コーポレートガバナンス(企業統治)とは|目的・仕組みとESGのGを解説

2026.07.15
ESG投資

企業の不祥事が報じられるたび、「ガバナンスが効いていなかった」という言葉を耳にします。そのコーポレートガバナンス(企業統治)とは、いったい何を指すのでしょうか。ひとことで言えば、経営が暴走したり、身内に甘くなったりしないよう、外から監視し、規律する仕組みのことです。近年は、不正を防ぐ「守り」だけでなく、企業を成長へと導く「攻め」の役割も期待されています。本記事では、コーポレートガバナンスとは何か、2つの目的、支える仕組み、日本の枠組み、そしてESGのGとの関係までを、公式情報をもとにわかりやすく整理します。

この記事の目次

コーポレートガバナンスとは(おさらい)

まず、コーポレートガバナンスがどのような仕組みで、なぜ必要なのかを整理しましょう。

経営を、外から監視し規律する

株主
取締役会
監査
ステークホルダー
▼ 監視・規律 ▼
経営者(業務執行)

コーポレートガバナンス=株主などの利益をふまえ、経営の透明性・公正性を確保する仕組み

出典:金融庁・東京証券取引所の情報をもとにgreenote作成

経営を監視・規律する仕組み

コーポレートガバナンス(企業統治)とは、企業が株主をはじめとするステークホルダーの利益をふまえて、経営の透明性・公正性を確保し、適切に意思決定・監視するための仕組みです。その根底には、「会社は経営者だけのものではない」という考え方があります。

会社は、株主や従業員、取引先、地域社会など、多様な関係者に支えられています。だからこそ、経営者が独断で暴走したり、特定の誰かの利益に偏ったりしないよう、外から目を光らせる必要があるのです。その監視と規律の枠組みが、コーポレートガバナンスにほかなりません。

なぜ必要か(所有と経営の分離)

なぜ、わざわざ監視の仕組みが要るのでしょうか。その背景にあるのが、「所有と経営の分離」です。株式会社では、会社の所有者である株主と、実際に経営を担う経営者とが、別であるのが一般的になります。

ここに、ひとつの問題が生じます。経営者が、必ずしも株主の利益のために動くとは限らない、という点です。専門的には、これをエージェンシー問題と呼びます。経営者が自らの保身や利益を優先すれば、会社の価値は損なわれかねません。だからこそ、経営を監視し、規律する仕組みが欠かせないのです。この考え方は、1980年代のアメリカで広まったとされます。

2つの目的――「守り」と「攻め」

コーポレートガバナンスには、性格の異なる2つの目的があります。順に見ていきましょう。

不正を防ぎ、成長を促す

守りのガバナンス

不正や不祥事を防ぎ、経営を規律する。従来の中心。

攻めのガバナンス

適切なリスクテイクを促し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざす。

近年は、守りと攻めの両立が求められる。

出典:金融庁の情報をもとにgreenote作成

コーポレートガバナンスの目的は、大きく2つに分けられます。ひとつが、「守りのガバナンス」です。不正や不祥事を防ぎ、経営を規律すること。従来、コーポレートガバナンスといえば、この守りの側面が中心でした。会社を危険から守る、いわば防波堤の役割です。

そしてもうひとつが、「攻めのガバナンス」になります。こちらは、適切なリスクテイクを促し、企業の持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上をめざすものです。守りが「悪いことをさせない」なら、攻めは「良いことを後押しする」。近年は、この攻めのガバナンスの重要性が、とりわけ強調されるようになりました。守りと攻め、その両立が求められています。

ガバナンスを支える主な仕組み

企業統治は、いくつかの機関や役割によって支えられています。基本を押さえましょう。

監視の役割を、分けて担う

株主総会

会社の最高意思決定機関。取締役を選任する。

取締役会

経営の重要事項を決定し、業務執行を監督する。

監査役・監査委員会

経営の適法性や妥当性をチェックする。

社外取締役=独立した立場から経営を監督し、ガバナンスの実効性を高める

出典:会社法・東京証券取引所の情報をもとにgreenote作成

株主総会と取締役会

まず、会社の最高意思決定機関が株主総会です。株主が集まり、取締役の選任や重要事項を決めます。しかし、日々の経営のすべてを株主が決めるわけにはいきません。そこで、株主から経営を託されるのが取締役会です。

取締役会は、経営の重要事項を決定するとともに、業務執行を監督する役割を担います。ここが要になります。経営陣が適切に職務を果たしているか。取締役会が、その監督の目となるのです。

監査と社外取締役

取締役会の監督を、さらに補強するのが監査の仕組みです。監査役や監査委員会が、経営の適法性や妥当性をチェックします。そして近年、とりわけ重視されているのが、社外取締役の存在です。

社外取締役は、会社から独立した立場から、経営を監督します。社内の論理やしがらみにとらわれず、外部の視点で「おかしいことはおかしい」と言える。この独立性が、ガバナンスの実効性を高めます。社外取締役の役割は、関連記事の社外取締役とはもあわせてご覧ください。

日本の枠組み――会社法とコード

日本のコーポレートガバナンスは、法律と2つのコードで形づくられています。

法律とコードで支える

会社法=株主総会や取締役会など基本の仕組みを定めた法律。すべての企業に守る義務(ハードロー)

コーポレートガバナンス・コード

上場企業がめざす原則。コンプライ・オア・エクスプレイン(ソフトロー)。企業側。

スチュワードシップ・コード

機関投資家がめざす原則。企業との建設的な対話。投資家側。

企業側と投資家側のコードが車の両輪

出典:金融庁・東京証券取引所の情報をもとにgreenote作成

会社法(ハードロー)

日本のガバナンスの土台にあるのが、会社法です。株主総会や取締役会、監査役といった、企業統治の基本的な仕組みを定めた法律になります。いわゆるハードローであり、すべての企業に守る義務があります。会社という仕組みの、いわば骨組みを定めたものです。

2つのコード

会社法という骨組みに、魂を吹き込むのが2つのコードです。ひとつが、コーポレートガバナンス・コードになります。上場企業がめざすべき原則を示した指針で、法的な強制力はありません。原則を実施するか、実施しないならその理由を説明する。この「コンプライ・オア・エクスプレイン」という手法が特徴です。

もうひとつが、スチュワードシップ・コードです。こちらは、機関投資家がめざすべき原則を示したものになります。投資先の企業と建設的な対話を行い、企業価値の向上を促す。企業側のガバナンス・コードと、投資家側のスチュワードシップ・コード。この2つが車の両輪となって、日本のガバナンス改革を進めてきました。詳しくは関連記事のコーポレートガバナンス・コードとはもあわせてご覧ください。

ESGにおけるガバナンス(G)

コーポレートガバナンスは、ESGの「G」そのものです。その位置づけを整理します。

GがE・Sを支える土台

E環境
S社会
G ガバナンス取締役会が課題を監督し、方針を決め、進捗をチェックする

適切なガバナンスがなければ、E・Sの取り組みも実を結ばない

出典:金融庁の情報をもとにgreenote作成

ESGという言葉のG、それが、まさにこのコーポレートガバナンスです。ESG投資やサステナビリティ経営の広がりとともに、ガバナンスの重要性は、これまでにない高まりを見せています。

なぜなら、E(環境)やS(社会)への取り組みも、それを実行し、監視する適切なガバナンスがなければ、絵に描いた餅に終わりかねないからです。取締役会が、気候変動などのサステナビリティ課題を監督する。方針を決め、進捗をチェックし、必要なら軌道修正する。こうしたガバナンスの機能があってはじめて、EやSの取り組みは実を結びます。ガバナンスは、いわばE・Sを機能させる土台なのです。ESG開示の全体像は、関連記事のESG情報開示とはもあわせてご覧ください。

近年の動きと課題

日本のコーポレートガバナンスは、近年大きく変化しています。動きと課題を見ていきます。

進む強化と、残る課題

近年の強化の動き

  • 独立社外取締役の増加
  • 取締役会の実効性評価
  • 政策保有株式の縮減
  • 資本コストや株価を意識した経営

残る課題

形骸化=形式を整えるだけで、実質が伴わないことを避ける

出典:東京証券取引所・金融庁の情報をもとにgreenote作成

日本のコーポレートガバナンスは、この10年ほどで大きく前進しました。2015年のコーポレートガバナンス・コード導入が、その転機です。独立社外取締役の増加、取締役会の実効性評価、そして政策保有株式(いわゆる持ち合い株)の縮減が進みました。役員報酬を、業績や株価に連動させる動きも広がっています。

近年はさらに、資本コストや株価を意識した経営が、企業に強く求められるようになりました。株主から預かった資本を、いかに効率よく価値へと変えるか。その説明責任が問われています。一方で、共通の課題も残ります。それが、形骸化です。社外取締役を置き、評価を実施しても、形式を整えるだけで実質が伴わなければ意味がありません。仏を作って魂を入れず、では困る。実質を伴うガバナンスこそが、これからの課題です。

まとめ|ガバナンスはE・Sを機能させる土台

コーポレートガバナンスは、企業を規律し、成長へと導く仕組みです。最後に、要点を振り返りましょう。

  • コーポレートガバナンス(企業統治)とは、株主などステークホルダーの利益をふまえ、経営を監視・規律する仕組み。土台に「所有と経営の分離」がある
  • 目的は「守り」(不正防止)と「攻め」(持続的成長)の2つ。近年は攻めの重要性が高まる
  • 仕組みは株主総会・取締役会・監査・社外取締役。日本は会社法2つのコード(ガバナンス/スチュワードシップ)で形づくる
  • ESGのGそのものであり、E・Sの取り組みを機能させる土台
  • 近年は社外取締役の増加や資本コスト経営が進む一方、形骸化を避けることが課題

コーポレートガバナンスは、単なる不祥事対策の枠を超え、企業の持続的な成長を支える基盤へと進化してきました。透明で公正な経営があってこそ、環境や社会への取り組みも信頼される。ガバナンスは、企業価値のいちばん深いところを支える土台です。その実質を、いかに高めていくか。それが、これからの企業に問われ続けます。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q. コーポレートガバナンスとは何ですか?

A. コーポレートガバナンス(企業統治)とは、企業が株主をはじめとするステークホルダーの利益をふまえて、経営の透明性・公正性を確保し、適切に意思決定・監視するための仕組みのことです。「会社は経営者だけのものではなく、株主など多様な関係者のものである」という考え方が土台にあります。不正や不祥事を防ぎ、同時に企業の持続的な成長と企業価値の向上をめざすための、監視と規律の枠組みです。

Q. なぜコーポレートガバナンスが必要なのですか?

A. 大きな理由が「所有と経営の分離」です。株式会社では、会社の所有者である株主と、実際に経営する経営者が別であることが一般的です。すると、経営者が株主の利益に反する行動をとる可能性が出てきます。これを防ぐために、経営を監視・規律する仕組みが必要になります。近年は、不祥事の防止に加え、持続的な成長を後押しする役割としても重要性が高まっています。

Q. コーポレートガバナンスの「守り」と「攻め」とは何ですか?

A. 「守りのガバナンス」は、不正や不祥事を防ぎ、経営を規律することを指します。従来、コーポレートガバナンスといえば、この守りの側面が中心でした。一方の「攻めのガバナンス」は、適切なリスクテイクを促し、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上をめざすものです。近年は、この攻めのガバナンスの重要性が強調されるようになっています。守りと攻めの両立が求められます。

Q. 会社法とコーポレートガバナンス・コードはどう違うのですか?

A. 会社法は、株主総会や取締役会など、企業統治の基本的な仕組みを定めた法律(ハードロー)で、すべての企業が守る義務があります。一方のコーポレートガバナンス・コードは、上場企業がめざすべき原則を示した指針(ソフトロー)です。法的な強制力はなく、原則を実施するか、実施しない場合はその理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」という手法がとられます。両者は補い合う関係です。

Q. コーポレートガバナンスとESGのGの関係は何ですか?

A. ESGのG(ガバナンス)は、まさにコーポレートガバナンスを指します。E(環境)やS(社会)への取り組みも、それを実行し、監視する適切なガバナンスがなければ、絵に描いた餅になりかねません。取締役会がサステナビリティ課題を監督し、方針を決め、進捗をチェックする。こうしたガバナンスの機能があってはじめて、EやSの取り組みが実を結びます。ガバナンスは、E・Sを機能させる土台といえます。

Q. 近年のコーポレートガバナンスの動きは?

A. 日本では、2015年のコーポレートガバナンス・コード導入以降、大きく変化しています。独立社外取締役の増加、取締役会の実効性評価、政策保有株式(持ち合い株)の縮減、業績や株価に連動した役員報酬の導入などが進みました。近年はさらに、資本コストや株価を意識した経営が求められています。一方で、形式を整えるだけで実質が伴わない「形骸化」を避けることが、共通の課題となっています。

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

この記事の著者

greenote編集部

ESG・サステナビリティ専門メディア 編集部

官公庁・国際機関・企業の一次情報に基づき、ESG・環境情報・サステナビリティ開示・IRの実務に役立つ解説を、出典を明記して発信しています。各記事は編集部が一次情報との整合を確認のうえ作成しています。詳しくは編集方針・運営者情報をご覧ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年7月15日

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