ノンファーム型接続とは|系統を増強せず再エネをつなぐ「日本版コネクト&マネージ」をわかりやすく解説

2026.06.27
国内規制

再生可能エネルギーを増やそうとして、まず突き当たる現実があります。「送電線に空きがなく、つなぎたくてもつなげない」という壁です。送電網の増強を待てば10年単位の時間がかかる——。そこで生まれた発想が、いまある送電線を賢く使い倒すノンファーム型接続です。

本記事では、ノンファーム型接続とは何かを、できるだけかみ砕いて解説します。系統混雑と「空き容量ゼロ」という課題、既存系統を最大限活用する日本版コネクト&マネージの3本柱、混雑時だけ出力を抑える仕組み、そして現状と課題までを順に見ていきましょう。送電網そのものを太くする地域間連系線・系統増強とは、余る電気を止める出力制御(カーテイルメント)とはとあわせて読むと、再エネを「送る」工夫の全体像が見えてきます。

この記事の目次

ノンファーム型接続とは

まず、ノンファーム型接続をひとことで整理します。「送電線を増やさず、混雑するときだけ我慢する約束でつなぐ」という発想から入りましょう。

ノンファーム型接続をひとことで言うと

ノンファーム型接続とは、送電線に空き容量がなくても、系統が混雑したときに出力制御を受けることを条件に、発電所をつなぐことを認める仕組みです。「ノンファーム(non-firm)」とは「確定的でない」という意味で、流せる量が常に保証されているわけではない、というニュアンスを表します。

ポイントは、平常時はふつうに発電できる、という点です。送電線が混み合う一部の時間帯だけ出力を抑える代わりに、増強工事の完成を待たずに、いますぐ系統につなげます。再エネを早く動かしたい事業者にとって、現実的な接続の入口になっているわけです。

「ファーム型」との違い

従来の接続は「ファーム型」と呼ばれ、つなげる容量があらかじめ確保される方式のこと。安心感はありますが、送電線に空きがなければ、増強が完成するまで何年も待つ必要がありました。

これに対しノンファーム型は、混雑時に出力を抑えるリスクを引き受ける代わりに、空き容量がなくても先につなげます。いわば、ファーム型が「指定席が空くまで待つ」やり方なら、ノンファーム型は「混んだら譲る約束で、いますぐ自由席に座る」やり方です。再エネの導入を急ぐいまの日本に合った、現実的な選択肢だといえるでしょう。

なぜ生まれたのか――系統混雑と「空き容量ゼロ」の壁

ノンファーム型接続が必要になった背景には、再エネをつなぎたいのに送電線に空きがない、という深刻な壁があります。

つなぎたいのに「空き容量ゼロ」

再生可能エネルギーの接続申込が各地で急増した結果、多くの基幹送電線で起きたのが、「空き容量ゼロ」という事態でした。物理的に発電できる適地はあるのに、送電網に余裕がなく、新たな再エネをつなげない地域が広がったのです。

しかも、従来の空き容量の計算が前提にしていたのは、すべての発電所がフル出力で動く、という最も厳しい想定。実際にはそんな最大の状態が同時に起きることはまれです。つまり、実態より少なく空き容量を見積もっていた面があり、送電線にはまだ使える余地が残されていました。

増強を待つと10年・巨額がかかる

空きがないなら送電線を増やせばよい、と考えるのが自然です。けれども、地域間連系線・系統増強とはで見たとおり、送電網の増強には完成まで10年単位の時間と、巨額の費用がかかります。

再エネの導入スピードに、増強が追いつけません。増強そのものは欠かせない一方で、それを待っているだけでは脱炭素が遅れてしまいます。そこで、「増やす」前に「いまある設備を使い倒す」発想が求められたのは、自然な流れでした。これが、次に見る日本版コネクト&マネージです。

日本版コネクト&マネージの3本柱

送電網を増強する前に、いまある設備を最大限使い倒す。その工夫が「日本版コネクト&マネージ」で、3つの柱から成り立っています。

日本版コネクト&マネージの3本柱

送電網を増やす前に、いまある設備を使い倒す

1

想定潮流の合理化

すべての電源が同時にフル稼働する前提をやめ、実際の電気の流れに近い前提で空き容量を見直す。

2

N-1電制

設備が1つ事故で止まったとき対象の電源を瞬時に遮断する装置を前提に、平常時に流せる量を増やす

3

ノンファーム型接続

混雑時に出力制御を受けることを条件に、空き容量がなくても接続を認める。

いずれも増強を待たずに、再エネを早くつなぐための工夫です。

出典:OCCTO・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

想定潮流の合理化とN-1電制

1つめの柱が、想定潮流の合理化です。これは、すべての発電所が同時にフル出力する、という最大級の前提を見直し、実際の電気の流れ(潮流)に近い、より現実的な前提で空き容量を計算し直す取り組みです。これだけで、送電線に新たな受け入れ余地が生まれました。

2つめの柱が、N-1電制(N-1電源制限)です。送電線などの設備が1つ事故で止まる事態に備え、その瞬間に対象の電源を自動で素早く遮断する装置を取り付けます。これを前提にすると、事故への備えを保ったまま、平常時にはより多くの電気を流せるようになります。いわば、緊急ブレーキを付ける代わりに、ふだんはスピードを出してよい、という発想。

3つ目の柱がノンファーム型接続

そして3つめの柱が、本記事の主役であるノンファーム型接続です。想定潮流の合理化とN-1電制を尽くしてもなお空きが足りないとき、混雑時の出力制御を条件に、空き容量ゼロでも接続を認めるのが、この仕組みです。

3つの柱は、いずれも「送電網を増やす前に、いまある設備をどこまで使えるか」を突き詰めたものです(電力広域的運営推進機関)。再エネを一刻も早くつなぐための、知恵の積み重ねにほかなりません。なお制度の詳細は、運用しながら順次見直されています。

仕組み――混雑するときだけ出力制御を受ける

ノンファーム型接続の電源は、平常時はふつうに発電できます。送電線が混雑したときだけ、出力を抑えるという約束。

ノンファーム型接続の振る舞い

混雑するときだけ、出力を抑える

平常時

送電線に余裕がある

再エネの発電所は通常どおり全量を送電。ふだんはファーム型と変わらず発電できる。

混雑時

送電線が混み合う

混雑を解消するため出力を一部抑える再給電方式=限界費用の安い電源を優先し、高い電源から下げる(メリットオーダー)。

平常時は通常どおり。混み合う一部の時間だけ我慢する仕組みです。

出典:OCCTO・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

平常時はそのまま、混雑時だけ抑える

ノンファーム型接続の電源は、送電線に余裕がある平常時には、通常どおり全量を発電できます。出力を抑えられるのは、その送電線が混雑して送りきれなくなる、限られた時間帯だけ。

ここが、エリア全体の需給バランスで止める一般的な出力制御との違い。一般的な出力制御(カーテイルメント)とはが「電気が余る」問題で広く止めるのに対し、ノンファーム型の制御は「特定の送電線が混む」問題で、その線につながる電源を局所的に抑えます。前者は需給の問題、後者は送る道の問題だと整理すると、すんなり頭に入るでしょう。

先着優先から「再給電方式」へ

混雑したとき、どの電源から出力を抑えるか。このルール(混雑処理)も、見直しが進んできました。当初は「先着優先」で、あとから接続したノンファーム電源から先に制御される仕組みでした。

しかし先着優先には、社会全体で見ると非効率だという課題がありました。そこで導入が進んだのが、「再給電方式」です。これは、燃料費などの限界費用が安い電源を優先して動かし、高い電源から出力を下げるという、メリットオーダーの考え方に基づきます。社会全体の燃料費を抑えながら混雑を解消できる方式で、将来的には市場の仕組みを通じた、より精緻な処理も検討されています(資源エネルギー庁)。

現状と課題

ノンファーム型接続は、いまや再エネをつなぐ標準的な入口になりつつあります。一方で、乗り越えるべき課題も残されています。

ノンファーム型接続 適用拡大の歩み

特別な仕組みから、再エネをつなぐ標準的な入口へ

2021年1月

空き容量のない基幹系統で、全国的に適用を開始。

2023年4月

再生可能エネルギーを対象に、基幹系統で原則適用へ。

その後

より地域に近いローカル系統へも適用を拡大。

送電網の増強と、ノンファーム型による既存系統の活用。両輪で再エネの接続を加速します。

出典:OCCTO・資源エネルギー庁の公開情報をもとにgreenote作成

基幹系統で原則適用、ローカルへも拡大

ノンファーム型接続は、2021年1月に空き容量のない基幹系統で全国的に始まりました。その後、2023年4月には再生可能エネルギーを対象に基幹系統で原則適用へと広がり、さらに、より地域に近いローカル系統へも適用が拡大されてきました。

特別な仕組みだったものが、いまや再エネをつなぐ標準的な入口へと位置づけを変えつつあります。送電網の増強と、ノンファーム型による既存系統の活用。この二つを組み合わせることで、再エネの接続を加速させているのが、いまの日本の姿。系統につながった電気をためて活かす系統用蓄電池(BESS)市場の今も、混雑緩和の有力な担い手になっていきます。

予見性と公平性という課題

便利な仕組みである一方、課題も少なくありません。最大の論点は、「どれだけ出力制御を受けるか、事前に見通しにくい」という予見性の問題。制御が多い送電線につなぐと、想定より発電量が減り、事業の採算が読みにくくなります。

また、混雑処理のルールによって、どの電源がどれだけ制御されるかが変わるため、公平性をどう確保するかも問われます。再給電方式への移行や、その費用を誰が負担するかの議論は、この公平性と効率性のバランスを探る取り組みです。仕組みを磨きながら、再エネを増やしても安心してつなげる環境を整えていくことが、これからの宿題でしょう。

ノンファーム型接続をどう捉えるか

ノンファーム型接続は、送電網の増強という「時間のかかる正攻法」を待つ間に、いまある設備で再エネを最大限つなぐための、現実的な知恵です。空き容量ゼロという壁を、「増やす」だけでなく「賢く使う」発想で乗り越えようとする取り組みなのです。

大切なのは、ノンファーム型接続を「我慢を強いる仕組み」ではなく、「再エネを早くつなぐための前向きな約束」として捉えてみてください。送電網を太くする系統増強、混雑時に賢く制御するノンファーム型接続、そして余る電気をためる蓄電池やデマンドレスポンス(DR)とは。これらが組み合わさって初めて、再エネは無理なく主力電源へ近づきます。電力システム全体の地図は電力システムまるわかりガイドもご覧ください。

増やすだけでも、待つだけでもない。いまある送電線をどこまで賢く使えるか——その工夫の最前線が、ノンファーム型接続です。なお本記事は、特定の事業や接続の採算を断定するものではなく、仕組みと制度の考え方を中立に整理したものです。

よくある質問(FAQ)

Q. ノンファーム型接続だと、再エネはどのくらい止められるのですか?

A. 平常時は通常どおり発電でき、送電線が混雑したときだけ出力を抑えられます。実際の制御量は系統や時期によって幅があり、混雑が起きやすいエリアでは制御が多くなる一方、そうでないエリアでは限定的です。重要なのは、接続容量が保証されない(non-firm)かわりに、増強の完成を待たずに早くつなげる点です。どれだけ制御されるかを事前に正確に見通しにくいことが、事業者にとっての論点になっています。

Q. ファーム型とノンファーム型は、どちらが有利なのですか?

A. 一概には言えません。ファーム型は接続できる容量が確保される安心感がある一方、空き容量がなければ送電網の増強完成(しばしば数年〜十年規模)まで待つ必要があります。ノンファーム型は、混雑時に出力制御を受けるリスクを引き受けるかわりに、増強を待たずに早く接続できます。再エネを早く動かしたい事業者にとって、ノンファーム型は現実的な選択肢になっています。

Q. 出力制御(カーテイルメント)とノンファーム型接続の制御は、何が違うのですか?

A. 止める理由が違います。一般的な出力制御は、エリア全体で供給が需要を上回りそうなとき(需給バランス)に行われます。一方ノンファーム型接続での制御は、特定の送電線が混雑して送りきれないとき(系統制約)に、その線につながる電源を抑えるものです。前者は『電気が余る』問題、後者は『送る道が細い』問題で、どちらも再エネを増やすうえで向き合うべき課題です。詳しくは出力制御の解説もあわせてご覧ください。

最終更新日:2026年6月27日

この記事の著者

greenote編集部

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