GAFAM(Google・Apple・Meta・Microsoft)のカーボンクレジット戦略は、いま大きく変化しています。安価な「排出相殺」を大量に買う方向ではなく、高品質な炭素除去(カーボンリムーバル)を、長期契約で確保する方向へ。本記事では、4社の炭素除去戦略を比較します。
※本記事は各社が2024〜2025年に公表した環境報告書等に基づく解説です。数値は時点により変わります。最新は各社の一次情報をご確認ください。
この記事の目次
前提:証書・クレジット・除去オフテイクは別物
混同しやすい3つの概念を整理します。
- 再エネ証書(EAC/REC):電力の環境価値を主張するためのもの。
- カーボンクレジット:排出削減・吸収の成果をトン単位で表すもの。
- 炭素除去オフテイク:将来の除去クレジットを長期契約で買い支えるもの。
GAFAMの現在の特徴は、実際に除去済みか・追加性・永続性・MRV(測定・報告・検証)を重視している点です。「まず削減、クレジットは補完」というSBTの原則が共通の土台になっています。
Google:相殺より「除去市場の形成」を優先
Google 2025 Environmental Reportによると、Googleは2024年に16件・1億ドル超・約72.8万トン分の炭素除去オフテイクを締結し、累計ポートフォリオは約78.2万トンに達しました。対象にはバイオマス炭素除去・貯留、直接空気回収(DAC)、岩石風化、自然由来シンクなどが含まれます。一方、2024年時点では炭素除去クレジットを自社の排出インベントリに適用しておらず、2030年から適用開始する方針です。つまり「いま相殺する」のではなく「2030年のネットゼロに向けて高品質な除去供給を先に押さえる」先行投資型の動きといえます。
Apple:削減優先、残余のみ高品質除去
Appleは2030年までに2015年比75%削減を行い、残余排出のみを高品質な炭素除去でバランスする方針です(2025年時点で60%超を削減済み)。クレジットでフットプリント全体を穴埋めするのは適切ではなく、まず実削減を行うべきだと明言しています。Restore Fundでは自然由来の除去を重視し、将来予測に基づくex-ante(事前)クレジットではなく、すでにCO2を除去したex-post(事後)クレジットのみを受け入れるとし、追加性・リーケージ・永続性・第三者検証・リモートセンシングなどで品質を管理しています。
Meta:少量の適用と、自然由来除去の共同市場形成
Metaは2024年に5万トン分の炭素除去クレジットを適用しました。排出規模に比べると適用量はまだ小さいものの、Symbiosis Coalitionを通じて2030年までに最大2,000万トンの自然由来炭素除去クレジットの開発を支援しています。短期の大量相殺ではなく、共同購買によって自然由来除去の市場を育てる方向で、AppleのRestore Fundと近い位置づけです。
Microsoft:現在の中立維持と、将来のカーボンネガティブ
MicrosoftはFY24(2024年6月期)に、カーボンニュートラル境界内の排出59.6万トンに対し同量のクレジットを適用しました。さらにFY24時点で契約済みの炭素除去クレジットは累計2,192万トン超に達しています。クレジットの適用は引き渡し・償却済みであることを重視。短期はカーボンニュートラルを維持しつつ、2030年のカーボンネガティブ、2050年の歴史的排出除去に向けて、4社で最も大規模かつ制度的に炭素除去を組み込んでいます。
- Google:2024年に約72.8万トン契約。インベントリ適用は2030年から。
- Apple:実削減75%優先+残余のみex-post除去。
- Meta:2024年に5万トン適用。最大2,000万トンの自然由来除去を共同支援。
- Microsoft:契約済み累計2,192万トン超。引き渡し・償却済みを重視。
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まとめ
GAFAM4社はいずれも、将来のネットゼロ・カーボンネガティブに炭素除去が必要だと見ています。ただし共通するのは「安価な相殺で帳消し」ではなく、実際に除去済みか・追加性・永続性・MRVを重視する姿勢です。Googleは将来の除去供給を先に押さえ、Appleは残余のみをex-post除去で処理し、Metaは自然由来除去の市場を共同で育て、Microsoftは大規模な除去ポートフォリオを構築しています。グリーンウォッシュ批判が強まるなか、クレジットの「質」が問われる時代になっています。
出典・参考資料(一次情報)
リンク先は2026年6月時点で確認した各社の公開情報です。数値・目標・要件は時点により変わります。最新は各社公式情報をご確認ください。
各社の環境・サステナビリティ報告書: Google「2025 Environmental Report」/ Apple「Carbon Removal Strategy」「Restore Fund」/ Meta「2025 Sustainability Report」/ Microsoft「2025 Environmental Data Fact Sheet(FY24)」「Criteria for High-Quality CDR」
関連イニシアチブ: Symbiosis Coalition(自然由来除去)
よくある質問(FAQ)
Q. GAFAMはなぜ「炭素除去」を重視するのですか?
A. 排出回避型の安価なクレジットは品質や追加性への批判が強く、ネットゼロの信頼性を損なうリスクがあるためです。実際に大気からCO2を取り除く「除去」型で、永続性やMRV(測定・報告・検証)が確保されたものを、将来の残余排出に充てる方向に移っています。
Q. ex-post(事後)クレジットとは何ですか?
A. すでにCO2を除去した実績に対して発行されるクレジットです。将来の除去予測に基づくex-ante(事前)クレジットと対比されます。Appleはex-postのみを受け入れる方針を示しており、品質重視の象徴的な例です。
Q. クレジットを使えばネットゼロと言えますか?
A. SBTなどの考え方では「まず自社の実削減が先、クレジットは残った排出の補完」が原則です。削減努力を伴わずクレジットに依存した主張は、グリーンウォッシュと受け取られるリスクがあります。GAFAM各社も実削減を優先し、除去は残余に充てる設計を採っています。
最終更新日:2026年8月27日
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