EV(電気自動車)と聞くと、まず思い浮かぶのは乗用車かもしれません。けれども、IEA(国際エネルギー機関)の最新レポートを読むと、もう一つの主役が見えてきます。トラック、バス、そして二輪・三輪です。商用車や二輪の世界でも、電動化は静かに、しかし確実に進んでいる最中です。
本記事は、IEA「Global EV Outlook 2026」解説シリーズの第3弾です。2025年に倍増した電動トラック、最も電動化が進む二輪・三輪、そして2035年の長期見通しを、レポートの数値に沿って整理します。乗用車を中心とした全体像は第1弾のGlobal EV Outlook 2026の要点|2025年の世界EV市場と2026年見通しを、2035年の長期見通し全体は第2弾のEVは2035年にどこまで普及する?もあわせてご覧ください。
≡目次
- 1乗用車に続く、商用車・二輪のEV化(2025年)
- ►トラック・バス・二輪三輪も電動化の波
- ►セグメントで違う電動化のスピード
- 2電動トラックが2025年に倍増
- ►世界シェア9%・初の40万台超へ
- ►大型トラックはほぼ3倍に拡大
- ►中国が世界販売の9割、4台に1台がEV
- 3中国の強さを支えるサプライチェーン
- ►CATLが電池の8割を供給
- ►電池交換式トラックの広がり
- ►採算(TCO)が普及を後押し
- 4電動二輪・三輪が最も電動化した領域
- ►販売シェア約15%、保有の1割がEV
- ►三輪は25%超、新興国が牽引
- ►電動バスも都市から広がる
- 52035年の長期見通しと日本への示唆
- ►トラックは世界約20%・中国約60%へ
- ►二輪・三輪は保有が約4倍に
- ►日本企業の立ち位置
- 6まとめ|商用車のEV化が次の主役に
乗用車に続く、商用車・二輪のEV化(2025年)
EVは乗用車だけの話ではありません。トラック・バス・二輪三輪まで、電動化の波が広がりつつあります。まずは2025年の全体像を押さえましょう。
トラック・バス・二輪三輪も電動化の波
乗用車の陰に隠れがちですが、商用車や二輪の電動化も着実です。2025年、世界の電動トラックの販売は前年から倍増しました。電動バスも増え、二輪・三輪にいたっては、すでに保有の約1割が電動です。
この動きが重要なのは、商用車や二輪が、私たちの暮らしと経済の土台を支えているからです。物流を担うトラック、都市を走るバス、新興国の足である二輪・三輪。これらが電動化すれば、CO2の削減効果も、エネルギー需要への影響も大きくなります。
セグメントで違う電動化のスピード
ただし、電動化のスピードは乗り物の種類によって異なります。最も進んでいるのが二輪・三輪で、販売シェアは約15%。次いでトラックが9%、バスもこれに続きます。一方、長距離を走る大型車ほど、電池の容量や充電の課題が残るため、慎重なペースです。
つまり、同じ「EV化」でも、車種ごとに事情が違うのです。それぞれの普及の理由と課題を、順に見ていきましょう。
電動トラックが2025年に倍増
2025年に最も勢いがあったのが、電動トラックです。商用車のなかで、最も速く電動化が進みました。
電動トラックの販売台数とシェアの推移(世界)
棒=販売台数(左軸)/折れ線=EVシェア(右軸)
2020
1.6万
2021
3.6万
2022
7万
2023
10万
2024
21万
2025
44万
販売台数は5年で約1.6万台→44万台(約27倍)、シェアも0.3%→9%へ。中国が世界販売の9割超を占めます。
出典:IEA Global EV Data Explorer(Global EV Outlook 2026, CC BY 4.0)をもとにgreenote作成(中型・大型トラック、新定義)
世界シェア9%・初の40万台超へ
数字が、その勢いを物語ります。IEAによると、世界の電動トラック(中型・大型の貨物トラック)の販売は、2025年に前年から倍増しました。初めて40万台を超え、トラック販売全体に占めるEVのシェアは9%に達しています。
注目すべきは、この9%という水準です。これは、バスや小型商用車のEVシェアを上回りました。商用車のなかで、トラックが電動化の先頭に立ったことになります。しかも、販売された電動トラックの97%はバッテリー式(BEV)でした。
大型トラックはほぼ3倍に拡大
なかでも目を引くのが、大型貨物トラック(HFT)の伸びです。長距離・大重量を運ぶこのセグメントは、電動化が最も難しいとされてきました。ところが2025年、その販売はほぼ3倍に増えています。約8.4万台から、約23万台へ。シェアも、前年の3%強から9%へと跳ね上がりました。
中型貨物トラック(MFT)も、65%増の約21万台に達し、シェアは9%です。「大型は電動化が難しい」という常識が、急速に塗り替えられつつあります。
中国が世界販売の9割、4台に1台がEV
この急拡大を牽引したのは、中国です。世界の電動トラック販売のうち、9割超を中国が占めました。象徴的なのは、その普及率です。2025年に中国で売れたトラックの、実に4台に1台がEVだったのです。
とくに大型貨物トラックでは、EVシェアが2024年の13%から28%へと倍増。2025年12月には、単月で約50%に達した月もあります。中国のトラック市場は、すでにEVが主役の一角を占める段階に入りつつあります。
中国の強さを支えるサプライチェーン
電動トラックの急拡大は、中国の産業基盤に支えられています。電池から車体まで一体となった強さを見ていきます。
CATLが電池の8割を供給
中国の電動トラックは、ほぼすべてが中国メーカーの車体に中国製の電池を積む構成です。なかでも電池は、CATL(寧徳時代)1社が全体の80%を供給しているとされます。電池・シャシー・組み立てまでを国内で完結させる、高度に統合されたエコシステムが背景にあるのです。
この一体化が、コスト競争力の源泉です。部品を国内で安く調達できれば、車両価格を抑えられます。中国メーカーが世界市場で存在感を増している理由の一つが、ここにあります。
電池交換式トラックの広がり
中国ならではの工夫も、普及を後押ししています。その一つが、電池交換(バッテリースワップ)方式です。充電を待つ代わりに、電池ごと素早く積み替える仕組みで、2025年には中国の電動トラック販売の約15%を占めます。
この方式が活きるのは、港湾・鉱山・製鉄所のように、決まったルートを往復する用途です。充電時間のロスを抑えられるため、稼働率が重視される現場と相性がよいのです。決まった経路を走るトラックから始まる、段階的な電動化が中国の現状。
採算(TCO)が普及を後押し
普及の決め手は、結局のところ採算です。IEAによると、中国の大型電動トラックは、一部の用途で5年間保有すればディーゼル車と総保有コスト(TCO)が並ぶ水準。車両価格は高くても、燃料費やメンテナンス費の差で取り戻せる、という計算です。
政策も後押ししました。古いトラックを買い替える際の補助は最大で約2万ドルにのぼり、電動トラックの価格差の20〜50%を埋めたとされます。経済合理性と政策支援の両輪が、中国の急拡大を支えているのです。
電動二輪・三輪が最も電動化した領域
実は、道路交通で最も電動化が進んでいるのは二輪・三輪です。新興国の生活の足から、EV化が静かに進んでいます。
電動二輪・三輪の販売台数とシェアの推移(世界)
棒=販売台数(左軸)/折れ線=EVシェア(右軸)
2020
880万
2021
1100万
2022
970万
2023
1000万
2024
950万
2025
1100万
年間1000万台規模で、道路交通で最も電動化が進む領域。シェアは約15%で推移し、保有の約1割が電動です。
出典:IEA Global EV Data Explorer(Global EV Outlook 2026, CC BY 4.0)をもとにgreenote作成(二輪・三輪、概数)
販売シェア約15%、保有の1割がEV
二輪・三輪(2/3W)は、道路交通で最も電動化が進んだ領域です。世界の保有のうち、すでに約10%が電動です。乗用車やトラックを大きく上回る水準といえます。
2025年の電動二輪・三輪の販売は、約15%増の1100万台に達しました。これは、二輪・三輪の総販売の約15%に当たります。車体が小さく、電池も小さくて済むため、価格のハードルが低い。それが、普及を後押ししています。
三輪は25%超、新興国が牽引
なかでも三輪は、電動化が際立っています。EVシェアは25%超と、二輪のほぼ2倍。三輪は、新興国でタクシーや配送に使われる、暮らしに密着した乗り物です。日々の走行距離が読めるため、電動化と相性がよいのです。
販売を地域別に見ると、中国・トルコ・インド・ベトナムの4か国で、世界の95%を占めます。世界最大の電動二輪市場は中国で、販売は700万台超、シェアは55%超です。ベトナムでも販売が倍増し、約73.5万台・シェア20%超に達しました。新興国の生活の足から、EV化は広がりつつあるのです。
電動バスも都市から広がる
都市の足であるバスも、電動化が着実です。2025年の電動バスの販売は、12%増の約7万台に拡大。そのうち98%が、バッテリー式です。
電動バスの販売台数とシェアの推移(世界)
棒=販売台数(左軸)/折れ線=EVシェア(右軸)
2020
6万
2021
5万
2022
5.8万
2023
4.6万
2024
6.2万
2025
7万
2025年は約7万台(前年比+12%)に拡大。98%がバッテリー式で、都市の調達政策が普及を牽引します。
出典:IEA Global EV Data Explorer(Global EV Outlook 2026, CC BY 4.0)をもとにgreenote作成(中型・大型バス)
バスの電動化を引っ張るのは、都市の政策です。中国は10年以上前から、市内バスの電動化に注力してきました。決まった路線を走り、夜間に車庫で充電できるバスは、電動化しやすい乗り物だといえます。大気汚染対策と脱炭素を兼ねて、世界の都市で導入が広がりました。
2035年の長期見通しと日本への示唆
商用車のEV化は、これからどこまで進むのでしょうか。IEAの2035年見通しと、日本企業への示唆を整理します。
2035年の商用車・二輪のEV化見通し(IEA)
乗用車に続き、長期トレンドとして定着へ
電動トラックの世界シェア
約20%
トラック保有の約10%が電動に(現行政策)
中国の電動トラックシェア
約60%
世界に先駆けて電動化が進む
二輪・三輪の保有
約4倍
2035年に約2〜3億台へ拡大
表明政策シナリオでは、二輪・三輪の販売シェアが2035年に95%近くに達する見通しです。
出典:IEA, Global EV Outlook 2026(CC BY 4.0)をもとにgreenote作成(CPS・STEPS)
トラックは世界約20%・中国約60%へ
長期の見通しも、力強いものです。IEAの現行政策シナリオ(CPS)では、2035年に電動トラックが世界のトラック販売の約20%に達します。トラック保有全体でも、約10%が電動になる計算です。新たな政策が追加されなくても、ここまで進むと見込まれています。
中国は、さらに先を行きます。2035年には、トラック販売の約60%が電動になる見通しです。一部の用途で採算が合い始めたいま、中国のトラック市場は、世界に先駆けて電動化の段階を駆け上がっています。シナリオやエネルギー全体の見取り図は、第2弾のEVは2035年にどこまで普及する?もあわせてご覧ください。
二輪・三輪は保有が約4倍に
二輪・三輪は、台数の伸びが際立ちます。IEAによると、電動二輪・三輪の保有は、2035年に現行政策で約2億台、表明政策では約3億台に達します。現在の約4倍という規模です。表明政策シナリオでは、二輪・三輪の販売シェアが2035年に95%近くに達するとも見込まれています。
新興国を中心に、二輪・三輪はほぼ電動が当たり前になる。そんな未来が、数字の上では見えてきます。台数が多いだけに、その環境効果も小さくありません。
日本企業の立ち位置
最後に、日本企業の立ち位置です。世界の電動トラック市場では、中国が電池・車体・コストの面で大きく先行しています。日本では、二輪三輪を除く全車種のEV販売シェアが2025年で2%にとどまり、2035年でも20%弱(表明政策シナリオ)と見込まれます。世界の流れと比べると、慎重なペースだといえます。
とはいえ、悲観する必要はありません。電池技術や、決まったルートを走る商用車といった特定用途には、まだ強みを発揮できる余地があります。世界の構造変化を直視し、自社の強みをどこで生かすか。その問いに向き合うことが、いま求められています。脱炭素の全体像は脱炭素・カーボンニュートラルとは?完全ガイドもあわせてご覧ください。
まとめ|商用車のEV化が次の主役に
Global EV Outlook 2026は、EV化が乗用車にとどまらず、トラック・バス・二輪三輪へと広がっていることを、具体的な数字で示しました。最後に、要点を振り返りましょう。
- 電動トラックの販売は2025年に倍増し、初の40万台超・世界シェア9%に。大型貨物トラックはほぼ3倍に拡大
- 中国が世界販売の9割超を占め、新車トラックの4台に1台がEV。電池はCATLが8割を供給
- 道路交通で最も電動化が進むのは二輪・三輪で、販売シェア約15%、三輪は25%超
- 2035年には電動トラックが世界で約20%・中国で約60%、二輪三輪の保有は約4倍に拡大する見通し
乗用車に続き、商用車や二輪の領域でもEV化は長期トレンドとして定着しつつあります。物流やインフラを担う車両の電動化は、企業のサプライチェーンや脱炭素戦略にも直結します。次の主役は、私たちの暮らしを支える「働く車」かもしれません。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。
参考(出典):IEA「Global EV Outlook 2026」(IEA, CC BY 4.0)
出典・参考(一次情報)
※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
編集責任
greenote編集責任者
サステナビリティ実務・編集統括
ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。
最終更新日:2026年6月20日