生物多様性の世論調査2026とは|行動に移せない42%

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「生物多様性」という言葉の意味を知っていた人は38.3%——内閣府が2026年9月25日に公表した最新の世論調査(速報)で、こんな結果が出ました。前回調査(2022年)の29.4%から、8.9ポイントの上昇です。認知は広がっている。ところが、同じ調査で目を引くのが、もう一つの数字です。「取り組みたい行動はあるが、行動に移せてはいない」と答えた人が、42.7%にのぼりました。前回の33.7%から、9ポイントも増えています。

関心はある。知識も増えた。けれど、行動は追いついていない——この「知る」と「する」のギャップは、生物多様性に配慮した商品やサービスを企業がどう伝えるべきかを考えるうえで、重要な手がかりになります。本記事では、内閣府の調査結果を一次情報として、生活者の意識と行動の実態、そして企業のコミュニケーションが向き合うべき課題を整理します。

※本記事のデータは、内閣府政府広報室が2026年9月25日に公表した「生物多様性に関する世論調査(速報)」(令和8年7月30日〜9月6日実施・有効回収数1,503人)にもとづきます。速報値であり、属性別のクロス集計等は確報段階で公表される予定です。

この記事の目次

内閣府「生物多様性に関する世論調査」とは

この調査は、内閣府政府広報室が生物多様性に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするために実施しているものです。今回は全国18歳以上の3,000人を対象に郵送法で実施し、1,503人(回収率50.1%)から回答を得ました。調査期間は2026年7月30日〜9月6日で、今回公表されたのは速報値です。比較対象として、前回の2022年7月調査の結果もあわせて示されています。

読み方の注意も添えておきます。今回の数字は速報値であり、年代別・性別などの属性別クロス集計は確報段階で公表される予定です。「どの層で行動ギャップが大きいのか」といった一歩踏み込んだ分析は、確報を待つ必要があります。また、世論調査の回答には「望ましいとされる答えを選びやすい」傾向が一般に指摘されるため、購買意向のような前向きな回答は、実際の売場での行動より高めに出ている可能性も念頭に置いて読むのが安全です。それでも、同じ設計の調査を時点を変えて比較できるのが政府世論調査の強みで、本記事もこの「前回からの変化」を軸に読み解いていきます。

認知度は8.9ポイント上昇、38.3%が「知っていた」

調査では、「生物多様性」という言葉の意味を知っていたかを尋ねています。結果は、「言葉の意味を知っていた」が38.3%(2022年29.4%から+8.9ポイント)、「意味は知らないが、言葉は聞いたことがあった」が35.4%、「聞いたこともなかった」が25.9%(2022年26.5%からやや減少)でした。言葉を見聞きしたことがある人は合計で7割を超えており、この数年で認知が着実に広がっていることがうかがえます。

この伸びの意味を考えてみます。専門用語だった言葉の認知が4年で約9ポイント動くのは、小さな変化ではありません。学校教育やメディア、企業の発信など、複数の経路で言葉に触れる機会が積み上がってきた結果と読めます。企業のコミュニケーションにとって重要なのは、「生物多様性とは何か」の説明から始めなくても通じる相手が、もう多数派に近づいているということです。説明のコストが下がった分、次の課題は「で、私は何をすればいいのか」に答えることに移っています。

「行動に移せていない」が42.7%に急増

一方で、調査が示すもう一つの顔があります。生物多様性の保全に貢献する行動について、「取り組みたい行動はあるが、行動に移せてはいない」と答えた人が42.7%——2022年調査の33.7%から9.0ポイント増加しました。「取り組みたいとは思わない」も12.0%あり、実際に取り組んでいる行動の内訳を見ても、最も多い「生物や自然環境に負荷の少ない商品を選んで買う」が24.0%にとどまっています。関心と知識が広がった一方で、「意欲はあるが行動に結びつかない」という層が、むしろ拡大しているのが今回調査の特徴です。

実際に取り組んでいる行動の最多が「生物や自然環境に負荷の少ない商品を選んで買う」(24.0%)だという点も見逃せません。寄付やボランティアのような特別な行動ではなく、買い物という日常の接点が、生活者にとって最も現実的な参加の形になっているということです。裏を返せば、行動に移せていない42.7%の多くにとっても、最初の一歩になりやすいのは購買行動であり、そこでの選びやすさが行動ギャップを埋める鍵を握っていると読めます。

商品・サービス選択時、46.8%が「意識していない」

商品・サービスを選ぶ際に生物多様性への影響を意識しているかを尋ねた質問では、「意識していない」が46.8%と、選択肢の中で最も高い割合になりました。意識している人の中では、「生物多様性に配慮した農法や漁法でとれた米や魚などの農林水産物を選択」(22.9%)、「旅行の際に訪問先の自然環境への影響を意識」(22.4%)が上位です。「生物多様性に配慮している企業の商品を選択するようにしている」は11.4%でした。

内訳の順位にも意味があります。上位に来た「農林水産物の選択」と「旅行先での意識」は、いずれも自然との距離が近い生活場面です。食べ物や旅先の風景であれば生物多様性とのつながりを想像しやすい一方、工業製品や日用品ではつながりが見えにくい——という生活者の実感が、そのまま数字に表れていると読めます。「配慮している企業の商品を選ぶ」が11.4%にとどまっているのは、企業の取り組みが生活者から見えるところまで届いていないことの表れでもあります。

2030年30%保全目標への貢献意向

調査は、2022年12月に採択された世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(2030年までに世界の陸と海の30%を保全・保護する目標、いわゆる30by30)についても質問しています。生物多様性枠組みとはで扱ったこの目標への貢献方法として、「保全・保護活動を実施しているエリアで収穫された農作物などを購入したい」が45.1%、「保全・保護活動に熱心な企業の製品やサービスを積極的に購入・利用したい」が39.5%と、いずれも4割前後の支持を集めています。「特に貢献したいとは思わない」は19.3%でした。

「貢献したいとは思わない」が2割弱にとどまるということは、裏を返せば約8割は、何らかの形でこの世界目標への貢献に前向きだということです。しかも支持を集めた貢献方法の上位2つは、いずれも「買う」という行動でした。保全活動への直接参加や寄付よりも、日々の購買を通じた参加のほうが、生活者にとって現実的な選択肢になっている——この構図は、前章までに見た行動の内訳とも一致しています。

主要な数字まとめ|2022年調査との比較

ここまでの数字を一覧に整理します。変化の方向がひと目で分かるはずです。

項目 今回(2026年) 前回(2022年)
「言葉の意味を知っていた」 38.3% 29.4%
「聞いたこともなかった」 25.9% 26.5%
「取り組みたいが行動に移せていない」 42.7% 33.7%
商品選択時に「意識していない」 46.8% ―
「保全に熱心な企業の製品を購入・利用したい」 39.5% ―
出典:内閣府「生物多様性に関する世論調査」(令和8年7月調査・速報)をもとにgreenote作成。「―」は本記事で参照した速報資料に前回比較の記載がない項目

上の2行(認知)は改善し、3行目(行動ギャップ)は悪化——この非対称が、今回調査のいちばんの読みどころです。認知を上げる施策は効いたが、行動につなげる仕掛けはまだ社会に足りていない、と要約できます。

企業にとっての意味|「知ってもらう」から「選んでもらう」へ

この調査結果を企業のコミュニケーションという視点で読むと、示唆は明確です。生物多様性という言葉自体の認知はもはや課題ではなく、「配慮している企業の商品を、実際にどう見分けて選んでもらうか」という、購買の入口の設計が課題になっているということです。「意識していない」46.8%という数字は、悲観すべき数字というより、まだ手つかずの伸びしろと捉えることもできます。ただし、グリーンウォッシュとはやグリーンクレーム規制で扱ったとおり、根拠の薄い環境訴求は規律の対象になりつつあります。「配慮している」と伝える際は、TNFDの開示フレームワークのような、裏付けのある枠組みに沿った発信が求められます。

もう一つ、この調査をB2Bの文脈で読むこともできます。生活者の認知が7割を超えた概念は、遅かれ早かれ取引先や投資家の質問項目にも入ってきます。実際、生物多様性は投資家向けの開示枠組み(TNFD)が整備され、サプライチェーン上の要請として組み込まれ始めている領域です。消費者向けの商品訴求だけでなく、取引先からの調達アンケートや投資家対話で「生物多様性への対応」を問われたときに答えられる状態を作っておくことも、この調査結果が示す認知拡大の、企業側での受け止め方の一つです。

調査結果から導ける3つの打ち手

調査の数字を、企業の実務に翻訳すると何ができるか。3つに整理します。

「配慮」を購買の接点で見分けられる形にする

「意識していない」46.8%の層は、生物多様性への配慮を探してまでは選ばない層です。一方で「保全に熱心な企業の製品を買いたい」という意向は39.5%あります。この2つの数字をつなぐのは、探さなくても分かる表示です。第三者認証のエコラベル(ISO14024型)や、根拠を短く添えた表示を、商品・売場・ECの購買接点そのものに置くことが、意向を行動に変える最短の経路になります。

社内にも同じギャップがあると考える

「取り組みたいが行動に移せていない」42.7%という構図は、おそらく社内にもそのまま存在します。生物多様性への配慮を商品に組み込むのは、マーケティング部門ではなく調達・開発部門です。「配慮した商品を作ろう」という掛け声を、原材料の選び方や仕様書の項目といった現場の言葉に翻訳する社内コミュニケーション(ISO14063が扱う領域です)がなければ、社外に発信できるものは生まれません。

裏付けをそろえてから語る

認知が広がるほど、発信への視線も厳しくなります。グリーンウォッシュと指摘されない発信の条件は、結局のところ「問われたら根拠を出せる」ことに尽きます。生物多様性枠組みの30by30やTNFDのような公式の枠組みに自社の取り組みを紐づけておくと、発信の根拠と開示の一貫性を同時に確保できます。順序としては、裏付けの整備が先、訴求が後です。

まとめ

内閣府の最新調査によれば、「生物多様性」という言葉の認知度は38.3%(前回比+8.9ポイント)まで上昇しました。一方で、「取り組みたい行動はあるが行動に移せていない」人は42.7%(前回比+9.0ポイント)に増加し、商品選択時に生物多様性を意識していない人も46.8%にのぼります。それでも、2030年の保全目標に「保全に熱心な企業の商品を買いたい」と答えた人は39.5%存在します。関心と知識は広がっているのに行動に結びついていないという構図は、企業にとって、根拠のある発信を通じて「選んでもらう」機会が残されていることを示しています。

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出典・参考資料(一次情報)

リンク先は2026年9月時点で確認した各機関の公開情報です。最新は各公式情報をご確認ください。

内閣府:
「生物多様性に関する世論調査」(令和8年7月調査・速報)

よくある質問(FAQ)

Q. 「生物多様性」という言葉の認知度はどのくらいですか?

A. 内閣府の2026年9月公表調査(速報)によれば、「言葉の意味を知っていた」と答えた人は38.3%で、2022年調査の29.4%から8.9ポイント上昇しました。言葉を見聞きしたことがある人(意味を知っていた+聞いたことはあった)を合わせると7割を超えます。

Q. なぜ「行動に移せていない」人が増えているのですか?

A. 調査結果からは明確な理由は分かりませんが、認知度の上昇(+8.9ポイント)と「行動に移せていない」人の増加(+9.0ポイント)がほぼ同じ規模で起きている点が注目されます。関心・知識の広がりが、必ずしも具体的な行動の増加には直結していないことがうかがえます。

Q. この調査結果は企業のマーケティングにどう活かせますか?

A. 商品・サービス選択時に生物多様性を「意識していない」人が46.8%と最多である一方、2030年の保全目標に「保全に熱心な企業の商品を買いたい」と答えた人は39.5%存在します。認知は広がっているため、根拠のある分かりやすい発信によって、まだ意識していない層に選択肢として認識してもらう余地があるといえます。

Q. 「30by30」とは何ですか?

A. 2022年12月に採択された世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に含まれる、2030年までに世界の陸と海の30%を保全・保護するという目標です。今回の内閣府調査では、この目標への貢献方法として「保全・保護活動に熱心な企業の製品やサービスを積極的に購入・利用したい」と答えた人が39.5%にのぼりました。

Q. この世論調査はどのように実施されたものですか?

A. 内閣府政府広報室が、全国18歳以上の3,000人を対象に郵送法で実施し、1,503人(回収率50.1%)から回答を得たものです。調査期間は2026年7月30日〜9月6日で、公表されているのは速報値です。属性別のクロス集計などの詳細は、確報段階で公表される予定です。

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