2023年に成立したGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)は、日本の脱炭素政策の中核をなす法律です。今後10年間で官民合わせて150兆円超の投資を誘導するとされており、企業の経営戦略に大きな影響を与えるとみられています。
本記事では、GX推進法の概要と企業に課される主な義務、特にカーボンプライシング(炭素賦課金・排出量取引制度)の仕組みと対応策を実務目線で解説します。

GX推進法とは
制定の背景と目的
日本政府は2050年カーボンニュートラル・2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目標に掲げています。GX推進法はこれを実現するため、GXに取り組む企業への支援と、排出量削減を促すための規制強化を一体的に進める法的枠組みを整備するものです。
具体的には以下を定めています。
- GX経済移行債の発行(20兆円規模)による先行投資支援
- 炭素に対する賦課金(化石燃料賦課金)の導入
- 排出量取引制度(GX-ETS)の段階的な制度化
- GXリーグへの参加促進
GX推進法の主なスケジュール
- 2023年度〜:GX-ETS(自主参加型排出量取引)開始、GXリーグ本格稼働
- 2026年度〜:化石燃料賦課金の導入(輸入業者等への賦課)
- 2028年度〜:発電事業者への有償オークション開始(電力分野から段階的移行)
- 2033年度〜:排出量取引制度の本格稼働・義務化拡大
2026年度からの化石燃料賦課金導入はコスト増につながる可能性があり、エネルギー多消費型の製造業・物流業などでは特に注意が必要です。
カーボンプライシングの仕組み
化石燃料賦課金(炭素賦課金)
化石燃料の輸入・採掘事業者に対してCO2排出量に応じた賦課金を課す仕組みです。当初は低い賦課金額から始まり、段階的に引き上げられる予定です。賦課金は最終的に電力・ガス・燃料価格に転嫁される可能性があり、エネルギーコストの上昇を通じて全ての企業に影響が及ぶとみられています。
GX-ETS(排出量取引制度)
GX-ETS(GX Emissions Trading System)は、参加企業が自社の排出枠(トン-CO2換算)を取引できる制度です。排出量が枠を下回った企業はクレジットを売却でき、超過した企業は購入することで目標を達成します。
2023年度から自主参加型でスタートしており、大手製造業や電力会社を中心に参加が広がっています。2028年度以降は発電事業者への有償割当が始まり、段階的に義務化の範囲が拡大する見通しです。
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企業への具体的な影響
製造業・エネルギー多消費型企業
化石燃料賦課金による電力・ガスコストの上昇は、製造コストに直接影響します。省エネ設備への投資や再生可能エネルギーの調達(RE100、電力調達契約=PPAの活用など)を早期に進めることで、コスト増を抑制できます。GX経済移行債を活用した補助金・低利融資の活用も検討に値します。
金融機関・機関投資家
投融資先の排出量(ファイナンスド・エミッション)が注目される中、GX推進法に対応できていない企業への投融資リスクが高まります。GFANZ(グラスゴー金融同盟)やNZBA(ネットゼロ銀行同盟)への参加を通じて、ポートフォリオの脱炭素化と開示が求められます。
サプライチェーン全体への波及
大企業がGX対応を進める中で、サプライヤーに対してもGHG排出量の報告や削減目標の設定を求める動きが加速しています。中小企業であっても、取引先からの要請に応じてスコープ1・2の算定・開示に取り組む必要性が高まっています。
GXリーグへの参加メリット
GXリーグは経済産業省が主導するGX推進のための官民協働プラットフォームです。参加企業は以下のメリットを享受できます。
- GX-ETSへの優先参加資格
- 政府・業界横断での削減目標共有・情報交換
- GX関連補助金・低利融資への優先アクセス
- 投資家・取引先へのGXコミットメントのシグナリング
2024年度時点で700社超が参加しており、大企業では参加が事実上の業界標準となりつつあります。
企業が取るべきアクション
GX推進法への対応として、今から取り組むべき事項を優先度順に整理します。
- ①エネルギーコストへの影響試算:化石燃料賦課金による電力・ガス費用増加額を試算し、経営への影響を把握する
- ②スコープ1・2の算定と削減計画策定:自社の排出量を把握し、省エネ・再エネ切替による削減ロードマップを作成する
- ③GXリーグへの参加検討:業種・規模に応じてGXリーグへの参加を検討し、業界内での連携を進める
- ④GX関連補助金・融資の活用:脱炭素設備投資に対する補助金・GX経済移行債を活用した低利融資を確認する
- ⑤サプライヤーとの連携:主要サプライヤーへのGHG算定支援・削減要請を通じてサプライチェーン全体の脱炭素を推進する
まとめ
GX推進法は日本の脱炭素政策の中核をなす法律であり、企業の経営・コスト・投資計画に直接的な影響を与えます。本記事のポイントを整理します。
- GX推進法は2023年成立。化石燃料賦課金(2026年度〜)と排出量取引制度(GX-ETS)の義務化拡大が主な規制強化
- 製造業・エネルギー多消費型企業はエネルギーコスト増の試算と省エネ・再エネ対応が急務
- GXリーグへの参加は補助金・融資優遇とシグナリング効果の両面でメリットがある
- サプライチェーン全体でのGHG削減要請が加速しており、中小企業も早期対応が求められる
- 2028年度の本格義務化に向け、今から排出量算定・削減計画を進めることが重要
脱炭素への対応は規制対応コストとしてではなく、競争力強化・資金調達優位の確保という観点で戦略的に取り組むことが、今後の企業経営においてより重要になるとみられています。
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よくある質問(FAQ)
Q. GX推進法とはどのような法律ですか?
A. 日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)を推進するための法律で、脱炭素に向けた投資の促進やカーボンプライシングの導入などを定めています。
Q. GX推進法は企業にどう影響しますか?
A. 排出にコストが伴う仕組みが段階的に導入されることで、企業にとって排出削減の経済的な動機づけが強まります。脱炭素投資の方針づくりが一層重要になると考えられます。
Q. 企業はGX推進法にどう備えればよいですか?
A. 自社の排出量の把握、削減目標の設定、脱炭素投資の検討を進めることが基本です。制度の詳細は段階的に決まるため、最新の動向を継続的に確認することが大切です。