zero(ゼロを超えて)」という言葉を掲げ、この課題に挑んでいます。ゼロにするだけでなく、その先へ。本記事では、清水建設のESG経営を、Beyond Zeroと施工・ZEBを軸に、公式情報をもとに中立に分析していきます。
この記事の目次
01
清水建設のESG経営とは|大手ゼネコンの環境経営
まず、清水建設がどんな会社で、なぜ建設会社のESGが重要なのかを整理しましょう。
建物から、社会を脱炭素へ
建物を通じて、社会全体の脱炭素に関わる。
出典:清水建設の公表情報をもとにgreenote作成
SHIMZ Beyond Zero 2050
清水建設は、日本を代表する大手ゼネコン(総合建設会社)のひとつです。ゼネコンは、ビルや工場、インフラなどの設計から施工までを一括して手がけます。この会社が掲げるのが、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」です。2021年に策定されました。
このビジョンでは、2050年に向けて、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」という3つの社会の実現をめざします。環境への取り組みを、単なる守りのコストではなく、企業の成長の機会ととらえる。そうした前向きな姿勢が、この環境経営の土台になっています。
建物のCO2は「使う時」と「つくる時」
建設会社の脱炭素を理解する鍵は、建物のCO2が二つの段階で生まれる、という点にあります。ひとつは、建物が完成して人が使う時です。冷暖房や照明などで、日々エネルギーを消費します。もうひとつは、建物をつくる時です。工事現場で重機を動かし、資材を運ぶ過程でも、CO2が発生するのです。
このうち「つくる時」に材料の製造まで含めて出るCO2は、エンボディドカーボン(内包炭素)とも呼ばれます。清水建設は、この「つくる時」と「使う時」の両面から、脱炭素に取り組んでいます。どちらか一方では、建物の本当の脱炭素は実現しません。両輪で進めることが欠かせないのです。
02
Beyond Zero|ゼロを超えて社会にプラスの価値
清水建設のビジョンを象徴する、独特の考え方です。
ゼロにして、さらにその先へ
脱炭素を守りのコストではなく、成長の機会ととらえる。
出典:清水建設の公表情報をもとにgreenote作成
ビジョンの名前にある「Beyond Zero(ゼロを超えて)」には、清水建設らしい考え方が込められています。多くの企業は、自社が出すCO2などの負の影響をゼロにすることを目標に掲げます。もちろん、それも大切なゴールです。しかし清水建設は、その先を見ています。
ゼロにするだけで、終わりにしない。ゼロを超えて、顧客や社会に「プラスの環境価値」を提供する。これがBeyond Zeroの発想です。たとえば、省エネ性能の高い建物を世に送り出せば、その建物を使う人々のCO2を減らせます。つまり、清水建設は脱炭素を、我慢を強いる守りのコストではなく、社会に価値を届ける成長の機会ととらえているのだといえるでしょう。この前向きな姿勢が、同社の環境経営を貫いています。
03
つくる時の脱炭素|施工現場のCO2を減らす
建設会社ならではの、現場での取り組みを見ていきます。
現場から、CO2を減らす
さらに施工時のCO2をはかるモニタリングシステムを全建設現場に展開。
出典:清水建設の公表情報をもとにgreenote作成
まず「つくる時」、すなわち施工現場(作業所)のCO2削減を見てみましょう。建設現場では、多くの重機を動かし、大量の電力を使うため、どうしてもCO2が発生します。清水建設は、ここに4つの方向から取り組んでいます。エネルギー生産性の向上、重機の電動化(軽油から電力へ)、燃料の脱炭素化、そして再エネ由来電力の利用です。重機の電動化については、脱炭素の基礎となる考え方をまとめた関連記事の電化とはもあわせてご覧ください。
特徴的なのが、施工時のCO2排出を「見える化」する取り組みです。清水建設は、施工時のCO2排出量をはかるモニタリングシステムを、全建設現場に展開しています。減らすには、まず正しくはかることが第一歩になります。どの現場で、どれだけCO2が出ているのかを把握することで、対策の効果を確かめ、次の改善につなげられるわけです。地道ですが、着実な一歩だといえます。
04
使う時の脱炭素|ZEBという答え
建物が完成した後の、エネルギーの問題に向き合います。
使うエネルギーを、実質ゼロへ
両者を組み合わせ、建物が使う一次エネルギーを実質ゼロに近づける。清水建設は2013年に日本初の完全オフグリッドZEBを実現。
出典:清水建設の公表情報をもとにgreenote作成
次に「使う時」の脱炭素です。その答えのひとつが、ZEB(ゼブ)になります。ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略で、高い省エネ性能と、太陽光などで電気をつくる創エネを組み合わせ、建物が使う一次エネルギーを実質ゼロに近づけた建物を指します。
清水建設は、このZEBで先進的な実績を持ちます。2013年には、日本で初めての完全オフグリッドZEB「生長の家 森の中のオフィス」を実現しました。電力会社の送電網につながず、自前のエネルギーだけで運営する建物です。近年では、AIを活用してZEBの提案を支援する設計ツールも開発しました。計画の初期段階から、顧客のニーズに合ったZEBを、すばやく提案できるようにする狙いです。建物を「使う時」のCO2を、設計の力で減らそうとしているのだといえます。省エネと創エネの考え方は、関連記事のカーボンニュートラルとはもあわせてご覧ください。
05
大成建設との対比|同じゼネコンの環境戦略
大手ゼネコンの中でも、環境への向き合い方はさまざまです。
同じゼネコンでも、力点は違う
アプローチの違いであり、優劣ではない。
出典:各社の公表情報をもとにgreenote作成
同じ大手ゼネコンでも、環境への道は一つではありません。ここで、大成建設と比べてみましょう。両社に共通するのは、2050年のカーボンニュートラルをめざす点、そして建物を「つくる時」と「使う時」の両面から脱炭素に取り組む点です。ゼネコンとして向き合う課題は、よく似ています。
一方で、力点の置き方には、それぞれの個性が表れます。清水建設は、「Beyond Zero」という価値提供の思想や、ZEB、施工現場のCO2モニタリングを前面に出します。これに対し大成建設は、環境配慮コンクリートなど、「つくる時」の材料技術に強みを示します。どちらが優れているという話ではありません。同じゴールへ、それぞれの得意技で向かっているのです。複数の会社を並べて見ることで、業界全体の動きが立体的に見えてきます。なお本記事は、特定の企業や投資を推奨するものではありません。
人的資本と多様性(S)|「2030年に管理職女性比率10%」の建設現場改革
清水建設は、2030年に管理職の女性比率10%という目標を掲げ、建設業界の女性活躍のロールモデルを目指しているとされます。女性技術者の現場配置や両立支援の整備など、ゼネコンならではの構造課題に正面から取り組む姿勢です。
建設業は他産業に比べ女性比率が低く、目標値も一見控えめに見えますが、現場勤務が中心の業態での10%は大きな変化です。業界特性を踏まえてDE&Iを評価する好例といえます。
ガバナンス(G)|「子どもたちに誇れるしごとを。」の統治
社是「論語と算盤」(渋沢栄一ゆかり)を掲げる同社は、倫理と事業の両立を統治の軸に置いています。社外取締役を交えた取締役会が、大型建設プロジェクトの受注・施工リスクを監督する体制とされます。
談合など業界の歴史的課題を踏まえれば、コンプライアンスと問題を言い出せる組織風土こそが、ゼネコンのGの核心です。
06
まとめ|清水建設のESG経営から学べること
清水建設の歩みは、建物という長く残るものを通じて、未来への責任を果たそうとする姿勢を教えてくれます。最後に、要点を振り返りましょう。
清水建設に学ぶ、3つのこと
出典:清水建設の公表情報をもとにgreenote作成
清水建設のESG経営を振り返ると、いくつもの学びが見えてきます。
- 日本を代表する大手ゼネコン。環境ビジョンは「SHIMZ Beyond Zero 2050」(脱炭素・資源循環・自然共生の3社会)
- Beyond Zero=ゼロを超えて、顧客や社会にプラスの環境価値を提供する前向きな発想
- つくる時=施工現場のCO2を、重機の電動化などで削減し、全現場でモニタリング
- 使う時=ZEBで対応。2013年に日本初の完全オフグリッドZEBを実現、AI設計ツールも開発
- 大成建設とは力点が異なる=同じゴールへそれぞれの得意技で向かう(優劣ではない)
清水建設から学べるのは、脱炭素を「守り」ではなく「価値の提供」ととらえる発想です。ゼロにするだけでなく、その先で社会に何を届けられるか。この問いは、多くの企業にとってヒントになります。建物は、いちど建てれば何十年も社会に残ります。だからこそ、つくる時と使う時の両面から、地道にCO2を減らす取り組みが、将来にわたって効いてくるのです。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。
FAQ
よくある質問(FAQ)
Q. 清水建設とはどんな会社ですか?
清水建設は、日本を代表する大手ゼネコン(総合建設会社)のひとつです。ゼネコンは、ビルや工場、インフラなどの設計から施工までを一括して手がけます。建物は、つくる時にも使う時にも多くのCO2を出すため、建設会社のESG経営は、社会全体の脱炭素に大きく関わります。清水建設は、グループ環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」を掲げ、脱炭素に取り組んでいます。
Q. SHIMZ Beyond Zero 2050とは何ですか?
SHIMZ Beyond Zero 2050は、清水建設グループが2021年に策定した環境ビジョンです。2050年に向けて、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」の3つの実現をめざします。特徴は、その名の「Beyond Zero(ゼロを超えて)」という考え方にあります。自社の負の影響をゼロにするだけでなく、その先で顧客や社会にプラスの環境価値を提供していく、という積極的な姿勢を示しています。
Q. 「つくる時」の脱炭素とは何ですか?
建物が完成するまでの、施工現場(作業所)で出るCO2を減らす取り組みを指します。建設現場では、多くの重機や電力を使うため、CO2が発生します。清水建設は、エネルギー生産性の向上、重機の電動化(軽油から電力へ)、燃料の脱炭素化、再エネ由来電力の利用などに取り組んでいます。さらに、施工時のCO2排出をはかるモニタリングシステムを、全建設現場に展開しています。
Q. ZEBとは何ですか?
ZEB(ゼブ)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略です。高い省エネ性能と、太陽光などの創エネを組み合わせ、建物が消費する一次エネルギーを実質ゼロに近づけた建物を指します。これは建物を「使う時」の脱炭素の答えのひとつです。清水建設は、2013年に日本で初めての完全オフグリッドZEB「生長の家 森の中のオフィス」を実現しました。近年は、AIを活用してZEBの提案を支援する設計ツールも開発しています。
Q. 清水建設と大成建設のESG経営は何が違いますか?
両社とも大手ゼネコンで、2050年のカーボンニュートラルをめざす点は共通します。建物の「つくる時」と「使う時」の両面で脱炭素に取り組む点も同じです。違いは力点の置き方に表れます。清水建設は「Beyond Zero(ゼロを超える)」という価値提供の思想やZEB、施工現場のCO2モニタリングを前面に出します。一方の大成建設は、環境配慮コンクリートなど「つくる時」の材料技術に強みを示します。どちらが優れているという話ではなく、アプローチの違いです。
Q. 清水建設のESG経営から学べることは何ですか?
大きく2つあります。1つ目は、「Beyond Zero」のように、脱炭素を守りではなく、社会に価値を提供する成長の機会ととらえる発想です。2つ目は、建物を「つくる時」と「使う時」の両面から、地道にCO2を減らす姿勢です。建設会社は、社会にたくさんの建物を残すため、その脱炭素は将来にわたって影響します。なお本記事は特定の投資を推奨するものではありません。
Sources
出典・参考(一次情報)
- 清水建設「サステナビリティ」
- 清水建設「脱炭素(環境パフォーマンス)」
- 清水建設「SHIMZ Beyond Zero 2050」
※ 本記事は上記の一次情報および公開報道をもとにgreenote編集部が整理しています。企業評価や投資判断を目的とするものではありません。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年7月20日