SSBJ基準とは|ISSB(IFRS S1/S2)との関係と適用スケジュールを解説

2026.06.15
CSRD・ISSB

サステナビリティ情報の開示は、これまで企業の自主的な取り組みでした。それが、いよいよ制度として求められる時代に入ります。その中核となるのが、「SSBJ基準」です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、上場企業にとっては避けて通れないテーマになりました。

本記事では、SSBJ基準とは何かを整理したうえで、国際基準であるISSB(IFRS S1/S2)やTCFDとの関係、そして気になる適用スケジュールまでを解説します。ISSBそのものの詳細はISSBとは|国際サステナビリティ基準審議会、その土台となったTCFDはTCFDとはもあわせてご覧ください。

目次

SSBJ基準とは|日本のサステナビリティ開示基準

サステナビリティ情報の開示が、いよいよ制度化されます。その中核が「SSBJ基準」です。まずは概要を押さえましょう。

SSBJ基準の全体像(3つの基準)

2025年3月に公表された、日本初のサステナビリティ開示基準

適用基準

ユニバーサル基準。開示全体に共通するルール

一般開示基準

IFRS S1 に相当

サステナビリティ全般を扱うコア基準

気候関連開示基準

IFRS S2 に相当

気候変動に特化した開示

ISSBのIFRS S1・S2を基礎に、日本向けに開発された基準です。

出典:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)等をもとにgreenote作成

2025年に公表された日本初の開示基準

SSBJとは、サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)の略称です。日本のサステナビリティ開示基準を作る役割を担う組織です。そのSSBJが2025年3月、日本で初めてとなるサステナビリティ開示基準を公表しました。

これは、大きな節目です。これまで企業ごとにばらばらだったサステナビリティ情報の開示に、共通のものさしができたことを意味します。投資家にとっても、企業を横並びで比較しやすくなるはずです。

3つの基準で構成される

SSBJ基準は、3つの基準から成り立っています。一つ目は「適用基準(ユニバーサル基準)」で、開示全体に共通するルールを定めます。二つ目は「一般開示基準(コア基準)」で、サステナビリティ全般を扱います。三つ目は「気候関連開示基準」で、気候変動に特化した内容です。

このうち、一般開示基準は国際基準のIFRS S1に、気候関連開示基準はIFRS S2に、それぞれ対応しています。日本の基準が、国際基準と地続きであることがわかります。

ISSB(IFRS S1/S2)・TCFDとの関係

SSBJ基準は、ゼロから作られたわけではありません。国際的な基準の系譜の上にあります。その関係を整理します。

TCFDからISSB、SSBJへの発展

開示の考え方は、一本の線でつながっている

TCFD

気候関連財務情報開示の提言。4つの柱の原型

ISSB

IFRS S1/S2(2023年)

世界共通のグローバルベースライン

SSBJ基準

2025年

ISSBを基礎にした日本版の基準

ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つの柱が、TCFDからISSB・SSBJに引き継がれています。

出典:TCFD・ISSB・SSBJの公開情報をもとにgreenote作成

グローバルベースラインとしてのISSB

国際的な基準づくりを担うのが、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)です。ISSBは2023年に、IFRS S1(全般的要求事項)とIFRS S2(気候関連開示)を公表しました。これらは、世界共通の「グローバルベースライン」を目指したものです。

各国がばらばらの基準を作れば、企業の負担は増え、比較もしにくくなります。そこでISSBが、共通の土台を用意したわけです。世界中の国や地域が、この基準を採り入れ始めています。

SSBJはISSBを基礎に日本向けに開発

日本も、その流れに乗りました。SSBJ基準は、ISSBのIFRS S1・S2を基礎として開発されています。国際基準との整合性を保ちながら、日本の制度や実務にあわせて細部を調整した、いわば日本版です。

整合性が保たれているのには、理由があります。日本企業が国際的な投資家に向けて開示するとき、世界の基準とそろっていれば、情報が伝わりやすくなるからです。SSBJ基準は、国内向けと国際向けの橋渡しを担います。

TCFDからの発展という流れ

さらにさかのぼると、源流にはTCFDがあります。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、気候関連のリスクと機会を開示するための提言を示しました。その「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」という4つの柱は、いまの基準にも受け継がれています。

つまり、TCFDからISSB、そしてSSBJへ——開示の考え方は、一本の線でつながっています。これまでTCFDに沿って開示してきた企業にとって、SSBJ基準は地続きの延長線上にあるといえます。

何を開示するのか(基準の中身)

では、SSBJ基準は具体的に何を求めるのでしょうか。開示の骨格を見ていきます。

ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標

開示の骨格は、4つの柱です。「ガバナンス」では、サステナビリティをどう監督・管理しているかを示します。「戦略」では、リスクと機会が事業に与える影響と、その対応を説明します。「リスク管理」では、リスクをどう特定し、評価し、管理するかを述べます。そして「指標と目標」では、進捗を測る数値と目標を開示します。

この4本柱は、TCFDから受け継いだ構造です。すでにTCFD開示に取り組んできた企業なら、土台はできています。

気候関連はScope1〜3の開示へ

気候関連開示基準では、温室効果ガス排出量の開示が求められます。注目すべきは、その範囲です。自社の直接排出(Scope1)と、電力などのエネルギー由来(Scope2)にとどまりません。サプライチェーン全体の排出(Scope3)の開示も求められます。

Scope3は、取引先や製品の使用段階まで含む、広い範囲です。把握には手間がかかりますが、企業の気候インパクトの全体像を映すには欠かせません。多くの企業にとって、ここが対応の山場です。

有価証券報告書で開示する

これらの情報は、どこで開示するのでしょうか。SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報は、有価証券報告書のなかで開示されます。有価証券報告書は、上場企業が金融商品取引法に基づいて作成する、法定の開示書類です。

サステナビリティ情報が、財務情報と同じ法定書類に載る。この意味は小さくありません。任意の取り組みから、投資家保護を前提とした制度的な開示へと、位置づけが変わるのです。

適用スケジュール|時価総額別の段階適用

最も気になるのが、いつから義務になるのかです。適用は、時価総額に応じて段階的に進みます。

SSBJ基準の適用スケジュール

有価証券報告書での義務化(プライム上場・時価総額別)

2027年3月期

時価総額
3兆円以上

2028年3月期

1兆円以上
(3兆円未満)

2029年3月期

5000億円以上
(1兆円未満)

2030年代

全プライム
拡大(提案)

義務化に先行して任意適用も可能。第三者保証も導入へ(当初はScope1・2等の限定的保証)。

出典:金融庁ワーキング・グループ資料等をもとにgreenote作成

3兆円以上は2027年3月期から

義務化は、規模の大きな企業から始まります。東証プライム市場の上場企業のうち、時価総額3兆円以上の企業が、2027年3月期からの適用対象です。まずは、日本を代表する大企業が先頭に立ちます。

これらの企業は、すでにサステナビリティ開示に積極的に取り組んできたところが多いといえます。先行して制度開示に移行し、後続のモデルになることが期待されます。

1兆円・5000億円へと対象が拡大

対象は、段階的に広がります。時価総額3兆円未満で1兆円以上の企業は2028年3月期から、1兆円未満で5000億円以上の企業は2029年3月期から、それぞれ義務化の対象です。

そして最終的には、2030年代を目途に、すべてのプライム市場上場企業へ適用を拡大する方針が示されています。いまは対象でない企業も、いずれ求められる可能性が高いのです。早めの準備が、後々の余裕につながります。

任意適用・経過措置と第三者保証

義務化の前から、任意で適用することも可能です。早期に取り組めば、開示のノウハウを先に蓄えられます。また、導入初期には経過措置も設けられ、移行の負担を和らげる配慮がなされています。

もう一つ重要なのが、第三者保証です。サステナビリティ情報にも、財務情報と同じように、第三者による保証が導入されます。範囲は、当初はScope1・2の排出量やガバナンス・リスク管理を対象とした「限定的保証」から始まる方向です。開示した情報の信頼性を、外部のチェックで担保する仕組みです。

企業に求められる準備

義務化を見据え、企業はいま何をすべきでしょうか。準備のポイントを整理します。

まず自社の適用時期を確認する

最初の一歩は、自社の適用時期の確認です。プライム上場企業であれば、時価総額がどの区分に当たるかで、義務化の年が変わります。2027年3月期なのか、その先なのか。これによって、準備の緊急度が決まります。

たとえ義務化が数年先でも、開示体制の構築には時間がかかります。逆算して、いつから何を始めるかの計画を立てることが肝心です。

データ収集体制とScope3の壁

準備の中心は、データの収集体制です。とりわけ多くの企業がつまずくのが、Scope3です。サプライチェーン全体の排出量を集めるには、取引先の協力が欠かせません。一朝一夕には整いません。

だからこそ、早めの着手が効いてきます。どの排出源を、どう測り、誰が集めるのか。社内の体制と、取引先との連携の仕組みを、計画的に整えていく必要があります。Scope3を含む脱炭素の全体像は脱炭素・カーボンニュートラルとは?完全ガイドもあわせてご覧ください。

開示は「対応」から「価値創造」へ

最後に、視点の転換です。SSBJ基準への対応を、義務だからこなす、という受け身で捉えるのはもったいないといえます。開示の準備を通じて、自社のリスクと機会を整理し直すことができるからです。

サステナビリティを経営戦略と結びつけ、その物語を投資家に語る。そうした前向きな開示は、企業価値の向上につながります。SSBJ基準は、対応すべき負担であると同時に、価値創造の機会でもあるのです。

まとめ|SSBJ基準は開示の新しい土台

SSBJ基準は、日本のサステナビリティ開示を新しい段階へと進めます。最後に、要点を振り返りましょう。

  • SSBJ基準とは、2025年3月に公表された日本初のサステナビリティ開示基準適用基準・一般開示基準・気候関連開示基準の3つで構成される
  • ISSB(IFRS S1/S2)を基礎に開発され、源流のTCFDから続くガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4本柱を受け継ぐ
  • 気候関連ではScope1〜3の開示を求め、有価証券報告書で開示する
  • 義務化は時価総額別に段階適用。3兆円以上は2027年3月期、1兆円以上は2028年3月期、5000億円以上は2029年3月期から。2030年代に全プライムへ

サステナビリティ開示は、任意の取り組みから、制度に基づく開示へと変わりました。SSBJ基準は、その新しい土台です。義務化を待つのではなく、いまから準備を始める。そして開示を、価値創造の機会として活かす。その姿勢が、これからの企業に問われています。ESG・脱炭素の最新動向は、これからもgreenoteでお届けしていきます。

参考(出典):サステナビリティ基準委員会(SSBJ)、金融庁「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」資料ほか

出典・参考(一次情報)

※ 本記事は上記の一次情報をもとにgreenote編集部が整理しています。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

編集責任

greenote編集責任者

サステナビリティ実務・編集統括

ESG・サステナビリティ開示・脱炭素分野の一次情報を継続的に確認し、greenote掲載記事の企画・編集・公開に責任を持っています。官公庁・国際機関の公式情報に基づく編集方針を統括しています。

最終更新日:2026年6月21日

この記事の著者

greenote編集部

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