世界で売られる新車の、4台に1台がすでに電気自動車(EV)——。そんな時代が、数字の上でも現実になりつつあります。その到達点を具体的なデータで示したのが、IEA(国際エネルギー機関)が公表した最新レポートです。
本記事では、IEAの年次レポート「Global EV Outlook 2026」の要点を、できるだけ具体的な数値とともに解説します。2025年の世界EV市場の実績、地域ごとの差、メーカーの勢力図、そして2026年の見通しまでを整理します。
≡目次
Global EV Outlook 2026とは
まずはこのレポートの位置づけと、最大の見出しを押さえましょう。EVが新車販売の主役に近づいています。
IEAが毎年公表するEVの年次レポート
「Global EV Outlook」は、IEAが毎年公表している、世界のEVに関する年次レポートです。EVや充電インフラの普及、バッテリー需要、主要・新興市場の政策動向などを、過去のデータと将来予測を組み合わせて分析する報告書です。
2026年版の副題は、「Growing sales amid an energy crisis(エネルギー危機のなかでの販売拡大)」です。中東情勢に端を発するエネルギー危機を背景に、EVがどう動いているかを読み解く内容です。IEAの世界エネルギー見通しは、関連記事のWorld Energy Outlook 2025の要点|IEAが示す「電化の時代」もあわせてご覧ください。
2025年は新車の4台に1台がEVに
レポートが示す最大の見出しは、2025年の世界のEV販売が前年比20%増の2000万台超に達したことです。これは、世界で売られた新車の約25%、つまり4台に1台がEVだったことを意味します。
EVは、一部の先進国の特別な選択肢から、世界の新車市場の主役へと近づいているのです。記録更新が続くなかで、市場の関心は「どこまで増えるか」から「エネルギー危機が市場をどう変えるか」へと移りつつあります。
世界のEV販売台数とシェアの推移
棒=台数(地域別)/折れ線=新車に占めるEVシェア
台数は5年で約7倍。シェアも4.6%→25%へ上昇し、2026年は約2300万台・28%の見込みです。
出典:IEA, Global EV Outlook 2020〜2026 をもとにgreenote作成(台数は百万台・概数)
2025年の世界EV市場|2000万台を突破
2025年も記録更新の年でした。全体の数字と、地域ごとの差を具体的に見ていきましょう。
世界販売は前年比20%増・2000万台超
2025年の世界のEV販売は、前年比20%増の2000万台超に達しました。新車のおよそ4台に1台がEVという水準です。100か国以上でEV販売が増加し、そのうち3分の1の国では、EVが新車販売の少なくとも10%以上を占めた計算です。
普及が一部の国にとどまらず、世界中に広がっていることがうかがえます。市場は着実に裾野を広げています。
欧州・中国・米国の動向
主要市場の中で最も力強く伸びたのは、欧州です。EVの販売は前年比30%超の伸びを見せ、新車に占めるシェアは28%です。背景には、EU(欧州連合)の自動車CO2規制が強化されたことがあります。
中国は、買い替え支援策が一時的に停止された影響などで伸びがやや鈍化しました。それでもEVのシェアは約55%と、新車の半分以上を占めています。一方の米国は、シェア10%弱で横ばいでした。EV向け税額控除の終了が重なり、年末にかけて販売が落ち込みました。
東南アジア・中南米など新興市場の急伸
新興市場の伸びも目立ちました。東南アジアでは、年間販売がほぼ倍増し、シェアは約20%に達しました。ベトナム、インドネシア、タイが、この成長を牽引した形です。
中南米でも、ブラジルとメキシコを中心に、販売は前年比75%増です。手ごろな価格のEVが普及を後押ししており、新興国がEV市場の新たな成長エンジンになりつつあります。
メーカー勢力図とエネルギー危機の影響
誰が売っているのか、そしてEVがエネルギー面で何をもたらしているのかを整理します。
メーカー別の世界EV販売シェア(2025年)
中国メーカーが世界の6割を供給
中国メーカー
欧州メーカー
北米メーカー
2025年に世界のEVが回避した石油消費
日量 約170万バレル
EVの普及は、エネルギー安全保障の観点からも重要性を増しています。
出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成
中国メーカーが世界販売の60%
メーカー別に見ると、その勢力図は鮮明です。2025年、中国メーカーは世界のEV販売の60%を供給しました。欧州メーカーと北米メーカーは、それぞれ約15%です。
中国は世界最大のEV生産拠点でもあります。国内の激しい競争を背景に、手ごろな価格のEVを送り出し、世界中でシェアを伸ばしてきました。EV市場における中国の存在感の大きさを、数字が物語ります。
EVが日量約170万バレルの石油を代替
EVの普及は、石油消費の削減にも直結します。IEAの推計によると、2025年に世界のEVは、日量約170万バレル(mb/d)の石油消費を回避しました。これは主に、燃費基準やCO2基準を導入している中国やEUで生じたものです。
道路輸送は、今日の石油需要の約半分を占めます。そのため、EVの普及はエネルギー安全保障の観点からも重要です。石油の輸入に頼る国にとって、EVは依存を減らす手段の一つです。
高油価がEVの経済性を後押し
足元では、エネルギー危機による高油価が、EVの経済性に光を当てる展開です。EVは一般に、エンジン車よりも走行コストが低くなります。エネルギー効率が高いためです。油価の上昇は、その差をさらに広げます。
レポートによれば、4月の平均油価をもとにした試算で、EUにおけるEVの年間燃料費の削減額は、前年と比べて35%拡大したとされます。燃料価格の高騰は、消費者の目をEVの経済性へと向けさせています。脱炭素全体の文脈は、関連記事のカーボンニュートラルとは|2050年目標と脱炭素の全体像もあわせてご覧ください。
2026年の見通し|2300万台・シェア28%へ
IEAは2026年も成長が続くと見込みます。具体的な予測値を確認しましょう。
2026年のEV販売見通し(IEA)
成長は続くと予測
世界全体
2300万台・シェア28%
欧州
約20%増。新車の3台に1台がEVへ。
中国
シェア約60%(伸びは鈍化)。
アジア太平洋(中国除く)
50%超の増加。
中南米
45%の増加。
エンジン車のシェアは縮小が続き、2017年のピークには戻らないとの予測です。
出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成
世界2300万台・シェア28%の予測
IEAは、2026年の世界EV販売が2300万台・新車シェア28%に成長すると見込みます。高油価がEVの経済的な魅力を高めていることが、追い風になるとみられます。
エンジン車(ICE)の販売シェアは、どのシナリオでも縮小が続き、2017年のピークには二度と戻らない見通しです。市場の主役が、静かに入れ替わりつつあります。
地域別の2026年予測
地域別では、欧州が主要市場で最大の伸びを示す見通しです。販売は約20%増え、新車の3台に1台がEVになると予測されています。中国は伸びが鈍化しつつも、シェアは約60%に達する見込みです。
新興市場の勢いも続きます。中国以外のアジア太平洋地域では50%超の増加、中南米では45%の増加が見込まれます。
2026年第1四半期の実績
足元の実績も明らかです。2026年第1四半期の世界販売は約390万台で、前年同期比8%減でした。これは主に、中国と米国で政策が変わった影響によるものです。
ただし、この全体の減少は地域差を覆い隠しています。欧州は前年比約30%増、中国以外のアジア太平洋は80%増、中南米は75%増と、多くの地域では力強い伸びが続きました。3月には約30か国が月間の過去最高を記録しています。
まとめ|EVは普及期から主流化へ
Global EV Outlook 2026は、EVが普及の段階から、新車市場の主流へと移りつつあることを、具体的な数字で示すものでした。最後に、要点を振り返りましょう。
- 2025年の世界EV販売は前年比20%増・2000万台超で、新車の約25%(4台に1台)がEVに
- 地域別は欧州28%・中国約55%・米国10%弱、東南アジアは倍増しシェア約20%、中南米は75%増
- 中国メーカーが世界販売の60%を供給。EVは2025年に日量約170万バレルの石油を代替
- 2026年は2300万台・シェア28%の見通し。欧州は新車の3台に1台へ
- エンジン車のシェアは縮小が続き、2017年のピークには戻らないとの予測
EVはもはや、未来の話ではありません。世界の新車市場で、着実に主役の座へと近づいている最中です。次回以降、本レポートが示す2035年までの長期見通しや、電動トラック、バッテリー・貿易の動向も順次解説していきます。ESG・脱炭素の全体像は脱炭素・カーボンニュートラルとは?完全ガイドもあわせてご覧ください。
参考(出典):IEA「Global EV Outlook 2026」(IEA, CC BY 4.0)
出典・参考(一次情報)
※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年6月20日